転生少女、と、ひみつのアリアちゃん。
「はは、ばかじゃないの? 選ばれたとか、そんなの。君はただの道具だよ。ボクのためのね」
世界の狭間を通り抜け、辿り着いた先は……。まだ狭間の空間だった。でも何故かそこに存在する《いる》黒猫と少女の修羅場? に、出くわした?
喋る猫と震える少女。っていうかこの子すごく可愛い。
「全部嘘だよ。憎かったのさ、君が」と、黒猫。
「どうして? あたしたち会った事も無かったよね……?」少女は震える声でそう。
「ん? ボクだって君に会ったのは夢の中だけだよ。でも、それで充分だった。君に嫉妬した。君になりたかった。なんでボクは君じゃ無いんだろう。それが悔しくて忘れられなかった。君の身体にはボクの身体をレイヤー乗算してある。その身体、ボクのなんだよ。いい加減返してもらわなけりゃ」
なにそれ? っていうかレイヤー乗算? まるでそれってエンジェルレイヤーみたいな事を……。
「物分かりが悪いな。君が今女でいられるのはボクの身体だからだよ。だからボクが分離すれば君は元の君に戻るのさ。嫌かい? なら、その身体ごとボクのものになりな。ボクなら君より上手くその身体を使ってあげるよ」
ああ、間違いない。あれはエンジェルレイヤーだ。あの女の子、変質してる。
と、すると、っていうかどうするか?
「そこの二人。ちょっと尋ねたいことがあるんだけど、いい?」
わたしはなるべく穏便に話しかける。
「え?」
「ちっ」
急に現れた(様に見える?)わたしに驚く二人。
「あんた、どこの誰か知らないけど、邪魔するなら容赦しないよ?」
黒猫の子、っていうか黒猫に憑依? してるその子はこちらを威嚇する様牙を剥きながらそう言うと、あからさまに全身にオーラを漲らせた。
「こういう手合いには我の出番か」
わたしの右手から少し顔を覗かせたレヴィアさん、ゆっくりと身体を滑り出すように出てきて。
レヴィアさんが威嚇しやすい様わたしも右手を持ち上げて黒猫に向けた。
強力な魔力のオーラがほとばしる。それは明らかに彼女? 黒猫を上回って。
黒猫の彼女、フサフサに立ち上がっていたしっぽがシナシナと垂れたと思うと、
「ふん!」
と、負け惜しみにも聞こえる声を発してその場から消え去った。
ちょっとまだ怯えてる少女。
うん、あらためて見てもこの子かわいい。なんていうか、少女少女した可愛さと言ったらいいか、その辺のアイドルに負けてない可愛さだ。
ああ、こんな子もいるんだなぁ、と、ちょっとだけ嫉妬したのは内緒。
……あは。でも同意。この子ちょっとかわいすぎ。
ああ、瑠璃もそう思う?
……あたしはアリシアも負けてないと思うけどー?
うう、ナナコごめんねありがとう。
わたしは極力冷静を装って、「ねえ、あなた。大丈夫?」とその少女に声を掛けた。