皇女サーラ、の、覚醒。
熱に浮かされわたしはかなり変な言葉を口走っていたらしい。
この世界の言葉は日本語でもなければ前世の地球のどこの言葉とも違う。どうやらまったく違った発音なのだけれど、何故か相当する言葉のカタカナが存在する。
ちょっとおかしな世界だ。
カタカナを持ち込んだのは異世界人や転生人。そう。この世界にはそういった異世界人がごろごろいるのだと。そう講義で習って衝撃をうけた。
わたしには六歳の誕生日から教師が付いた。歴史に数学に語学。皇族に相応しいマナー等、も、授業があった。
そんな転生人であるという自覚が少しあったわたしは、それを周りに話していいものか考えあぐね。
そして。
この七歳の誕生日のお披露目の当日に熱に浮かされ寝込むことになったわたしは、瑠璃だった時代の夢を見て。そして、自分が瑠璃で有ると自覚するにいたったのだった。
最初に頭に浮かんだことは、自分が皇帝の一族に生まれてしまった、ということだ。改めてそれがどんなことか、どんな大変なことか、と。
前世の記憶からその責任と重圧とを思い浮かべると、自分に務まるのか? と、不安になる。
こうして明確に前世を自分の事だと理解する以前は、ただただちやほやされてるのが嬉しくて、これが当たり前ならお姫様もいいなぁ、くらいにしかどうやら思っていなかった。
なんか、すごく、恥ずかしい。
そして。
「目が覚めたのね? サーラ」
優しい眼差しでわたしを覗き見る、おかあさま。
「おかあさま。わたくし、どれくらい眠っていたのかしら」
倒れたのは多分お昼。そろそろ夕方か?
「お披露目の日からずっと目を覚まさないから心配しました。可愛いサーラ。丸二日間起きないのですもの」
おかあさまの瞳が潤んでる。ああ。この人はわたしのお母さんなのだな。前世とは違う、わたしはサーラなのだ、なと。
そう。
この時、わたしの中で初めて「サーラ」が生まれたのかもしれない。
そう、感じていた。
そして。
おかあさまの周りにぼんやりと光が見える。色のついた光。それはとても温かで、優しい色をしていた。