魔法少女、の、戦い。
あきにゃーって、ふざけた名前ね。
そう言うなって。まだ幼稚園の時だったんだ。この名前できたのは。
そっかあきさん。幼稚園の頃から魔法少女してたんだ。
く、いいだろそんな事!
っていうかあきさんって、女の子、だったの?
そ、そ、びっくりでしょ?
あーもう、そんな事はいま関係ないだろ? 目の前の魔王をなんとかしなけりゃ、この世界が消えちまうぞ。
あ、手荒な真似はやめてね。あれは魔王だけどアリシアなの。
だから、魔王がアリシアなんだろうが。
ちがうわ。アリシアは魔王だけど、だけどこの世界をデリートしようとしてるのは別なのよ。別のプログラムがいるの。
どういう事、だ?
見えるよね。あの子の真ん中に、魔石があるの。あれがアリシアを暴走させてる。
ああ、あれは……。レイヤー乗算されてる。取り除くとか、難しいぞ。
っていうか、こないだの爆発、あれのせい?
そうだとおもう。あいつらの所為で……。
よし。わかった。とにかくあれをあの子から取り除く方向で。
あきにゃーの両手から光の矢が飛ぶ。
魔王アリシアはそれを簡単に弾き、そして同じように光の矢を飛ばしてくる。
互いの位置を高速で入れ替え、複数の光がお互いを交差し、弾き、反撃。一見一進一退に見えるも、魔王の仕草は緩慢で、それは攻撃を反射しているだけの様にも見える。
うん。これは、ちょっとまずいか。
中庭で異常があった事はすぐ館中に理解されて、騎士団が到着する、も、あきにゃーと魔王の対決に割って入る余裕がなかった。
しばらく、膠着状態が続き、そして……。
クロコがアリシアに向かって飛びついた。
アリシアの魔力の壁を懸命にかいくぐるクロコ。
焼ける匂い。苦しいだろうに。クロコ……。
ああ、クロコ……。
ごめんねこんなになって……。
☆☆☆
わたしはクロコを抱きしめた。
焔の膜からクロコを守る。
そして。クロコがわたしの、中、に、潜る。
ああ、クロコはわたし。わたしの一部、だったよね。
わたしの中に、異物、があった。
そしてそれはわたしのキオクを包んで見えなくしていた。
でも。
クロコが持ってきてくれた。残りのわたし。
うん。残りのキオク。
クロコの力を借りて、異物を制御する。
わたしはわたしの中のキオクを解放、した。
☆☆☆
アリシアの周りの光が七色になる。
アリシアの、意識が戻った?
でもまだあの魔石はそのままだ。
うん。でも。
暴走は、治った、かな。
俺はレイヤーを解除して秋の姿に戻る。
いつのまにか隣には公主サーラの姿があった。
「ありがとうございます。秋様」
サーラはそれだけ言うと、七色の光に包まれたアリシアに向かって走り出した。
「亜里沙ちゃん、亜里沙ちゃん、亜里沙ちゃん!」
サーラはそのままアリシアに抱きついた。周りの目も気にせずに。




