転生少女、女神像を買う。
エイラ村に着いたのは夕方で、その日は宿に泊まる予定だった。
宿はもう公主様の従者が前もって予約しておいてくれたらしく、わたしはまず其の宿で一晩旅の疲れを癒すと翌日は朝から目的の女神像を売っているお店までと足を運ぶ。
城下行きの馬車は明日の朝まで無いので、結局もう一泊しなくちゃならないわけで。
そんなに慌てたことはないんだけどね。
村の周囲には田園や森、湖などもあり観光地としての景観も素晴らしいとの事だったので、用事を済ましたらゆっくり観て回るのもいいかも。
そう思って。
「らっしゃい。嬢ちゃん。なにが欲しい?」
気さくな、ちょっと大柄なおひげのおじさん。店主さんかな?
「こちらに霊験あらたかな女神像があるとお伺いしまして」
ちょっと良いとこの従業員風に、言葉遣いもよそ行きに。
「ああ、
旅商人から仕入れたんだがな。
真摯に祈れば願いが叶う。って話でな。
信じたわけじゃないんだが、ついつい其の時は気が大きくなってたのかもしれねえが、買い取っちまった。
それが結局、値段がちとはるのと、変な噂の所為でちっとも売れる気配がねえ」
店主は奥からそれ、を出してきた。
30センチくらいの観音像のような立像で、質感は、石? 大きな魔石を彫ったもの? そんな感じ。
綺麗。
それが第一印象。
「わたしどもの主人が、是非にと求めております。どうかお譲り願えませんでしょうか?」
「もちろん大歓迎だ」
「こちらは、おいくつございますの?」
「全部で10仕入れたんだがな。ああ、微妙に顔が違ってはいるんだが。結局まだ三体しか売れてねえ」
ちょっと苦々しい顔をして。
「なんだ? 嬢ちゃん。お宅のこり全部買ってくれるとか?」
「まさか」
「そうだよなぁ。流石にな。まぁしゃあねえ。ほんと大赤字だったんだ。一体でも助かるさ」
店主さんは少し笑顔で。おひげの笑顔はなんだかちょっと怖かったけど。
この女神像、なんだかお母さんに似てる……。優しい顔、してるよね……。
やっぱり信じられないな。こんな綺麗な彫像が、魔王の像、だなんて。
店主は柔らかい布に女神像を包み。
わたしは持参した布袋にそれを収め帰路に着いた。とりあえず今夜はもう一晩、宿に泊まって明日また乗合馬車で城に帰ろう。