リウィアとバルカ。
「バルカ! あなた……。リウィアさま、助けに来ました!」
わたしはそう叫ぶと部屋の中に踏み込んだ。
コルネリアはわたしの前に立ち、剣を構える。
部屋の中は爆発の後のように焦げ臭い。周りの倒れている人達も……。たぶん、もうすでにこときれている。
「これはこれは。先日邪魔をしてくれた皇女様ではないですか。しかし、たった二人でどうしようというのでしょうね。少女が二人、で、私達が止められるとでも?」
バルカの顔は嘲るように歪む。
「サーラ、あなた、一体どうやって……」
リウィアさまは安堵ではなく驚愕の色で、言った。
「お話は後で。今はこの窮地を乗り切りましょう」
そう。なんとか笑顔で答えるけれど、どうしよう。
「サーラ様。この膜は伸ばせますか?」
と、コルネリア。
「私が突っ込みます。サーラ様は守りに専念してください!」
そう言うが早いか剣を構え敵兵の真っ只中に突進するコルネリア。
身長が低い分、弾丸のように兵士の腹部に当たるとそのまま相手の剣を無視して切り裂いた。
敵の剣は表面の膜に阻まれ弾かれる。コルネリアは恐怖を乗り越えたように、ただひたすら攻撃の手を休めなかった。
「むん!」
バルカの手から衝撃波が生まれコルネリアに直撃する。
攻撃自体は防いでも、その衝撃は小さなコルネリアを押し戻す。
わたしの側まで吹っ飛ばされた。
前方の敵数人の壁は破れている。今のうちにリウィアさまと合流を、と、焦るわたしに、衝撃が襲う。
一瞬目を塞いだその時。
バグン!
眩い光を放ち、魔王石が弾けた。
周囲の状況がスローモーションに見える、その光景は。
砕けた魔王石はあらゆる方向に弾け飛び、建物の壁を突き抜け。
リウィアさまの居た空間が歪んだ。
バルカが手を伸ばしリウィアさまの手を掴んだとき、歪んだ空間はそのまま二人を包み込み。
そして。
まるで、小さなブラックホールでもあったみたいに、リウィアさまを中心に半径1メートルくらいの物質を飲み込んだその穴は、ゆっくりと縮み、そして、一点の黒い球形になった。
ガラス玉のように見えるその球形は、空中に留まり、まるでそこだけ時間が止まったかのように、そのまま留まり続け。
そして。この騒動の幕が閉じたのだった。