転生少女、と、ニケあきにゃー。
「じゃぁいっちょうやってみますか」
主導権をあきさんに委ね、わたしは魔力のコントロールに努める。
いきなり変化したわたしにちょっとだけ戸惑いを見せたバルカ。
しかしすぐ対応して警戒している様子。
……とりあえず目標はバルカを捕まえて拘束、そしてわたしの世界に連れ帰ることだから。
「了解。わかった努力する」
……甘いぞ魔王殿。奴の実力は計り知れん。本気で倒すつもりで行かなければこちらが呑まれるぞ。
「ああ、それも承知だ。へびの旦那。兎に角全力で叩き潰す!」
……蛇ではないというのに……。
ニケあきにゃーは手にした三又の鉾から光の鞭を伸ばしバルカに叩きつけた。
「戦闘開始だ!」
そう叫ぶと間合いを一気に詰める。
バルカは両手から漆黒のヤイバを伸ばし光の鞭を薙ぎ払うと、そのまま上段に構えて振り下ろす。
こちらの翼に向かって振り下ろされるヤイバを翼を畳むことでやり過ごし、そのままバルカの腹に向かって右手のレヴィアを叩きつけた。
後方にすっ飛んだバルカをそのまま追撃し勢いをつけたままキック。それを両腕で耐えるバルカ。
そのまま回し蹴りに切り替えるあき。バルカは横っ跳びに吹っ飛んだ。
ああ、やっぱりあきは戦闘慣れしてる。わたしじゃぁこうはいかないか。
……うん。やっぱり強いねあき。
さらに追撃をかける。
バルカの腕のヤイバは左手の鉾で薙ぎ、そして右手のレヴィアで殴る。
単純だけどかなりダメージを与えてるみたい。
バルカは次第に肩で息をしだした。
……後方山の中腹に世界を繋ぐ穴があるみたいです。
そうなの? サーラ。
……ええ。かすかに向こうの世界の魔力波が漏れてきています。たぶんグリフォンのあの爆裂魔法で開いたんでしょう。
じゃぁ。とりあえずそこに押し込む? この世界にこれ以上迷惑かけるわけにはいかないし。
ニケあきにゃーとバルカの魔力の衝突はこの一帯を嵐に変えた。このままではこの世界も持たないかも。
……あき、聞こえてる? 決着はなんとかわたしたちが向こうの世界で付けるよ。とにかくあいつを世界の穴に押し込んで。
「ああ。任せろ!」
両手にエネルギーの塊を発生させたあき。
そのままバルカに向かって放つ。
ドーンという音と共に、ボロボロになったバルカが現れた。
「こんな……、ばかな……」と、声が漏れ聞こえる。
あちらもかなり動揺している。
そうだよね。完全に魔力で優ってると思ってたわたしにやられてるんだもん。
バルカは覚悟を決めたようにグッと手に力を貯めると、そのままこちらに突っ込んできた。
脇腹に向かってきたタックル? を躱すあき。
バルカはそのまますっ飛んで行き……。
あ!
逃げる気だ。
そのまま世界の穴の場所に向けて一目散に飛ぶバルカ。
うう、手間は省けるけどこのままじゃ。あっちの世界が危ない?
もうちょっと弱ってくれると良かったんだけど。
「どうする? このまま追いかけるか?」
と、あき。
でも。
それもまずいよね。あきさんがこちらに帰れなくなっちゃう。
バルカはすでに穴の中に飛び込んで消えた。
なるべくこちらも直ぐに追いかけないといけないんだけど。
ええい。ままよ。
……ねえあきさん。お願いがあるの。
あきさんへの最後のお願い、かな。
「俺にできることならな」
そう、あきさんは笑顔で言った。
さすがにあきさん戦い慣れてました。
アリシアじゃこうはいかなかったかも。
次回でこの世界からはさよならです。