転生少女、と、空間転移。
夜の中庭はちょっと怖い。あんまり灯りは無いし、誰かその辺にいるんじゃないかって、そんな事も考えちゃう。
でも、魔法の練習をするのにお部屋じゃちょっと狭いし、万が一失敗して壁とか壊しちゃってもいけないから我慢して。
流石にお城の外まで出るのは難しい。中庭は結構広いから奥まで行けば人目も無いしなぁとか考えながら歩いてた。
クロコは一緒についてくる。
いい子だね。クロコ。ボディガードありがとね。
そう言って時々撫でてあげる。かわいいなぁ。
……転移はそこまで難しくはないんだけど、まずはこの世界の空間の組成をちゃんと把握しないとなの。この空間の裏、ゼロ空間へ繋がる膜をちょこっとひっくり返して、そんで行きたい場所と繋げて戻す。これだけ。
うーん、ちょっとよくわからない、かも。
……うーわかんないの? もう。とにかく考えるよりも感じる方が大事。あたしがちょっとクロコ使ってやってみせるから、よーくみてるのよ。
感覚を見て覚えろ、かぁ。ふにゃぁなの。
……文句言わない。
ナナコがそう言ったが早いか、クロコの境界がブーンと揺れて曖昧になったと思うと、すこし右側の位置に現れた。元の場所のクロコは消えて。
……こう。一瞬ひっくり返すだけだからゼロまでは落ちないし、ほぼタイムラグ無しに目的の場所に移動することが出来るよ。
……この転移っていうのは最初の時魔物から逃げた時のような魔法術式を組んでどうこう、じゃないの。素、で、空間を掴んで捻じ曲げる感覚? これが出来るようになれば色々と応用が効くようになるからさ。
あうあう。でたよ。魔法じゃない、って、そんなのどうすればいいのさ。
……つべこべ言わない。アリシアなら出来るからさ。
根拠は?
……あたしの、感?
うきゅう。
ま、でも、うん。練習しなくちゃ始まらないのは確か。何事もね。
真夜中の特訓、三日目。
あ、何か、わかった、か、も。
自分の奥底、前ゼロ空間から脱出した時のインナースペースの奥底を意識すると、そこには出口、としか認識出来ないものがある。
形があるわけじゃ無い。ただ、そこが、自分と世界を繋ぐ境界なのだと、そう認識できるのだ。
その出口を目の前に捉えて心の中で手を伸ばす。
伸ばした手が出口から出て、世界を掴もうとする。
あ。
ちょっと引っかかった。
心で世界に触る感覚。これ、が、そうなのかも。
……そう。その感覚が大事なの。
うん。ナナコ。
ぎゅっと世界を掴み、引き寄せる。
わたしの周りの空間をぐるんと裏返し、引き寄せた世界と繋げてもう一回ひっくり返す。
そこはほんの数歩先の場所ではあったのだけど、確かに転移で移動していた。
やった! 成功だ。
嬉しくてついつい飛び上がって喜んだ。
ちょっと急ぎ足で進めてます。本編はまだまだ続くのですが、今月中にもうちょっと先まで進めることにしました。




