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第116話 奇怪!バイオレンスピエロの笑顔

『さぁ皆さま、おはようございます!これより準々決勝を開催いたします!』


 時刻は多分もう10時を過ぎた頃だろうか。集まった観客達に、実況のギエンはやかましい大声で挨拶をする。

 だが、昨日の夜あんな事件が起きたのだ。不安を煽るような事を言うよりかはマシなのだろう。

 それにしても、後半からチェイスの姿が無くなっている。流石に何もかも「おかしい」と捉える事自体おかしい事だが、まあ多分いつか帰るだろうと、タクマは気にしなかった。


『それでは現在の選手情報を読み上げます。第一回戦、タクマ選手対フール選手。第二回戦、おタツ選手対ナノ選手。第三回戦、リュウヤ選手対シオン選手。第四回戦、ラウム選手対オニキス選手。計8人による対戦となっております!』

「成る程な。もう終盤か。長いようで短かったなぁ」


 最初の対戦のため、控室の中で出番を待つタクマは、机の上に置かれていた羽ペンで、現在の状況をトーナメント表に書き込んだ。

 現時点で、メア、ノエル、吾郎の3人が脱落の状態。彼らの意思を受け継ぐんだ。そして、これから戦うフールはノエルの仇。

 タクマは、可愛い可愛いアイドルノエちんの為に、必ずしも倒し、そして謎多き彼の謎を解き明かしてやる。と心に誓った。


『おっとここで情報が入りました。なんと、ナノ選手、ドクターストップにより棄権との事です。その為、おタツ選手の不戦勝が確定いたしました!』

「……そうだよなぁ。けど、約束は約束だし、出来るだけ叶えられるように頑張ろっと」


 タクマは、備え付けの洗面台からすくった水で顔を洗い、スッキリした状態で扉が開くのを待った。

 するとその時、またあのやかましい実況の声が聞こえてきた。


『それでは第一回戦を開催させていただきます!』


 そう言うと、扉が開いた。タクマは気合を入れて、自らその扉を押す。


『なんとなんとなんとぉ!あのコピーの力でここまで勝ち進んだ剣使いの少年!今回もまた新しい技を披露してくれるのか!タクマ選手ですッ!』

「今日もエンジン快調、負けるもんか」

『対するは東コーナー!あのアイドル、ノエちんをぶちのめした最強のピエロ!コピー相手にどう立ち回るのか、見ものです!』


 その実況と共に、物騒な鉄球をぶら下げたピエロがやって来る。やはり無口がポリシーなのか、全く喋ろうとしない。

 しかし、その裏で、追い込んだ筈が、自身の動かなくなってしまう。そして、やられた後には謎の痣ができると言う謎を持つ。いつもより慎重に行かねばなるまい。


「ノエちんの仇、取らせてもらってもいいかい?」


 タクマはフールに訊く。するとフールは、「駄目です」と答えるように鉄球を地面に叩きつけた。

 やっぱりこの問いに「はい」なんて答える人は居ないようだ。


「やっぱりね。まあ、初めから答えは聞いてないけど」


 その瞬間、ゴングが鳴った。それと共に、フールの鉄球が飛んでくる。

 だが、ノエルやサイリョーと戦っていた時と同じで、避けやすい攻撃。そのため、タクマはするりと避け、フールに攻撃を与えた。

 

(よし!まずは一撃!)


 隙を完全に掴んだタクマは、ノエルの分だと、フールに二撃、三撃と加えていった。

 本来ならば再起不能になるまでボコボコにしたい所だが、流石にそれはいけない。そのため、タクマは攻撃しつつも、何処か気絶させられるような所がないか探した。

 しかしその時、背中から凄まじい衝撃が走った。更に、背中に針が刺さる。

 

「がはっ!コイツ……昨日より強い……」

「……イナレサルユ……ハエマオ!」


 フールは小声で呟いた。その瞬間、フールは口を開けた。動けない。何度逃げようとしても動けない。まさかこれが、ノエルを倒した謎の能力……?

 その事に気付いた時にはもう遅く、タクマは謎の圧力によって吹き飛ばされてしまった。


「何なんだこれ……畜生口切った」

「オ前ノ検索結果ハE、反乱分子ト判定。ヨッテ処刑スル!」


 なんと、さっきまでの謎の声から、ロボットのような声に変わったのだ。そして、そう言った数秒後、フールの愉快な体がバラバラになった。

 それはまるで鉄の破片のように硬く、タクマ目掛けて飛んでくる。

 何とか剣で飛んでくる破片を防ぐが、変則的に飛んでくる破片が後ろの壁に跳ね返り、頬が切れる。

 するとその時、一回飛び散った破片達が、フールが持っていたモーニングスターを中心に集まってきた。


「成る程、後はおまけで、初めから回してたモーニングスターが本体だったって訳か。」

「ソウ、私ノ本当ノ名ハ、フール・フール!アル天才様ノ開発シタ、反乱分子測定機!」


 フールの破片が集まって出来上がった機械の塊は、カプセル型の監視カメラのような目でタクマを睨みつける。

 その姿はあのチビデブとも言えるようなフールの原型はなく、背骨のように細い支えから、六本の腕が生えている、蜘蛛のような姿をしていた。

 更に、上の右手から、ドリル、チェーンソー、マシンガン。上の左手から機械剣、モーニングスター、火炎放射器のようなもの。その六つの武器を兼ね備えていた。

 そして、モーニングスターだった本体は、フールの下半身にあたる部分に、レスラーのパンツのような形に姿を変えていた。


「サァ、マズ手始メニ、貴様ヲ排除シ、コノ会場ノ人間共ヲ選別スル!」

「そんな事させるかぁっ!」


 タクマは、自分二人分くらいある異形の機械生命体に恐る事なく、剣を振った。

 しかし、動きを読んだフールは、一歩も脚を動かす事なく、機械剣でそれを防いだ。

 

(畜生、硬すぎる。けどコイツがロボットなら、必ず何処かにロウがある筈!)

「貴様ノヨウナ貧弱人間ニ私ハ倒セヌ!」


 フールはそう叫び、逃げるタクマにマシンガンを放つ。

 幸い掴む腕が実装されてないお陰で、何とか捕まえられると言った最悪の事態は避けられた。しかし、あの“人を殺す為だけに兼ね備えられた武器達”には油断できない。

 現に、このマシンガンのせいで近付けないのだ。


「うわわわわわわわわっ!こんなの無茶苦茶だぁ!」

「逃ゲロ逃ゲロ!マ、無意味ナノダガネ!」


 フールは、一つ目カメラのような物で、ウザい目をして嘲笑う。タクマはコケにされた事に腹を立てそうになるが、自分の置かれている状況のせいで怒ることができなかった。

 しかし、逃げている途中、マシンガンの付け根らしき白い部分がチラリと見えた。あれこそロウなのかもしれない。

 タクマはマシンガンを避けつつ、右腕側に回る。

 

「自ラ近付クカ、馬鹿ナ奴ヨ!」

「馬鹿じゃない!ただのお人好し馬鹿だ!〈閃の剣〉!」


 そう言って、タクマはマシンガンの付け根に剣を当てた。すると、巨大なマシンガンは、キンと言う鉄の音を残し、地面に落ちた。

 そして、地面に落ちたマシンガンは、粗悪品だったのか、連射した事による熱で崩れてしまった。誰が作ったかは知らないが、やはりこの時代の科学力ではまだ立派なメカを作るといった事は難しいのだろう。

 

「クソッ。ナラバ今度ハ!」


 フールは負けじと、火炎放射でタクマを焼き払おうとする。タクマはその攻撃を食らってしまい、左腕の裾が燃えてしまった。


「うわ熱っ!こうなりゃヤケっぱちだ!《コピー》!」

「ホォ、ソレガ 《コピー》トナ。ダガ無意味ダ!」

「そいつはどうなか。ノエルの分だ!食らえ、《コピー・フレア》!」


 そう叫ぶと、タクマが出した右手から、フールが流行った物と同じ火炎放射状のフレアが飛び出した。

 それにフールも、火炎放射器で対抗する。そして、運が良かったのか、タクマのフレアが打ち勝ち、フールの火炎放射器を溶かした。

 

「余計ナ犠牲ガ増エルガ、仕方ナイ!」

「おんどりゃぁぁ!」


 何をするのか分からない。しかし、動いていない今こそがチャンスである。そう感じたタクマは、瞬時にロウを探し出し、チェーンソーの右腕を切り落とした。

 残りの腕は三本。ドリル、モーニングスター、機械剣。

 タクマは、遠距離攻撃も出来るモーニングスター、それからドリル、剣と切り落とし、最後に本体を攻撃すると言う計算式を立てた。

 だがその時、フールはドリルを地面に突き刺した。その瞬間、地震が起きた。


『な、何だこの地震はぁ!ハプニングなのかっ!?それともこの、フール選手だったものの能力かっ!?い、今にも押しつぶされそうですっ!』


 それも、ただの地震ではない。あの時、川沿いで体験したあの“重力が強くなっているような地震”だ。まさかコレを作ったのは……いや、アイツしかあり得ない。Dr.Z。やはりアイツが関与していた。

 一応あの時より強くなったお陰か、押しつぶされる寸前とまでは行かないが、足が動かなくなってしまった。

 完全に動かせなくなった訳ではないが、まるで鉄球付きの足枷を付けられたように、動きが鈍くなってしまっている。

 

「犠牲ヲ増ヤシタクナケレバ、大人シク死ネ」

「犠牲……」


 

 その頃、フールの暴れっぷりを、実況部屋の真上で一人の男がその様子を傍観していた。


「……心配で見に来ましたガ、ビーグ共の協力で作らせた地震発生装置兼警備ロボのプロトタイプ、中々の実力ですネ」

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