転生少女、と、大門の騎士さま。
城下に到着するとまずはやっぱりお城へ。
クロコをお家に置いてこようかとも思ったけど、ここでこの子を隠蔽しちゃうと女神像が無くなった言い訳が出来ないし、しょうがない。
幸い大人しくしててくれたから、わたしが布袋ごと胸に抱いてても周りからは何か大事なものでも抱えてるのかくらいにしか思われなかった。
上から覗くと、おめめをまん丸にして上目遣いでわたしを見てる。ほんとかわいい。
いいこだね。クロコは。
そう小声で声を掛けながら大門をくぐった。
と、門の中では大勢の騎士さま達がこちらを見て立っている。
のんけんな雰囲気。やっぱり、素直に帰ってきたのは失敗? ちょっと怖い。
通常門兵さまは大門より奥にある城門に詰めてるので、ここまで表に大勢の集まってくる事もない。
ふにゃぁ。でもここで立ち止まってるわけにもいかない。わたしはその脇をすり抜け通用口に向け進もうと歩く。
「まて」
びくっと肩を竦めるわたしに騎士様の中のたぶん偉い人。
「アリシア=レイニーウッドか?」と。
「あ、はい。そうですアリシアです。公主様のおつかいからただいま戻りました」
騎士様がわたしの全身を上から下まで舐めるように睨め付け、そしてやがて安堵するような表情になり。
「うむ、……魔王では……無い、か。……よし。皆、解散だ!」
と、振り返り号令する。
ああ、そういう事か。やっぱり全部シナリオ通りという事ね。
わたしが女神像を受け取るという事が魔王復活のキーだった、と、そういう事かぁ。
そんな確信めいた事を思い浮かべて呆然としているわたしを尻目に、騎士様達は城門へと戻って行った。
魔王じゃないって……わたしは今でも魔力はゼロだから? 胸の中にいるクロコの魔力は感知されてないのだろうか?
そんな事もボンヤリ思い浮かべながら、暫くその場に佇んでいた。




