転生少女、情けは人の為ならず。
侍女長様に、馬車の旅は疲れたでしょうと今日のところはもうお家に帰って休むようにと言われ、わたしはクロコと共に御屋敷を後にした。
……なーんか気に入らないな。
ナナコ?
……あの何もかもわかってますよ感があたしだめ。
え〜?
……アリシアはあたしのなのに。
え? なにそれ? あはっ。それってなんかヤキモチみたい?
……わるいの?
っていうか瑠璃ちゃんは前世のお友達だからさ。だから優しくしてくれるんだよ。それより、わたしは誰のものでも無いよ、ね? ナナコ。
……ううん。アリシアはあたしのなの。もうこんなに繋がった一心同体なのに、今更あたしを捨てる気?
なにそれー、冗談ばっかり。
……ふん! いいよアリシアなんか。もう知らない!
ナナコ! もう。子供みたいなんだから。
いじけたっぽいナナコは暫く返事してくれなくて。
まぁそのうち機嫌もなおるかなと気にするのをやめて、わたしは帰り道に道具屋さんとか寄ってくことにした。
クロコにいろいろ買わなきゃと思ったからだ。
この世界にはあいにく前世の様なペットショップは無かった、ので。というかそもそも小動物の生体販売という悪習は忌避されていたと言った方が正しいか。利益のためにペットを生産するって商売は、無かった。
だから必然、犬や猫は一般家庭にそれほど飼われているわけではなくて。ほんとうに好きな人だけ家族の様に育ててる、そんな感じ。
ご飯だって手作りするし、身の回りのものだってすべて。
だから、今日は、クロコのためにトイレ用の木箱とお椀、水桶を探そうと思って。
完全室内飼いとかはこの世界では必要なさそう。自動車も無いし馬車だってそこまで走って無い。毒エサ巻く大人も居ないし猫を攫う人もたぶん居ない。虐待だって無い。だって、そんなことしたら逆に動物が魔物化して襲われるよ。
魔力は恐怖や憎しみの感情で増幅するから。人はみな、そういった感情を他人に与えることの不利益をまず教わる。この世界が優しいのは、そういった部分も大きいのじゃないのかなぁ。情けは人の為ならず、というけど、この世界ではほんと自分の為に他人に情けを与える事が善だとされている。それが他人にも、自分にも、まわり全てが平穏で居られるコツなのだ。
ほんと、どこの誰がこんなお花畑な世界を創造してくれたのやら。そんな神様に感謝しつつ、この世界に生きる事が出来る事に、感謝した。




