転生少女、の、たたかい。
うう、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、頑張る!
わたしはこっそり魔法陣を展開して腕の結び目を切る。
クロコも、ぎゅっとタメから弾丸のように弾けて飛びかかる。
修道女は扇子の様なものを広げ、ふんわりとクロコ弾丸を躱す。
反対の壁に貼り付いたクロコは歯をむき出しにしてシャーと威嚇。
わたしはさっと飛び降りるとソファーの後ろに回り込んだ。
「逃げたぞ! ロープが外れた」
恰幅のいい男が後ろから声をかけた。
「ねぇ、あんた達。わたしなんか攫ってどうしようっていうの?」
そう、兎に角まずは情報収集、だ。
……最悪逃げればいいって思ったけど、さっきのあの女、あんたの魔法膜剥いだよね。大丈夫?
気持ち悪かったー。ダメダメ。
……気持ち悪い、で、済んだのならまだマシ、か。
うん。危害加えようと思ったらいつでも出来た、って、そんな気がする。
……やばいね。あいつ。
うん。逃げるのも邪魔されたら困る、し。
「子猫ちゃん。隠れて強がってもダメよ」
女はかなり余裕だ。悔しい。
「そうねぇ。ひとつだけ教えてあげるわ。あたし達は魔王の器を探してるの。復活した筈の魔王を下ろした器。これ、を、使った誰かをね」
そういう女。これって……。
両手をあげ、広げると周囲に魔王像が三体、空中に浮かび上がる。
ああ、あの女神像の魔王像……。
三体とも、黒いモヤを纏わり付かせ一回り大きくなったように見える。ふわふわと浮かんでる姿は不気味。
……そうか。役目を終えた魔王像は魔力が増えるから。
「この魔力。これこそ魔王に相応しい。それなのに。よりによってこんな魔力無しに降りた、というのか。」
あ、そっちの男も普通じゃ無いのか。どうやらバレたっぽい?
「そういわない、の。この子、役に立ちそうだよ」
う。もう限界、かな……。
……これ以上は危ない、ね。この二人、魔王像から魔力供給されてすごく強化してるっぽい。アリシアじゃ、勝てない。
うん。
逃げよう。
ちょっとこの人達、怖い。
わたしは目の前に集中し、転移の窓に手を伸ばす。意識を公主館の自分の部屋に固定。
……もう少しその手順が早くなるといいんだけど
うるさいナナコ。チャチャ入れられると集中できないよ。
もう。気を取り直して、ぎゅっと自分の部屋の空間を掴む。
グルン
空間を裏返す。
え?
失敗した。
わたし、何処にいる? 目の前に修道女、ソファーは?
きゅーっと広角を広く釣り上げ修道女が笑う。
「か、は、は、は。あなたの転移、見え見えで遅いわ。あたしが入れ替えてあげたわよ」
ああ……。
……まずい!
女の両手が伸びてきてわたしの顔を掴んだ。
あー……。
気持ち悪い、身体中が痙攣する……。
耳元でクロコがにゃあーにゃーいってるのだけ、わかった。




