転生少女、と、天城製薬。
麻里子に連れられて来たのは駅前のビル。
天城第五ビルディングって看板が出てる。
あきさんも居ないしありあまりあも学校だ。
令だけは学校サボってついてくるっていって同行してくれた。
「此処からはこの認識票持っててね。そうじゃないと途中の扉通れないから」
麻里子がそう言って渡してくれたカード。
銀面にguestと刻印してある名刺サイズのそれが無いと途中のセキュリティに引っかかってそれ以上先に進めないってことらしい。
エレベーターで38階まで行く。扉が開くとそこはオフィスの様に見えた。
大勢の人間が働いているそこに到着すると、
「おじいさまは研究室?」
という麻里子の声に反応してひょろっとした白衣を着た男の人がこちらに近づいて来た。
気だるそうな様子でその男性、ボソボソと話す。
「ああ、博士は本日は管理棟ですかね。管理ナンバー0ゼロと対面中の筈です」
「そ。ありがとう」
「そちらの方は……?」
「あたしの協力者よ。研究内容のことで新しい情報があるからおじいさまにおはなししたくって」
「そうでした……。先日の事件後此処の人員も過敏になってますから、くれぐれもお一人になさらないよう気をつけてくださいね」
「わかってるわ。じゃぁ行くわね」
そういうと麻里子、そのままオフィスの中を横切り廊下まで出る。
わたしはなんとなくここにいるのが気まずくて、そそくさと麻里子の後をついていった。
「なんかやな感じ」
と、令。
広い廊下に出てもうさっきのオフィスまでは声は届かないだろうけど、そう吐き捨てるように言った。
確かになんとなくやな雰囲気の男性だったなぁとかは思うけど、そこまで言う程でもないかなぁとかぼんやり考えて。
「事件の後不審者に過敏になるのはわかるけど、あたしの協力者だって言ってるのに不審者扱いはないわよね」
そう、麻里子。
ああ、そういうことか。わたし不審な目で見られてたのね。
ぜんぜん気がつかなかった。
……あは。アリシアらしい。
……亜里沙ちゃんを不審者扱いなんて許せない、って、わたしだったら思っちゃいますけどね。
あはは。
まあ、しょうがないよね。
わたしが鈍感なだけなんだろうけど。
廊下を抜け隣のフロアについた。此処から更にエレベーターで上に上がるらしい。
「この一角は全てうちのビルなんだけど、外からは入れない真ん中のビルが管理棟になってるの。入り口はここしかないのよ」
ってあっさりと言う麻里子。
あはは。流石にちょっとびっくりした。
この世界の天城製薬って会社、ほんと普通の会社じゃなさげ? 確か友坂さんのお話だと秘密結社みたいなノリで書かれてた気もする。
彼女が魔力に目覚めたのも天城製薬の薬のせいだったかな。確かそう。そんな設定だった。
そう。前世で読んだ「小説家になろう」ってタイトルのお話のシリーズの2話目。
わたしが読んだのは確か翔子さんって子が天城製薬に攫われて、あきさんが悠を助けて、そんでどうしたっけ……。
リーザはねこだって言ってたし、あきさんが世界を渡るキッカケになったのは悠さんと天城博士が対立した結果だって言ってたっけ。
少なくともここから数年先の話には違いないけど、でも……。
ちょっと、怖いな。
天城博士って……。