皇女サーラ、と、転生者。
午前中の講義は政治経済、そして歴史だった。
おとうさまが即位したあたりから始めて、そして過去に遡る形の講義になる。やっぱり一番知ってなくちゃいけないのは最近の出来事だろうし、ただただ学術的に習う訳ではないからだろう。
この国の政治はほんと前世の日本に似てるなぁって思うのと、あと古代ローマの民主制とか帝政とかの時代の雰囲気だけ移植したみたいな感じもしてなんか変。執政官とか法務官とか、ほんとそう。意味は違うけどわたしが読んだローマの歴史書と名前もいろいろ被ってる。
うん。そんな当時から転生者がいたのかなぁとか。そんな事も考えたりする。
講義が終わりお昼ご飯の前におにいさまのお部屋へ向かう事に。
当然のようにアスターニャに手を引かれて。
……ふふ。サーラさまの手、ちっちゃくてぷにぷにしてて、ほんとかわいいなぁ。
そんなアスターニャの心の声が漏れてくる。
これ、実は誰でもどんな時も見える訳でもないんだよね。
おとうさまやおにいさまおかあさまの表層意識はあんまりはっきりとは見えない。ほとんどの場合ぼんやりとわかるくらい。わたしに対する好意は、それでも充分伝わってくるのだけど。
やっぱり普段からの心の持ち方というか精神的な強さというか、そういうのもあるのかも。わたしに対する警戒感が強い人の心もあまり伝わってはこない、かな。感情は見えるけど。
護衛騎士さまのうち、あまり皇家にいい感情を持ってない人のそんな感情は見える。だけど、そういった人の表層意識は見ようと意識しない限り見えてはこなかった。
本気で観ようと思った時にどれだけ見えるのかは確かめたことはないけれど、それ、は、やっぱりあまりしたくない、事だったから。
人から嫌われるのは怖い。
悪意を向けられたくない。
わたしは、臆病だ。
☆
部屋に入るとそこにはおにいさまとおねえさま、そしておにいさまを少し大きくしたような人がいた。
おにいさまは12歳だから、15歳くらい? この国の成人は15歳だというから、ちょうどそろそろ成人かといった感じの少年だった。
ああ、前世でハイティーンだったわたしにとって、おにいさまもおねえさまも年下にしか思えなかったっていうのは秘密だ。
そんな事をぼんやり考えて。
「初めまして。ラインハルト様。サーラ・トワイエル=アマテラスです。よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな」
……お前、転生者、か?
ああ、皮肉屋さんっぽい表情を浮かべているラインハルト様から、そんなダイレクトな意識が見えて。
わたしは固まった。