転生少女、と、心のわだかまり。
「魔王の事は……サーラ様はどこまでわかっていらっしゃるのでしょう?」
クロコを撫でるサーラ様は優しい顔をしてて、それ以上の事を訊ねようとしなかったから……。わたしのほうからそう切り出した。
サーラ様は、少し目を閉じ、そしてゆっくり、話しはじめた。
「わたくしには、大預言者カッサンドラ様のキオクがあるのです……」
え? 500年前の人だよね? 生まれ変わり? でもそんな……。
「貴女と同じ、ですよ。わたくしの中に、繋がって降りて来たキオクなのですから。それを読み解くと……」
はうう。
「わたくしが、いえ、わたくし達が真に恐るるべきは、終末プログラム、なのでしょうね」
「魔王という存在は、元々は人々から神として崇められていたのです」
真皇真理教みたい?
「そう、彼らは間違ってはいないのですよ」
え? 嘘、って、サーラ様ってば、もしかして
……うん。間違いないよ。彼女はあんたの表層意識がみえてる。
ナナコ!
「そう。わたくしは人の意識が色彩として見えるのです。そしてそれを読み解く事である程度理解することも」
ああ、だから。サーラ様が怖かった、の、か。
「すべてがわかっているわけでは、無いのですよ。というかこれって秘密ですよ?」
かわいくウインクして、口元に人差し指をあてるサーラさま。
「亜里沙ちゃんだから話すんだからね」
サーラさま、いや、瑠璃ちゃんは悪戯っぽい笑みでそう言うと、わたしにぎゅっと抱きついて。
クロコはスッと抜け出してテーブルの上に移動した。
「わたしは……亜里沙ちゃんの味方だから。何があっても守るから。だから、安心、して。お願い」
ああ、瑠璃ちゃん……。
わたしの心の何処かにあったわだかまりが、溶けていった気がした。




