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七章 平和な町にも闇はある・後編

 武器屋のアームストロングさんからモンスター討伐の詳しい話を聞いて、町を出て北の街道へとやって来た。

 最近、この辺りにゴリラ型モンスター『コング』が住み着いて配達の馬車を襲っているらしい。ギルドに討伐依頼したくても組合内で誰が金を出すかで折り合いが付かず、痺れを切らしたアームストロングが私に討伐依頼したというのが今回の経緯だ。

 鍛冶屋のドワーフ、ランバさんも協力してくれた。「試作の防具を使ってくれ」と言って謎の金属でできたアームガードとフットガード、ボディーアーマーをくれた。これをドラゴン迷彩服の上に装備している。

 今回のモンスター討伐には、病み上がりのアイと空元気っぽいテトラは連れてこなかった。コング討伐の必要レベルは30。想定外の出来事とはいえレベル35まで上がってるし、ボウガンの攻撃力はレベルの影響を受けない固定ダメージ。1人で十分だ。


 真新しいコングらしき足跡を見つけ、追跡する。足跡は街道を外れて林の中へと続いていた。

 林の中を探索し、コングの死体を発見した。刀傷が有るから冒険者に倒されたのだろうか?

「動くな!両手を上にあげて、ゆっくりこっちを向きなさい」

背後から脅された。言われた通り、ゆっくり振り返る。3人組の冒険者が武器を構えていた。

「あれ?・・・シーゲルさんじゃないですか!」

見覚えのある冒険者、ガイ、ジン、レイの3人だった。

「えーっと、実はカクカクシカジカで・・・」

3人に事情を説明する。

「そういう事だったのか。

 いや~、コングの死体を念入りに確認してるから、コングに馬車を襲わせてる黒幕が現れたか思ったよ。

 俺達は馬車を近くの村まで護衛するクエストが完了して帰る途中で、こいつを見つけて討伐したとこだ」

ガイが笑いながらも気になることを言った。

「馬車を襲わせてる奴が居るのか?」

「いや、そういう場合も有るって話だ。盗賊の中に獣使いが居たり、冒険者が楽して稼ぐために生け捕りにしたモンスターを放して護衛クエストが増えるように仕向けたりとかな」

何処の世界にも悪い事を考える奴は要るようだ。


 林から出ると、コングの集団に囲まれていた。狩人ハンターのスキル『探知』で周辺を確認する。

「周囲に29体、倒した分も合わせて30体居たのか」

「そこの茂みに人間が1人隠れてる。おそらく飼い主ね」

レイに言われて再度探知スキルを使うが反応なし。人間に不利な兵種のハンターはスキルも人間相手には使えないようだ。

 アイテムバッグからアサルトボウガンを取り出す。早速の実戦投入だ。

「思ってたより数が多いが、何とかなりそうだ。コングの相手は任せてくれ。ガイさん達は飼い主を捕まえてもらえるかい?」

「いや、俺は足が遅いからコングの相手をする。足の速いジンとレイは奴をとっ捕まえてくれ」

作戦は決まった。飼い主の前に立ち塞がるコング達にアサルトボウガンのフルオート射撃を浴びせる。ノーマルアローでは致命傷にならなかったが、驚いたコング達が慌てふためき包囲網が崩れて道が開いた。

「今だ!行けー!」

ガイの号令でジンとレイが飼い主へ突撃して行った。


 ボウガンに爆裂アローを装填して撃ちまくる。爆裂アローなら致命傷を与えられるようだが、こんな戦法続けていたら財布も致命傷を負ってしまう。結局、ノーマルアローとシャープアローで一体ずつ相手にしている。

 ガイの方は、コングの急所を槍で正確に貫いている。なんか前回よりも格段にレベルが上がってるような・・・?

 戦い続け、ガイが相手にしてるので最後の1体になった。だが・・・

「あのコング、ただのコングじゃないな。スピードもパワーも桁違いで先読み能力まで持ってやがる。ユニーク個体か?」

ボウガンで援護射撃をするが、撃った矢を見事にキャッチされた。零式竜刀で斬りかかっても避けられる。

「なあ、ガイさん。あいつは何で避けるだけで反撃してこないんだ?」

「獣使いの洗脳が解けて戦う意思が無くなった・・・か?」

襲って来ないなら無理に戦う必要もないし、馬車を襲撃しないなら討伐対象外なので武器を収めた。ガイも同じ考えらしく武器を収め、コングも戦闘態勢を解いた。


 少し経ってから、ジンとレイが獣使いをとっ捕まえて連れて来た。ガイが尋問する。

「見たところ盗賊ではないな。何者だ?コング達で何をしていた?正直に吐け」

獣使いは黙秘するようだ。何も喋らない。時間だけが過ぎていく。

「ガイさん、私が変わろう。さて、獣使い殿。情報を提供してくれたら、ロリっ子エルフが働く喫茶店『サイサリス』のコーヒー無料券を差し上げるが・・・どうだ?」

獣使いがロリっ子エルフという言葉に反応した。こういうのに興味があるようだ。

「これではダメか・・・ならエルフキャバクラ『デンドロビウム』の30%引きチケットでどうだ?」

いつだったかクエスト報酬で貰ったチケットで釣ってみる。

「・・・俺の名はグラハム。任務は商業馬車を襲撃して町への物流を止めることだ。そのチケットで喋れる事はここまでだ。他に喋ることは無い」

「もうちょっと情報が欲しいな。このサキュバスのエッチなお店『アンダーヘブン』全店舗で使える女の子指名チケットも付けるからさ~全部話しちゃってよ」

「待て!?シーゲルさん、それ超レアアイテム!!」

ガイとジンが本気で止めに来たが、持っていてもしょうがないのでグラハムにくれてやった。アイリスやテトラに何言われるか分からないし。

「私はザウス王国の軍人だ。国王はガイウス島の巨大ドラゴンを捕獲し、軍事力にしようと考えている。

 そのため討伐を考えているロンメルの町が邪魔だった。だから国際問題にならないようにコッソリ物流を止めて討伐作戦を実行不可能にするのが俺達の任務だった。」

「あの国王、ろくな事考えねぇな。俺達って事は、まだ仲間が居るんだな?」

「あぁ。商業組合にスパイが紛れ込んで、こちらの邪魔が入らないようにクエスト発注を止めたりしていたんだが・・・」

「運悪く通りすがりの俺達と非公式クエストでやって来たシーゲルさんに取っ捕まったと。ふむ、こりゃあ憲兵に引き渡して詳しく聞き出す必要がありそうだな。シーゲルさんもそれで良いかい?」

「憲兵に引き渡すと彼の処罰はどうなる?せっかくくれてやった女の子指名チケットが没収されるのは悲しいんだが」

「この国には司法取引ってのが有ってな。正直に情報提供すれば無罪放免だってあり得る。こいつ次第さ」

 グラハムの話を聞く限りだと、自分達では解決できないだろう。憲兵に引き渡してスパイ達を一斉検挙する方が利口だ。グラハム本人もチケット貰ってからこっちに寝返ったみたいに洗いざらい喋るし、問題ないだろう。

 グラハムを連れて、町に戻るのであった。



「・・・なぁ、ガイさん。ユニークコングが付いて来てるんだけど。なんかガイさんに対して仲間にして欲しそうな眼差しを送ってるんだけど!?」

ガイが振り返る。そしてコングの方に行き・・・

「俺は獣使いじゃないから、モンスターを仲間にするには奴隷契約することになるぞ。それでも良いか?」

「カマワナイ。オマエ、ヤリ、コウゲキ、カッコイイ。キニイッタ」

このコング、片言だが喋れたようだ。ガイのパーティーにコングか加入した。

「はぁ、暑苦しいのが増えた」

レイが小声で愚痴っていた。

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