転生少女、と、パラレル世界?
でも。
違う?
わたしが此処であきさんに会っていたのなら、あの時であった時に向こうにはわかってた筈。
だったらやっぱりこのあきさんはあのときのあきさんとは別人なんだろうか?
パラレル世界のあきさん、というだけなのだろうか?
目の前に座ったむすっとしたあきさんを眺めつつ、わたしがそんな事を考えている時。
「遅くなっちゃってごめんー」
と、ありあがやってきた。
そして麻里子の隣にいるあきさんに気がついたのか、
「あき、さん……」
と、小さく声が漏れる。
「あ、あの時の……」
あきさんの方もありあを見て、そう。
あきさんの表情が少し柔らかくなって。そして、二人が見つめあう。
ああ、完全に二人の世界作ってるよ。
見た目だけなら美男美女なんだけどな。女子制服のあきさんも素敵なんだけどね。
「あたし、どうしてももう一度あきさんに会いたくて……」
「俺も、会いたかったよ……」
「もう、二人の世界作ってないで座って。ありあ」
「あ、ごめんまりあちゃん。ありがとう」
と、ありあはあきさんの隣に座る。
わたしの両隣に令とまりあ。
前の席に麻里子あきありあ。
完全に囲まれた格好。
さあ、どうしようか。
何処から話せばいいのかなって考えて、目の前のコーヒーを一口啜ってから、思いきって切り出した。
「エンジェルレイヤー、知ってる?」
と。
いきなりの言葉に驚愕する面々。
この反応はよく知ってそうだ。だとすれば、あの時のあきさんに聞いた話はこの世界でも起こってた事かも。
「わたしの世界にもこの世界から渡って来た人がいたの。マジカルレイヤーをー使いこなす魔法少女で、その人が言ってた。
『あるマッドな博士の研究成果で、魔法の触媒を人のインナースペースと重ね合わせ融合し変換して書き出す。それによって元々魔法回路を持たない人間でも魔法少女になれる、っていうエンジェルレイヤー。その過程で色々変質したりする個体もあったりで。性別が変わったり人格が変わったり。色々ありすぎて、結局危険だからってお蔵入りになった魔法』
って」
「ああ、お蔵入りになったんだ……」と、令。
「ほんとびっくり。あなた本当に未来から来たの?」と、麻里子。
ありあは呆然としてる。どうしよう? この子の身体のこともちょっと心配なのだけど。
……不安の色が濃くなってます。此処では色が言語に変換されないみたいでそれ以上はわからないけど。
ああ、サーラありがとう。
そして、睨むようにこちらを見るあきさん。
「にしても、マジカルレイヤーを使いこなす魔法少女って、誰だろう? 今現在はまだ誰にも伝授してないよね? 麻里子」
「そうね。令のマジカルレイヤーを補助アイテム無しに使える人なんて、聞いたことないかも。もしできるとしてもあきくらい?」
「俺は初耳だ。そのなんとかレイヤーって。天城博士の研究には積極的に関わらないようにしてたから」
「うん。まだあきには話してなかったよね」
うん。やっぱり。
この中で一番強い魔力を感じるのはあきさんかな。
それでもあの時のあきさんには程遠い。
あれ、ともさかさんの魔力とあきさんの魔力が混じって増幅してる感じだったし、そういう事?
……あきさんもともさかさんも確か20歳超えてるって話してくれたから、この世界からやっぱり3〜4年は先?
そっか。日本人だから若く見えたけどそれくらい経ってるんだね。今のこの世界から。
じゃぁやっぱりこれ以上は話さない方がいいか。運命変わっちゃうかもだし。
じゃぁこれだけ。
「本題に入る前にごめんなさいだけど、わたしそこのありあちゃんの身体がちょっと心配。彼女、かなり変質してるでしょ?」
まわりみんな、固まった。
爆弾? 投下しちゃった、かな……。