転生少女、と、魔道具。
厨房で皮むきや下拵えを魔道具を駆使して同時進行して見せたら驚かれた。
っていうか魔道具にもどうやら色々あるらしい。
家電のように誰でも使える仕様のもあれば、扱うのに魔力や操作力がそれなりに必要なものも。
厨房にある魔道具は、普段料理人さん達が自身の魔力と経験と熟練した技でコントロールする系の魔道具であって、素人には使えない、のだと。
あっさり扱ってみせると、驚愕と賞賛の嵐で。料理長にはなんで今まで隠してたんだと逆に怒られ、そして弟子にならないかとスカウトされる始末。
この世界であっても一定の魔力以上を常に使用できる人材はそれほど多くはなく、貴重な才能なのだ、と。
スカウトは……。ちょっと考えさせてくださいと時間を稼ぐ事にした。
まだ、この子の意思がわからない状態で返事が出来る事じゃない。
この世界にこのままわたしが止まるのかどうかさえ、はっきりしない、のに。
リーザにも驚かれたけど……。まぁこっちは頭でも打ったから魔力増えた? みたいな感じで受け取ってるっぽい。チートが出来て良かったね見たいなことをさらっと冗談ぽく言われたけど、あれ? なんだか、おかしい?
ぽかんとしてるわたしに、
「ああ、やっぱり。自分が転生者だったって事も、忘れちゃった?」
と、リーザ。
え?
え?
その話詳しく!!
「え? どう言う事?」
「うーん。記憶戻るきっかけになればいいか。わたしが知ってる事話しても」
「うんうん。お願い教えて」
「あのね。アリシアは生まれる前、前世は日本人で水森亜里沙って名前の女性だったんだって。何してた人かまでは詳しくまだ聞いて無かったけど……」
「それ、日本って、この世界では知られてる、の?」
「え、くいつくの、そこ?」
「で、日本って……」
「知ってるも何も、わたしも日本人だったし。前世」
「え?」
「うーっ、この世界はね、異世界転生とか異世界転移とかわりと頻繁にあるみたいでね。この世界の食生活にも影響与えてるくらい。文化だって、かなり持ち込まれてるんだよ」
「あああ、それで……」
「この間だって異世界転移してきた人とお茶したばっかりだし」
なんだかすごいな。だからこの世界、普通に異世界って感じじゃないのか。
「だけど、アリシア? 貴女、日本人だったって記憶はあるって事?」
「えと、うん。日本の事はわりかし覚えてるっぽいの。自分の事の記憶はまだ戻らないんだけど……」
「そっか。良かった。それならそこから記憶戻る手掛かりになるかもだよね」
リーザは笑顔になった。うん。この子の心、綺麗だな。ほんと、かわいい。
にしても。記憶が戻る手掛かり、か。
うん。だと、いいなぁ。




