転生少女、はじめてのおつかい。
真皇真理教という宗教が、地方でちらほら活動しているらしい。
信者たちは、魔王とは真皇であり、この世の真理であると語る。
この世界の宗教観は前世の日本によく似ていて、八百万の神が神話になり、皇帝は神の子孫であるという教義の皇宗教が一応主になっているんだけど、信教の自由は保証されている。だから思想信条で逮捕されたり罪に問われたりは表向きには無い、筈なんだけど。
だけど、魔王を崇めている宗教というのは世間の目も厳しいらしく、あまり表立って活動してはいなかった。
わたしも、そんなのがあるらしい、って、噂をちょっと聞いたくらいで真偽もわからなかったくらい。
そもそもわたしは城下町から外に出るなんて、実は生まれて初めてで、ちょっとわくわくしている。
街道の景色も、村々の様子も、田園の風景も、みな、興味深く、趣きがあって楽しい。
わたしは、公主様にお使いを頼まれた。と、表向き。
乗合馬車で二日かかるエイラ村まで、最近売りに出されているという女神像を買いに行くのだ。
それは、表向きは、ただの女神像に見える。だけれど、まことしやかに伝わってくる噂によれば、それ、は、魔王像、なのであると。
でもわたしは知っている。
これがただのおつかいのお買い物では無い事を。
真偽不明だから調査のために手に入れたい、だけであれば、わたしである必要はどこにもない、って。
わたしにしか出来ないことがある、と、彼女は確かにそう言った。
で、あれば。
何か、が、あるのだろう。別に、何かが。