皇女サーラ、と、不安な予感。
八歳になった。
あの聖女のチカラと呼ばれた守りの膜は、あれ以来発動しなかった。
いろいろとテストもされたけど、ダメで。
やっぱり本気で願わないとだめなのか? そう思ったりもする。ほんともう少し自由に使えないとチートにはならないなぁとか、そんな事も考えたりした。
魔法省のお役人はもっと学術的に調べるべきだ、とか、流石預言者の御血筋だ、とか、次代の公主に相応しい、だとかいろいろうるさい。
おとうさまが抑えてくれてるから良いものの、かなり強引に話をしてくる人もいてちょっと怖かったりする。
昨日もコンスルの一人ルキウス卿がやってきておとうさまに直談判したらしい。わたしを研究するべきだ、って。ほんと怖い。
皇家の姫は生まれながらに祭祀に尽くす義務があるとかなんとか。わたしには自由がないのか? なんだかほんとすごく憂鬱、だ。
今日はベルクマール大公国に降嫁した叔母さま、リウィア様が里帰りで帝都にいらっしゃる予定。到着は午後になるらしいけど、楽しみだ。
おとうさまの妹のリウィア様は二年に一度くらいしか里帰りしないんだけど、二年前のわたしが六歳の時はあまりお話をする機会が無かった。
リウィア様は大預言者としても優秀で、ほんと素敵な方だっておかあさまに聞いてたから一度じっくりお話を聞いてみたかったのだ。
それに、実はまた嫌な予感がしてるのだ。まだはっきりとしないし警鐘も小さいのだけど、ここ数年のうちに何か良く無いことが起きそうで。
怖い。
この不安を誰かに話したいけれど、こんな曖昧な不安、わかってくれる人、いない。
おとうさまもおかあさまも、大丈夫だよとかしか言わない。
わたしが不安なのをまだ小さいからとか去年の心の傷が、とか、そういう風に思っているっぽい、のだ。
ラインハルトさまが居れば、とも、思うけど、彼はおじさまと一緒に各地を巡っているらしい。
ユリウス卿は動けないおとうさまにとっての目であり手足であるらしい。彼がおとうさまを支え、そして各地を抑えているのだ。
執政官、コンスルは五年が任期。
各地の選挙で選ばれた民会の委員により選挙で選ばれる。立候補や貴族院の推薦で候補が決まり、そこから九人選ばれる。彼らは五年任期で毎年誰かが改選になるよう組み合わさっていた。
ユリウス卿は二期目だけれど、来年は改選の年なのでまた帝都に戻ってくるだろう。その時にはラインハルトさまにまた会えるかな。
別にラインハルトさまに恋愛感情を持っているわけではない。うん。絶対に違う、と、思う。
だけれど、何故か彼ならわかってくれる、彼なら頼れる、そう、おもえる。