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番外※ゼロ冒頭

番外です。 ゼロ冒頭を発掘したので資料として載せておきます。

     「ゼロ」


        篠宮 亜希




     プロローグ





 目の前いっぱいに広がる宇宙。星の光が穴のように見える。じっと眺めているとすいこまれそうな気分になる。

 今日も異常なし、だ。

 サツキはそう心の中で呟いた。

 

 惑星航路が確立した現代、主星オリオンを中心とした五つの恒星系にわたって人類は繁栄していた。

 過去の戦争の記憶も、もはや人々から忘れさられたこの時代、その恒星系のなかでも比較的時代の古いここ、辺境の惑星ロンデニオンのポートでサツキは警備に就いていた。


 宇宙空間を旅するには、現在二通りの方法がある。一つには太古から続く通常空間を移動する方法。これには主に光子を推進力に使ったもので、光速の約99%で移動することが可能となっている。もう一つがゼロ空間を通る方法。この理論が完成されて初めて惑星航路というものが成り立ったといっていい。

 人間が認識できる空間というものそのものが、ある一定のエネルギーを持った、場、であるということが実証されたのは、ついこの百年の事だった。

 約30光年にわたって惑星開拓を続けていた当時はまだ、この技術は開発されていなかった。人々は壮大な時間と労力をかけて広大な宇宙に向けて旅立っていったのだ。

 そもそも、池に浮かぶ一枚の枯れ葉は、そのままではその池を認識することはない。自ら水の中に潜ることもなく、飛び上がることも勿論ないのだ。しかし、一度波がたったとき──それは蛙が飛び込んだのかも知れないし、はたまた風のせいかもしれないが──枯れ葉はその振動を通じて、自己の世界に存在するエネルギーを感じることができる。あくまで二次的なものとして。

 物質は空間というエネルギー場の歪んだ姿であり、質量が崩壊したときに起こるエネルギーは場の波として伝わり観測される。

 しかし、人間の把握できるものはあくまでその二次的な姿であって、真実のエネルギーの状態を観測することは長い間不可能だったのだ。

 空間に内在する純粋なエネルギーが確認されたことにより、人類は新たな世界認識を持つに至った。通常空間よりもエネルギーレベルの低い状態の存在を。

 低空間と名付けられたその状態に於いて、距離というものはまったく違った尺度をもって表れることになる。そして真の真空というべきエネルギーが完全にゼロになった状態では、従来の距離という感覚は意味を持たなくなる。

 この低空間──大雑把にゼロ空間と呼ばれることが多いのだが──を通過することに依って光速度を越える移動が可能になったのだった。

 通常空間に於いて光速を越える物質はありえない。そもそも光子というものは通常の物質のような安定した存在ではない。エネルギー場の波として、つまりは空間それ自体の波として存在する電磁波が、形を変え物質として観測されたものが光子であり、その伝達速度は、空間を移動するすべての物質の限界速度でもあった。

 物質はそもそもが空間の歪みであって、その歪みが空間を移動する場合、必ずより大きい歪みを引き起こす。その歪みは速度に比例して大きくなり、その通常空間に存在できる限界が光速なのだ。物質は光速に達した時点で、すべての科学的反応が停止し、歪み、すなわち質量が無限大に増大する。そして他の一切のものから観測不可能な状態になる。

 しかしこの通常空間から脱出する為には、光速を突破するということが不可欠であった。勿論物質がそのままの状態で光速を突破することは不可能であるとともに、ゼロ空間に突入した時点で、すべての通常物質は崩壊することになる。エネルギー値の違いから存在不可能になる為に。

 それを解決したのがタキオン発生機と位相コントローラーによる疑似フィールドの開発であった。

 これによりゼロ空間航行が可能になり、惑星航路が整備されることとなったのだが、いまだ現在ではゼロ空間からの任意の位相転移の技術はなく、もっぱら通常空間に設置したアンカーとよばれる位転装置なくしては通常空間に復帰することは不可能だった。このアンカーを設置した場所のことをポートといい、いわば惑星国家の玄関口としての機能をはたしていた。


 ロンデニオンではすべてがマザーによって管理されている。

 それはここ、ポートの設備も同じで、すべて自動化されていた。

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