転生少女、と、魔王バルカ。
ビー! ビー!
突如、警報音が鳴り響き、驚いたわたしたちが振り向いたそこ、入り口の扉が爆風と共に吹き飛び、一人の男が現れた。
……バルカ!
あいつが、そう?
……うん。間違いない。
「バルカ殿じゃないか。無事だったのはいいが壊して入ってくることはなかろ?」
「悪いな博士。俺の目的はほぼ達成された。後はそこにある最後のカケラ、リウィアのカケラを回収して元世界に帰らせてもらう」
え? リウィアのカケラ?
……ああ、あの薄紫の結晶。リウィア様なの?
ああ、もう、そういう事か。
あのバルカからはグリフォンの魔力も感じる。混ざってる。
エンジェルレイヤー使ったんだ。
リウィア様の肉体と魔王のカケラの半分、そしてグリフォン。
……あれ、もうほとんど先代魔王の魔力の色に染まってるよ。
うん。ナナコ。
やらせない。
このまま好きにはやらせない!
わたしの周りの空気が変わるのがわかる。
内在するナナコとサーラ、そしてレヴィアの魔力も纏い、わたしは魔法少女にレイヤーチェンジする。
「あんたの好きにはさせない!」
わたしが魔王なんだから!
「おお、お前、わかるぞ、ポンコツ魔王だな。グリフォンのキオクにあった。しかしな、もう遅い。既に俺の魔力量の方が上回っているようだぞ」
バルカは黒のマントを翻し、その魔力を吐き出した。
真っ黒な磁力線のような魔力が周囲を巡る。
……ああ、魔力を見せただけで可視化した嵐の様に見えるなんて……。
……これは、ゆっくりはしていられないぞ、魔王殿。
うん。
右手からクロコとシロを射出。途端に大きくなりバルカに飛びかかる。
その隙に、っと。
左腕を中央の結晶体の入った筒に向け、レヴィアを射出。大きく口を開け、筒を突き破りその結晶を飲み込むレヴィア。
「おお、なんて事を」
ごめん博士。でも、あいつにリウィアさん渡すわけにいかなかったから。
ちっ
苦々しい顔をして舌打ちするバルカ。しかしバルカは直ぐに表情を戻し、
「まあいい。お前ごと吸収すれば済む事だ!」
そう叫ぶと絡むクロコとシロをマントで弾き飛ばし、魔力波を放つ。
ドン!
という音と共に天井が抜け、瓦礫が降ってきた。
「危ない!」
わたしの中のサーラが魔力膜を貼り、博士と麻里子、令を包むように守る。
「ありがとう。手を貸したくても無理、ごめん。魔力が桁違いだよ」
そう、令。
ちょっと震えてる。しょうがないよね。こんなのわたしだって以前だったら心が持たないよ。
……魔力膜切り離したから少しは離れても大丈夫かな。
うん。
「あなたたちはこのままで。わたし、あいつを此処から引き離します」
魔力膜バリアのお陰でここは暫く持つだろう。でも、これ以上破壊されると建物が持たない。
わたしは全身にオーラを纏い、バルカに飛びかかった。
すーっと浮かび上がるバルカにタックルをするようにぶち当たり、空に飛ばす。
ビルから離れたところでバルカがこちらをぎろりと睨むと、まるでついてこいとでもいうような顔をして、そのまま振り向き飛び去った。
……ついていくの?
うん。決着つけよう。
わたしもそのままバルカの後を追いかけ飛んだ。