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五章 いざ、暗黒大陸へ

 テトラが来て翌日の事だった。町の防災無線で冒険者一同に緊急招集がかかった。

 因みに、この世界の電力は雷属性の大型魔法石から電気を抽出しているらしい。もっとも、魔法頼みで科学の進歩が遅れているため防災無線の他、昭和レベルの家電しかない。


~冒険者ギルド~

 集合場所のギルドに早めにやって来た。テトラも冒険者登録する為だ。自由に旅をするために、今まで敢えて冒険者登録しなかったらしい。

 先ずは適性検査からだ。


ーステータスー

名前:テトラ・クラウス

レベル:88

職業:可変兵チェンジソルジャー

スキル:バトルジャンキー、高速兵種チェンジ、格闘攻撃補正S、魔法攻撃補正S、回避能力S、魔力開放、魔力自動回復、アンチエイジング、単独行動、トラベラー、他多数

備考:可変兵の効果により剣士セイバー槍兵ランサー弓兵アーチャー騎兵ライダー魔導士キャスター暗殺者アサシン凶戦士バーサーカーに瞬時に変更可。尚、兵種変更と同時に装備品も切り替わる。

備考2:可変兵2の効果により勇者ブレイブ防衛兵ガーディアン強襲格闘家ストライカー銃兵ガンナー錬金術師アルケミストを変更可能兵種に追加。

備考3:精密測定を行ってください


 ・・・ふむ、訳が分からない。テトラの能力は想像も出来ないほどのチート級だった。大事件でギルド職員たちも大騒ぎだ。

「テトラってもしかして・・・ドラゴンでもゴリ押しで倒せる?」

「あー、一応は倒せるけど、この前のはドラゴンの不意打ちで結構危なかったから本当に助かったよ。上位魔法使うと他の冒険者も巻き込むとこだったし」

テトラと夫婦喧嘩したら、ただでは済まなそうだ。怒らせないようにしよう。

「ねえ・・・強い女って嫌い?」

テトラが上目遣いで、しかも捨て猫みたいな目で聞いてくる。これで胸キュンしない男は居ないだろう。

「いや、頼れるお姉ちゃんで良いと思うよ」

「やーい、照れてやんのー。フフフ、チョロい(小声)」

本当に並行世界のアイリスなのかと言いたくなるくらい、テトラはノリノリの小悪魔だ。こういうのも嫌いではないが。

 その後、無事にテトラの冒険者登録が完了した。どうやらテトラがこの町最強の冒険者らしい。ただし、精密測定器とやらがこの町のギルドに無いため、テトラの能力が完全には分からなかった。


 15分後

「本日はお忙しい中、緊急招集でお集まり頂きありがとうございます」

ギルドのオーナーから緊急招集の詳細説明が始まった。ギルドオーナーは普段、書類の作成やらで奥の部屋から出てこない。なので初めて顔を見たが、短髪髭面のおじ様だった。セバスチャンとか、そういうあだ名を付けたくなる雰囲気の人物だ。

「1週間前から、東のガイウス島にてワイバーンの大群が発生。調査の結果、新種の巨大ドラゴンが出現し、生態系が大きく変わってしまっている事が判明しました」

「テトラ、ガイウス島ってのは?」

「大きな火山あるだけの島。鹿児島県の桜島みたいなのって言えば分かりやすいかな?」

どうやら桜島に巨大ドラゴンが出現したくらいの大事件らしい。

「この巨大ドラゴンを討伐しなければ生態系が崩れ続け、ワイバーンの他、危険なモンスターが町に襲撃に来る恐れがあります。よって冒険者ギルド、友好国からの援軍、義勇軍などによる大規模部隊による討伐クエストが行われる予定です」

「なんか部隊が多くないか?ドラゴンってデカくても、せいぜい50mだろ?」

熟練の冒険者が質問する。それに対し、ギルドオーナーは冷や汗を流しながら答える。

「報告によると、その巨大ドラゴンは体長100m級のアースドラゴン。もしくは・・・エンシェントドラゴンの可能性もあると」

冒険者達の顔が青ざめる。ドラゴンの上位種族にアースドラゴンやアクアドラゴンが居て、更にその上位にエンシェントドラゴンが居る。つまり、今回の巨大ドラゴンはその辺にいるドラゴンとは桁違いだ。

「討伐の日程はまだ未定ですが、おそらく1カ月後になると思います。強制参加ではありませんので、参加される方は準備をお願いします。

 ・・・因みに防衛軍は法律上、専守防衛に努めなければならないため、ガイウス島までは出撃できないそうです」

冒険者達からため息や落胆の声が上がりながら、緊急会議は終了した。


~自宅~

 帰宅後、店番してたアイリスに巨大ドラゴンの事を伝えた。

「やけに回復薬系が売れると思ったら、そんな事になってたんだ。それで、シゲちゃん達はどうするの?」

「強制じゃないとは言ってたけど、ギルドオーナーは参加して欲しそうな目でこっち見てたんだよな~(苦笑)

 でも、参加しようにもレベル20で上限の一般人だし」

「え?レベルなんて上げなくても強くなれるでしょ??」

テトラが何か不思議な事を言い出した。

「うん?もしかして、レベル=強さではない?」

「バカなんじゃないの!?普通、こっちの世界の常識とか歴史とかシステムとか調べるでしょ!?」

仰る通りである。アイリスとにゃんにゃんするのが忙しくて調べるのそっちのけだった。・・・というのはテトラには黙っておこう。

「人間に筋肉には本来16tもの力が有るんだけど、そんな力を使ったら体が耐えきれないから無意識にリミッターを設けてるの。危機的状況で、この力の一端を使えるのが火事場の馬鹿力ってやつ。

 レベルが上がれば上がるほど、この力への耐性を得て本来の力が発揮できるようになるの。つまり、潜在能力が発揮できるって事」

「てことは、地道に筋トレや戦闘訓練をやればレベルは上がらなくても強くなれる?」

「そういうこと。もっとも、レベルを上げる方が効率が良いから、皆レベルに拘るけど。あとはドーピングアイテムで能力の底上げとか、特定のモンスターを倒してスキルの習得とかね」

 どうやら私は成長率が悪いものの強くなれる様だ。

「そっか。修行でもして強くなれたら討伐クエストに参加するかね~」

何気なく言った一言をテトラは聞き逃さなかった。

「え?修行!?修行したいの!?なら一緒に修行する?ここから南に行くと暗黒大陸って未開の地が有るんだけど、強いモンスターがいっぱい居るし、珍しい薬効植物もたくさん自生してるし、空間が不安定でワームホールが出現して別世界の物が流れ着いたりしてるから楽しいよ!私のゲートの魔法使ったら一瞬で行けるから今行こう!今直ぐ行こう!!」

何やらテトラが物凄く興奮している。暗黒大陸ってのはそんなに楽しい所なのだろうか?

「珍しい薬効植物!?丁度、回復薬や毒消し薬の材料が切れかかってたから欲しかったの。私も行って良い?」

アイリスも興味津々だ。

「店は良いのか?」

「大丈夫。商品調達の為に臨時休業するの日常茶飯事だから」

それで良いのか?まあ、薬局はアイリスの趣味でやってるだけで収入はそれほど多くない。収入の大半はアイリスの金運アップスキルによるゴールドラッシュイベントだから家計簿の心配は要らないが・・・

「じゃ、準備出来たら行くか」

「やったー!さぁ、私より強い奴に会いに行く。私より強い奴が呼んでいる!!」

なんだかテトラの様子がおかしい。バトルジャンキーのスキルのせいだろうか?



~暗黒大陸・ベースキャンプ~

 昔、魔王が拠点としていた大陸だったため暗黒大陸と呼ばれてるが、決して常に夜だったり天気が悪い大陸ではない。太陽(?)は昇るし晴れの日も有れば雨の日もある。

 暗黒大陸に人は住んでいない。危険なモンスターが多くて暮らせないからだ。そんな大陸の唯一の安全地帯にベースキャンプが造られていたのだが・・・

「まさか陥落してモンスターの巣窟になってるとは・・・テトラは右翼の敵を、俺は左翼を叩く。アイ、バックアップ頼んだ!」

ゲートの魔法で来た途端、大量のモンスターに囲まれていた。メタルリザードにアイアンゴーレム、ワイルドウルフにヘルキャット、他多数の強力なモンスターが襲い掛かってくる。

「チェンジ・セイバー!」

テトラの装備が魔導士から剣士に変わる。赤い鎧に白いマントをなびかせ、銀の両手剣を構える。カッコいい!でも猫耳付いたままというギャップもあって可愛い。

 こちらもアイテムバッグから零式竜刀を取り出し、モンスターに斬りかかる。全身が金属のメタルリザードを真っ二つに切り裂いた。この武器を初めて使ったが凄まじい切れ味だ。そのまま次のモンスターに斬りかかる。

「シゲちゃん、後ろ!」

アイリスの声で振り返るとヘルキャットに背後を取られていた。マズい!ヘルキャットは爪の切れ味が鋭く、動きも早い。武器を構える間もなく、わき腹を引っかかれる。

「シゲちゃん!?」

「大丈夫!無傷だ」

ドラゴンの素材で作ったドラゴン迷彩服のおかげで無傷で済んだ。斬撃耐性はバツグンのようだ。

 アイリスの下位魔法攻撃でヘルキャットの動きが止まった。隙を見逃さずにボウガンで仕留める。その後、爆裂アローで敵を分散させ各個撃破していくのだが・・・

「数が多いな。テトラは大丈・・・夫そうだな」

テトラの方を見ると、何やらヤバそうな暗黒騎士ダークナイトと一騎打ちをしていた。物凄く目が生き生きしてる。

「負けてられないな。アイ、スピードアップできる魔法ってあるかい?」

「待って、今作る」

え?魔法ってそんな直ぐに作れるものなのか?

 アイアンゴーレム2体が同時に襲い掛かってくる。1体は胴体から真っ二つに斬ったが、もう1体の攻撃に反応できずグーパンをくらい、吹っ飛ばされる。ドラゴン迷彩は斬撃に強いが、打撃ダメージはあまり軽減できないようだ。つまり、痛い。物凄く痛い。

「痛!あ゛ー!骨にヒビ入った!!回復薬!?」

骨折は何度か経験してる・・・ような気がする。レントゲンをしなくても痛み具合からヒビが入ったのが分かる。急いでアイテムバッグから回復薬を取り出して一気に飲み干す。骨折はこれで直ぐ治るが、痛みがまだ残る。

「できた!時の壁を打ち壊せ、クロックバースト!!」

アイリスが作ったばかりの魔法を使うと、こちらの体が軽くなった。

「ありがとう、アイ。動きの速い奴にも対抗できそうだ」

「こっちも片付いたから手伝うわ。チェンジ・ガンナー!」

テトラの装備が黒い軍服、リボルバー2丁になる。この世界にも銃は有るが、マスケット銃が主流だ。しかも火薬は高価で殆どが軍隊に回り、一般人では手に入らないので銃なんて使えないようなものだが・・・

 テトラが狙いを定め、引き金を引く。銃口から出たのは弾丸ではなく、ビームだった。威力も凄まじい。アイアンゴーレムを貫通し、更にかすっただけのモンスター達にもダメージを与えている。

モンスターが怯んだ隙に、こちらも一気に斬りかかる。


 5分後、モンスターを撃退しベースキャンプを奪還できた。

「何とか撃退できたか。ところでテトラ、その銃はどこで手に入れたんだ?」

「これ?別世界から流れ着いたものを拾って改造して、魔力をビームとして撃ち出せるように改造したの」

その銃は、前世でも有名な物だった。

「銃はSAAシングルアクションアーミー、弾倉には魔石を詰めてるのか。

 こんな彫刻エングレーブには・・・」

「何の戦術的優位性タクティカルアドバンテージも無い。でしょ?」

驚いた。テトラも世界的に有名な、あのステルスゲームを知っていたとは・・・

「い、今直ぐにゲームの電源を切るんだ!」

アイリスもノって来たけど、それ前作のセリフ!?

 暫くゲームの話をして大笑いしている内に疲れも消えた。

「使い物にならない物でも拾ったら持ってきて。私の知力と錬金術を総動員して、こっちの世界でも使えるように改造するから」

とことんチート能力の持ち主の様だ。

「さ、準備出来たら出発するわよ。ここから西に行けばモンスターは大人しくて、お目当ての薬効植物の群生地もあるわ」

テトラの先導の元、暗黒大陸の探索を始めるのだった。


 おや?アイリスの様子が・・・

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