転生少女、お仕事初め。
わたしの勤務時間は朝の三の鐘から夕方の七の鐘まで。
前世の9時5時に相当する時間、かな。
休憩時間も随時あるしお昼休憩もちゃんとあった。
かなりホワイトな職場だ。
このお屋敷お住まいなのはまずご主人様の公主様。
公主様の側仕えとして帝都から随伴してきた方々。
護衛騎士。
わたしたち侍女のお仕事としてはこの方々の身の回りのお世話、お屋敷の維持管理、お料理配膳等々、まぁ高級な家政婦さん、みたいなところ。
わたしはまだ下働きの仕事しかさせて貰えてない。
お掃除洗濯お料理のお手伝いが主だ。
公主様に御目通り出来るかとも期待したけど、それもまだ。接近遭遇する機会もあったけれど、その時は通り過ぎるまでお辞儀してやり過ごすのだ。辛いな。
お掃除は、わりと楽しい。
洗濯も、ビックリした。
お料理は、これは割と普通。っていうかわたしの仕事は精々料理人さんの指示で野菜の皮むき洗い下拵え終わった後の洗い物等々、ほんと下働きなので。
ただ……。ここで一つ問題が発生した。
お掃除やお洗濯等、それらを補助する魔道具の存在だった。
お掃除には白くて平べったくて丸くて、まるでルンバの様な形状に可愛い足が三つ付いている、そんな魔道具。
お洗濯にはおっきなドラム缶みたいな洗濯機の魔道具、などなど。
今までの生活では見たことなかったそんないろいろな魔道具を駆使してお仕事をする必要があったのだ。
まあ、想定をしていなかったのが迂闊だったということなのだろうけど、うちでは不便を感じることがなかったので忘れていたのだ。
たぶんお母さんがわたしが傷つかない様配慮してくれていたんだって、今にすればそう思い至ったのだけれど。
問題は……「魔力」だった。
わたしは魔力がまったく無い、魔力値がゼロだったのだ。
この世界は剣と魔法の世界で、ここに住む人間は多かれ少なかれ魔力の影響下にあった。
生活一般にもそれは活かされ、前世の機械化文明は魔道具に置き換えられていたのだ。当然それを使用するにも魔力が必要だった。
ただし一般市民の魔力値はそれ程高くは無く貴族が使える様な大量の魔力を必要とする魔道具を扱えるものはそれ程多くは無く、日常生活に必要な魔道具にはいわば魔力の電池みたいな魔力蓄積石が使用されていたのだが、それを起動するスイッチにも魔力が必要だったのだ。
初日は焦った。ほんと。
リーザがやってみせてくれたあと、
「あしたはあなたにやってもらうからね」
と言ってくれてほんと助かった。
なんの準備もして来なかったから。