皇女サーラ、と、優しい世界。
「リウィアさまがまもなく到着なされると先触れがありました」
アスターニャがそう知らせてくれた。
「さあ。準備してお出迎えに参りましょう」
髪を少し整え直しドレスの裾を整えて、わたしの手を引くアスターニャ。
もうわたし八歳だしもう子供じゃ無いのになぁ。
手を引かれなくても歩けるのに、とも思うのだけど。
手を引くアスターニャの心がいつも嬉々とした色なので言い出せずにいる。
お出迎えは城の大ホール。
大公の弟君に嫁がれたとはいえベルクマール大公国は帝国内でも高い地位を誇る。帝都に在住の主だった貴族は勢揃いでお出迎えに出向いてきていた。
おとうさまおかあさまおにいさまおねえさま。わたしはその隣にひっそりとついた。
アスターニャは後ろに控える。おねえさまが代わりにわたしの手を取った。
「楽しみね。サーラ」そう、にっこり微笑んで。
ねえさまはほんと優しいな。大好きだ。
この世界。わたしの周りにいる人はほんと優しい。
おかげで前世のいじけた心が随分洗われたきがする。わたしの心も少しは綺麗になったのだろうか? そんな事も思ったり。
大扉が開き中央をゆったりと歩いてくる女性。エスコートはマルクス様か。大公アントニヌス様の弟君でベルクマール大公国の宰相を務めているという。かなりの美男美女の夫婦だ。
「よくおいでくださった。マルクス殿。妹は役にたっていますか?」
ゆったりと到着した二人に声をかけるおとうさま。
「まあ。わたくしはちゃんと務めを果たしていますわよお兄様。お兄様こそ周りに心配かけてはいませんか?」
「わたしには過ぎた伴侶ですよ。陛下。本日はお招きありがとうございます」
砕けた会話。うん。固苦しくなくてなんだかほのぼのする。
周りの貴族達もいたずらに格式張った感じでもなくゆったりとした色で見守っているからいいのかも。
「子供達もお前に会うのを楽しみにしていたよ。あとでゆっくり話をしてやってくれ」
「皆、ずいぶん大きくなりましたね。あとでゆっくりお話しましょう。楽しみにしてますね」
わたしたちは軽く会釈するだけでしっかり挨拶できなかったけど、またあとで、が、ほんと楽しみ。
マルクス様リウィア様は貴族の人たちに挨拶をしに向かった。おとうさまとおかあさまはもう少しこの場に残り話があるらしい。
わたしとねえさまは控えからお部屋に戻る。
帰り道もアスターニャに手を引かれて。