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転生少女、会社に行く。

 結局わたしは翌日は普通に会社に出勤した。




 あれから色々試してみたけどわたしは普通の人間に戻っていた。


 と、いうか、もとの水森亜里沙に戻っていたって言った方が正解。


 魔法は使えないし魔法少女になることも出来ない。


 魔王のキオクも無いし、クロコも、居ない。繋がってもいない。


 ナナコが居なければ、ほんと夢落ちだとしか思えなかった。




 会社に着いて。


 ほんと先週の続き、みたく普通に出社して。普通にお仕事した。


 ちゃんと仕事内容まで覚えてたから不思議。わたしの中ではもう十五年も経ってるはずで、そこまで経てば忘れてることもいっぱいだろうに。


 何故か、思い出せた。


 ナナコは面白がってたけど、会社の仕事なんてそんなに面白いものでもない。お客さんからの電話に対応して、発注して伝票を整理して入力して、顧客台帳のメンテナンスをして、報告書を書いて、雑用をして、それで時間になったら終わり。残業とかほとんどないわりと平凡な事務職。一番大変なのがお客さん相手の電話対応だっていうくらい。だ。


 ほかの記憶も、徐々に戻ってきた。この一ヶ月、わたしは何事もなく過ごしてきたらしい。ほんとうに何事も、無く、だ。


 日曜日は一人でウインドウショッピングするだけの予定で、誰かと待ち合わせてとかも無かったので、迷惑かけたりしてはいなかった、と、安心した。


 日記にも特に変わったことは書いて無かったから。っていうか何もなさ過ぎで、こんな人生だったかと逆に辛くなった。


 彼氏も居ない、夢中になってる趣味も今は無い。予定も特に、無い、の、ナイナイ尽くし、だ。


 ……寂しい人生だねー。


 だよねぇ。あっちの世界の方が楽しかった、かも。


 ……うーん。それはそれでどうかともおもうけど。ね。


 うん。情けないなぁ。ほんと、情けない。


 もうちょっと自分の人生を有意義に生きなくちゃ。自分で自分が嫌いになりそう。


 ……あたしは好きだよ。アリシア。


 あはは。ありがとう。ナナコ。慰めてくれて。


 ……。。。


 わたしも好きだよ。ナナコ。


 なんだかほんわかとした温かい気持ちが、わたしの心を満たしてくれた。




 に、しても。


 これ、は、どういう事なんだろう?


 ナナコが居る事を考えるとあれは夢では無いらしい、し、かといって現実だったと断定も出来ない。自信が無い、のだ。


 あの世界の記憶。出来事。魔王のこと、ナナコのこと。全部が本当にあった出来事だったのか、それを断定出来るだけのの自信がわたしには持てなかった。




 ……探そう。


 ……藤井瑠璃を、探すの。この世界の何処かにいる筈。


 え? 瑠璃ちゃん、を? 生きてるって事?


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