転生少女、と、冒険者組合。
城下を出てまずエイラ村を目指したわたしたち。
移動は特注の馬車。馬を外し展開すると広々テントになるというアウトドア好きが泣いて喜ぶキャンピング馬車だ。
で。
引くのは馬ではなくてクロコ。
洞窟ライオン並みに大きくなったクロコはこれくらいの馬車軽々引くから心強いかな。
馬を買ってとかも考えたんだけど、わたしたちが戦ってる間に襲われちゃったら困るし可哀想。
テントになってる時はクロコはちっちゃくなって中に居るからちょうどいいのもあるしね。
荷物をインナースペースに収納する方法っていうのをあきさんが話してたのを聞いたことがあったんだけど、これが結構便利で。
この世界の人で出来る人は聞いたことが無いってサンドラさまが言ってたんだけど、わたし、けっこうさらっと出来てしまった。
まあ、クロコが出入りするくらいだからイメージし易かったのもあるのかも。
あきさんが入ってきたこともあったしね。
あんまり変なものは気持ち悪いから入れたくないけど日常の必要なものくらいならいいかと思って、今回かなり色々なもの持ってきた。
収納する気になれば馬車だって入っちゃうからほんと便利。
魔力で動く大型冷蔵室も持ってきちゃったから、食べ物も腐らないし。
うーん。
ほんとの冒険者さんだともっと苛烈な環境で戦ってるんだろうなとか思うと申し訳ないけど、最悪全員まとめて空間転移で逃げることも出来るわたしたちはかなり恵まれてるかも。だ。
そんなこんなで最初の町に辿り着いた所で情報収集することにしたわたしたち。エイラ村はもう少し先だけどあそこはあんまり大きくないし、この手前のアウルなら冒険者組合の支部もあるらしいし。
冒険者組合。通称ギルド。
まあ、ありきたりだね。
帝都に本部をおくこの世界のギルドは、冒険者として活動している人達の寄り合い所帯として発足したと聞く。
最初は規模も小さくあったほうが便利だからって意味の組織だったのがだんだん発展して。
今じゃ立派な利権組織だ。
帝国軍のお偉いさんが引退後天下ったり、警護署と密接に関わったり。
国の公的機関ではない筈なのに、もはや準公的機関並みの扱いになっている。
で、いつの時代からか冒険者にも国家資格が出来て、ちゃんと試験を受けないと冒険者にもなれないらしい。
資格のない冒険者は私闘やトラブルに巻き込まれた時に国の保護が受けられないし、ギルドを通した依頼も受けられない。
素材や魔石の買取価格にも影響するから、みんな頑張って資格をとるし、それが冒険者の質の向上にも役立っている。
わたしたちは、と、いうと。
とりあえず出発前に資格試験に望んだ。サーラは公主だっていうのは内緒でね。
あ、コルネリアは出自も性別も内緒で。
というか試験申し込みには性別欄は無かったからよかったんだけど。
発行される資格証のプレートには魔力紋が刻まれるから、この世界では唯一無二の本人にしか使えない身分証になる。
一度登録するともう二度と別人として登録し直すとか出来ない。再発行は可能だけどどちらにしても本人以外には使えないプレートなのだ。偽造もなりすましもできないし。
だから。
これはギルドに登録した本人である、という証明であって、その出自を明記するものでもないので。
身分を偽って試験を受けようがそこまではギルドは感知しないらしい。
嘘をつくのにちょっと罪悪感を感じてたわたしは、そうサンドラ様の説明を聞いて少しほっとしてた。
ギルドの扉を開けるとちょっと騒然としてた。
こんなに普段から騒がしいの? って思ったけどちがったみたいで。
「東の森で大量の魔物が発生、現在いつ暴発するかわからない状態、ですって!」
ボードのトップに書かれていた情報を読んで、リーザが叫んだ。