表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/176

女神の祭壇。

 夕食の後。


 リウィア様にお願いした。

 二人っきりでお話がしたいって。

 なんとなく、だけど。

 このおはなしはリウィア様だけにしかしてはいけない気がした、のだ。


 ほんとはわたしの部屋まで来てもらいたかったけどそうもいかず。リウィア様の泊まる寝室の隣の応接室を使う事に。

 人払いして二人きりで向き合って。

 だけどなかなか最初の一声が出ない。


 もじもじしてると。

「ねえサーラちゃん。あなたもしかして色々見えるようになっちゃった、とか?」

 そう、リウィア様から。

「そうなんです。なんか凄く嫌な予感がしてて。ビジョンも見えて。でも、こんな事他の人には話せなくて……」

 それにリウィア様に危険があるビジョンなんて、他の人に話せない。

「そうなのですね……。わたくしも子供の頃同じような経験をしたのですよ……」

 リウィア様のお顔がちょっと曇る。

 ……ああ、この子が次なのね……。

 それは、同情? 憐憫? 何故そんな感情なのかわからなかったけれど、そう感じた、そんな気持ちの心の声だった。


「ちょっとつきあってもらえるかしら」

 そう言うと、リウィアさまは立ち上がり、廊下に出る。

 わたしはその後をついていった。

 アスターニャは居ない。手を引かれず一人で廊下を歩くなんて新鮮で。目の前をスタスタ歩くリウィアさまになんとかついていく。

 わたしって歩くの遅かったんだな、とか、今更ながら考えて。


 無言で廊下をどんどん歩くリウィア様の色は決意の赤だった。何か儀式の様に、わたしも無言でついていく。ちょっと疲れた。


 扉の前で止まるリウィア様。

 やっとたどり着いた?

 そこは、聖堂。

 皇帝が神に祈りを捧げる場所。

 わたしはそこには入った事がまだ無かった。


 リウィア様が扉を開けると真っ赤な絨毯の先に祭壇があり、そこには黄金色の聖杯が見えた。祭壇には神々の絵姿が描かれ、中央には女神の姿。

 その女神は流れる様な金色の髪、透き通るようなブルーの瞳。整った顔立ちは穏やかで、神秘的な微笑みを浮かべていた。


「貴女にこの世界の責任を背負わせる事になる……。ごめんなさい。たぶん、わたくしにはもう時間が無いのね」

 ああ、リウィア様……。

 わかってるんだ……。リウィア様にはたぶん、すべて……。

「ダメ、リウィア様。わたしリウィア様を助けたくておはなししたかったの。わたしが守る。リウィアさままもるから……」

「そうね。あきらめちゃ、だめよね。わたくしも抗ってみせますわ。ありがとうね。サーラちゃん」

 リウィア様はわたしの頭を優しく撫でて。

 そして、祭壇に向き直ると、聖杯に手を添える。


「カッサンドラ様の加護を」


 聖杯から光が溢れて。




 その光はわたしを包み。

 そして。

 わたしの意識は真っ白な、いつか来た、あの空間を漂った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ