転生少女、気を失う。
穴だね……。
……穴だね。
地面にでっかい穴が空いている。
進入禁止の黄色いテープがベタベタ貼られてる向こうは、何も無い穴、だった。
近づくと地滑りするかもな危険な穴。落ちたら上がってこれないよね。
「魔法でも使わないと中には入れそうにないねー。これ以上先に行くのは諦める? アリシアちゃん」
「うん。そうだよねー」
……まぁさっきのあきさんとの会話でだいぶ解決した事あるから。これ以上奥に行かなくても良いよね?
そだねー。
「今日は此処までにしておこっか。なんか疲れたよ……」
「驚く事いっぱいだったもんね。わたしも疲れたー」
「ごめんね今日はほんとありがとね」
「ううん。すっごく楽しかったのはほんとう。アリシアちゃんが日本人だったってのもわかったし、なんかすっごく嬉しいよ」
「うん。わたしもすっごく楽しかった。ありがとねリーザちゃん」
かわいい笑顔がほころんで溢れる。ほんとかわいいな。リーザちゃん。
「そいえばさっきの秋さんお名前、わたしどっかで見たような気もするんだよねー。どこでだったか思い出せないんだけど」
え?
「小説の登場人物、とか?」
「ああ、そうかもしれない。ネットで昔読んだのかなぁ? はっきり覚えてないんだけど」
ああ。
嬉しいな。リーザは同じ日本かも? 確証は無いけど。
「ああ、でも、わたしが読んだのはネコになっちゃうんだったかな。秋さん」
え? うきゅ。違う、の?
「なんだっけかなぁ? 魔法少女って感じのタイトルで、なんであんたねこになってるのよーで始まるお話だったかなぁ」
ほんと不思議。いろんなおはなしが、いろんな世界が、あるんだね……。
☆
リーザとも別れた所で両親との待ち合わせに向かう。
あと角を二つ曲がれば目的地、とか思ってた所で。
……囲まれた。
もしかしてさっきの?
……うん。そうかも。
どうしよう。わたしだけならいいんだけど。リーザちゃんに何かされてたら困る、な。
……ちょっとおとなしくしておく? 様子見で。
そだね。
わたしを取り囲んだ冒険者っぽい人達は五人いた。じりじりと近づいて。前の人がいきなりわっとダッシュしてくるのにびっくりして後ずさると、後ろの人に羽交い締めにされた。
大人しくしろ、そう聞こえたかと思うと、口元に布が当てられ、わたしは意識を失った。




