転生少女、と、マジカルあきにゃー。
バルカは空中で停止した。
ここは……何処かの山の山頂か?
下には真っ白な建物が半壊している。あれ、学校?
かなり広範囲に渡り壊れ煤けている様子が見える。
……ここ、空気中に含まれるマナが他と段違いに多くないですか? わたしたちの世界並み?
……うん。この世界に来て初めて。こんなにマナの多い場所。
そうだね。なんだか体も軽い。
……この山、この地球の中心から吹き出るマナに覆われてるようだな。
惑星の中心からマナが噴き出すの?
……マナは魔力の源。通常空間より上の次元の存在だ。それが惑星の重力に囚われ溜まり、稀に噴き出すこともある。我らの居るここ、この空間もマナによって形作られているのだしな。
……レヴィアたんはほんと物知りだよね? どこでそんな知識を知ったの?
……ははは。長年生きていると流れ込んでくるキオクも多くなる。あなたが忘れてしまった事も覚えてますよ。神さま。
そっか。ナナコが忘れてしまったキオク、か。
……ああ、ゆっくり会話している時間はなさそうですぞ。
うん。そうだね。
目の前のバルカはこちらを待っている。
問答無用で攻撃をしてこないところをみると……。
……我らを吸収しようと思っているようだな。
弱らせて意識を失いかけたところを取り込む、とか、そういう事?
……流石に同意のないままのエンジェルレイヤーは出来ないでしょ?
……いや、相手の意識が無い状態ならわからん。
……リウィアも取り込まれたし、油断は禁物。
バルカの周りの魔力が膨らむ。周囲のマナをも取り込んでチカラが増しているようだ。
わたしも。左手に盾を顕現させ、右手からはレヴィアがのぞき出る。
空気が互いの魔力の圧に押され、渦巻く。いつしか竜巻の中心にわたしとバルカが対峙している状態になった。
……攻撃してこないね。
……こちらもちょっと手を出す隙が見当たらないです。
どうしよっか。
バルカの魔力が大きすぎて、決め手に欠ける。
向こうにはこちらを倒す意図は無いのだ。そう思うと少し口惜しい。
〈手を貸そうか?〉
え?
誰?
突然割り込んできた声。
〈ちょっとあんたの中入るよ〉
えー。
あき、さん?
ちょっとくすぐったいような感じがしたと思うと、わたしのインナースペースの中にあきさんが現れた。
えー? どうして此処に?
……心配だったからずっと着いてきてたんだけどさ。
天城のビルにも?
……心だけ体から離れて着いてきてたから、気づかれずに入れたよ。
ああ。そっか。
この世界でもあきさんはあきさんだった。
ほんと元々インナースペースの操作には慣れてるのね。
じゃぁ。
わたしはあきさんの頭に直接キオクの一部を流し込む。マジカルレイヤーの術式を。
ねえ、あきさん。わたしとレイヤー合成してくれない?
……ああ。理解した。
あきさんがマジカルレイヤーでわたしやナナコサーラレヴィアごとレイヤー乗算する。
そして。
わたしはあの時のニケあきにゃーの姿に変わった。