転生少女、公主様にお仕えする。
ここ、ベルクマール大公国はオクタヴィアヌス=ベルクマールにより建国され五百年 。
帝国暦2156年、当時のガイウス帝の治世に復活した魔王に立ち向かい、そしてそれを打ち負かし再度封印する事に成功した勇者オクタヴィアヌス。
そして帝の妹君であった大予言者カッサンドラがその勇者に降嫁し、興ったのがこの大公国とされている。
オクタビアヌスは大公となり、その後一度もその血を途絶えさす事もなく続いていると。
また、この公国には必ず帝の血筋のものが公主として祭祀に携わっている。
祭司として、大予言者としての能力を持つ帝の血筋の女性が必ず。
時としてそれは大公家との縁組であったりもするが、必ずしもそうではなく。ま、血筋を濃くし過ぎない為でもあったのだろうけれど。
必要なのは、勇者である大公と大予言者である公主がどの時代も必ずこの国に存在する、という事であり。
それがオクタヴィアヌスとカッサンドラから連綿と続くこの大公国の伝統なのであった。
まぁ、このくらいの事はこの国では子供でも知っている事なのだけれど。
わたしが仕える事になったこの公主館の主人が現在の公主様、大予言者サーラ様なのである。
御年十三歳になられる公主様は前任の大予言者様がお亡くなりになった三年前、まだ十歳だというのに毅然とこの国に御渡りになられた。
それ以来毎年の祭祀や参賀にその愛くるしい御姿をお見せ下さり、市民に絶大な人気を誇っている。
その崇拝のされ加減と言えば、日本のアイドルなんて目では無い。それこそ公主様に悪意を持つものなど国内どこを探しても存在しない、と、言った具合だ。
大公様や大公家の方々はそれこそ雲の上の存在で君主様として敬いこそすれ身近に感じることなどは無い。
であるからこそ、公主様のあの愛くるしさや振る舞い、お声に、市民がアイドルに対する様な崇拝を見せるのは、不思議でもある。
元々、厳しい大公様、親しみやすい公主様、というイメージが、この国では出来上がっているのだろうとも思うのだ。