転生少女、と、レヴィアタン。
「アリシア! アリシア返事して!」
「亜里沙ちゃん、大変なの!」
え?
どうしたの?
……ごめんアリシア。あたしもシロが可愛くてそっち見てて気がつかなかった。
ああ、ナナコも。
「どうしたの? 何かあった?」
完全にインナースペースに籠っちゃってたから表の状況わかってなかったよ。
「いきなりで対応できなくて……。コルネリアが……」
「なんかあれ、完全に魔力隠蔽してたみたいで……。わたしも気がつかなくて……」
「コルネリアが……、どうしようコルネリア……、攫われちゃった……」
「空からおっきな鷲? が急降下してきて、たぶんサーラを狙ったんだと思うけど、気がついたコルネリアがサーラを庇った所を掴まれて連れ去られたの!」
「東の方角へ飛んで行ってしまったの……、ああ、コルネリア……」
……魔王石の魔獣、鷲の魔獣? グリフォンかも?
ああ、でも、どうしよう、魔力を隠蔽出来ておまけに空飛ぶ魔獣なんて、どうしたら……。
クロコもシロも空は飛べないし、わたしの空中浮遊じゃ、そんなに遠くは無理、かな……。
ちょっと手詰まり。
サーラは責任を感じてか泣きそうだ。
風がだんだん強くなり、池の周りの樹々が揺れる。雲が流れるスピードが速くなってきた。嵐の前兆?
まだ太陽は正中にあるはずなのに、急に辺りが薄暗くなった。
湖が……、渦を巻き始めた。
「ちょっと何あれ?」リーザが叫ぶ。
湖面が激しく揺れる。波飛沫がここまで届くほど飛散して。
ここの湖の名前はネス湖? じゃない、よ、ね?
ザーン、という音とともに、巨大な竜の首がムクッと持ち上がり、こちらをギロリと見る。
わたしの中からクロコとシロが飛び出して巨大化する。
ふたりともその竜から私たちを庇うように前に出て威嚇するように唸った。
「竜?」
今度はドラゴンか。
……一度に2体も現れるなんて……。探す手間は省けるけどついてない、ね……。
取り敢えず戦わなきゃいけない、の、かな……?
「サーラお願い魔法壁を、アリシアも攻撃魔法準備お願い!」
リーザの掛け声に戦闘態勢を取るわたし達。サーラも取り乱してたけど落ち着いたかな。
《其処に居るのは魔王か? 》
ビン! と耳に響く声が聞こえる。このドラゴンが喋った?
《魔王だけどなにか用?》
わたしの代わりにナナコがそう答える。っていうか、これって声じゃなくて思念?
……そ。思念通話。それも上位魔法のね。通常の思念波とはちょっと違うよ。
《我はレヴィア。原初の魔王より生まれし者。貴女が現在の魔王であるなら我は戦わぬ。貴女に仕えよう》
そう言うとレヴィアは湖からその巨大な身体を浮かし、光の玉に包まれた。
そして。
光がだんだんと小さくなったかと思うと其処に現れたのは綺麗な人型の女性。
耳に魚のヒレみたいのが付いていて海人の様な容姿の美人。すらっとした体型にふわっとしたキトンを着て、さながら海の神さまって感じになった。
目の前にふんわり降り立つレヴィア。
《ああ、レヴィアだったんだ。久しぶり》
《貴女様は……、神様? 魔王の中にいらっしゃるのですね》
「何? 知り合い?」
……昔のね。
「じゃぁ戦わなくていいのね。よかった」
と、リーザ。
「この思念通話はこの場にいる全員に通じているのですね」
《うん。そうなの。だからねサーラ、これ使えばあたしだってみんなと話せたんだって今気がついたよ》
「あはは。そっか。今までサーラとは話せてもリーザには聴こえてなかったもんね。ナナコの声」
「そうですよー。ナナコさんと話せるなんて嬉しいです。これからもよろしくお願いしますよ?」
《うん。よろしくねリーザ》