皇女サーラ、と、心の色。
光の色の変化がいつのまにか文字のように見えてくる。
それが他人の心の声だと気がついたのはいつからだったか。
「おはようございますサーラさま。朝食前にお着替えと御髪を整えますね」
目を覚ますと待機していたアスターニャがわたしをベッドから起こし着替えをさせてくれる。
……サーラさまは私の思う通りに動いてくれるからほんと楽でいいわー
「ありがとうアスターニャ。わたくし、自分でお着替え出来るようにならなくちゃいけませんね」
「いえいえ。サーラさまのお世話は私にお任せください。それに、サーラさまはまだ七歳なのですもの。もっとお子様らしく甘えたりわがまま言ったりしてもよろしいのですよ。その為に私達が控えているのですから」
にっこりと笑顔になるアスターニャ。心の色も、微笑ましいって色になっている。
わたしのお世話は主にアスターニャがしてくれる。彼女がいないとほんと困る。わたしには自分の着替えがどこに有るのかもわからないのだ。
ヘアメイクが一段落したあと、靴下を履き靴が合わされる。
そしてやっとベッドから床に降りる事ができた。
お手洗いに行くのにも手を引かれ、そして食堂へ。
お父様の方針で、家族が揃っている時はなるべく一緒に食事をする。
朝ごはんの時間はほんと楽しみ、だ。
「おはようございます」
「おはよう、サーラ」
「「「おはよう」」」
おとうさまおかあさまおにいさまおねえさま。皆笑顔で綺麗な色を纏ってる。
わたしは嬉しくなった。
朝食はまずオニオンの入ったコンソメスープ。麦芽のパン。
たっぷりのレタスにフレッシュなトマト。うっすら塩味だけだけど、おいしい。
そしてゆで卵をカットしてサラダの上に盛り付けてある。
質素? だけど、とてもヘルシーで美味しい朝食だ。
あんまり贅沢な食事が献立に出てきたことは無い気がする。
そう。ほんとうにこれが皇帝一家の食事なのか。そう思ったりもしたけれど、これはこれでわたしの好みにはすごく合ってて嬉しい。
心の色が見えるようになってから。
わたしはまだ悪意色を見た事がなかった。
ほんとうに、幸せ、だったのだろう。この時は。