転生少女、と、ライトの魔法。
残念ながら。
起きても状況は解決していなかった。
っていうか常識的な事、とか、そういう記憶がなくなったわけじゃない、と、思う。
世界の記憶がちゃんとあるからこそ今のこの世界の違和感がわかるわけだし。
そう。
あれから周りを見渡すと、何処と無く違和感を感じる。
配られたおにぎりは炊き出しなのか、美味しかった。中に入っている具は魚?シャケ? と、野沢菜? みたいなの二種類。
で、それを配ってくれたのも周りにいる避難民も皆、日本人ではなく欧米人みたいな感じで大柄な人が多かった。
わたし自身も、トイレに行って鏡を見た時驚いた。
金髪碧眼。
軽くパニックになりかけたけど、これは……。
もしかしてもしかすると、これって異世界転生とか異世界転移、憑依?とかいうものだろうか?
わたしはこの世界のこの子、たぶんまだ子供?ローティーン?そんな感じに見えるこの少女に異世界から来て憑依してるのか?
その所為で記憶が飛んだのか?
だとしたら、この少女の心は、何処に?
考えれば考えるほど混乱してくる。
周りの人に、わたしは持ち物とか持ってなかったのか尋ねたけど、わからなかった。少なくともここに連れてこられた時は無かったと。
うん。何か自分の身分証みたいのがあればなあとか思ったけれど、甘かった。
さて。
どうしよう。
せめてわたしのこの身体の持ち主を知ってる人が周りにいればよかったけど。
っていうかこんな異世界に記憶もなく放り出されても、困る、よ。
おはなしだともうちょっといろいろ便利に使える魔法とかがあったり、とか……。
って。
魔法、って、意識したとき。
わたしの右手の掌に魔法陣みたいのが浮かび上がった。
上に向けると、光の玉がぼやんと浮かび上がる。
「あは」
思わず声を漏らす。
「あーおねーちゃんライトの魔法が使えるんだいいなぁ」
隣にいた女の子、10歳くらいのがこっちを見て言う。
「わたしも早くいろんな魔法が使えるようになりたいなぁ」
無邪気にそういう彼女に、わたしも微笑み返した。




