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白い壁

作者: たちかぜ颯

夜中の12時。白い壁に手を触れると異次元の世界。そういえば、そんな噂が小学生のときに流行ったよなーと、ユウリは思い出した。

 鏡の話や階段の数・・・…怖い話は色々あったけれど、ユウリは白い壁の話が一番リアルだった。

 理由は簡単。自分の部屋の壁も白いからだ。

 この白い壁に真夜中、0時ぴったりに両手をつけると、どこにいくんだろう。そう考えると怖くてたまらなかった。

(白い壁ヤだよって親に泣きついたこともあったっけ・・・…)

 ユウリは苦笑した。

 今も壁は白いままだが、別にどうってことはない。

 小学生のときだって怖かったことは怖かったが、夢でうなされたことはない。

 根も葉もない噂だってことは、誰に言われなくたってわかることだ。

(でも、信じてみたくなることだってあるんだよねー)

 時計を見ながらユウリは思う。

 宿題の山、受験。そんなものが近づいてくると本当に逃げ出したくなる。

 ゆとり教育なんて口先だけ。高校に入るために受験はあるし、その先大学、就職――想像つかないけれど――受験や試験があることはわかる。

 とりあえずは、高校の受験なわけだけれど……。

 母さんの子供だったときに比べると大分入りやすくなったと思うわよ、と言われたが、だからといって受験がなくなったわけじゃない。

 普段のテストでだって緊張する。独特の雰囲気、何回テストを受けてもユウリはあの雰囲気には慣れない。

 0時まであと少し。

 塾のテキストを閉じる。白い壁の話を思い出してしまい、他のことが頭に入らなくなったのだ。

 もし、両手で白い壁を触ったら……。そしてどこか異次元の世界へ紛れ込んだとしたら、いったいどこに行くのだろう。

 家族はもう寝てしまったのか時々車の走る音が聞こえるだけで、しんとしている。

 ドキドキしてくるのをユウリは感じた。

 ありえないと思う。でも、もしかして……。そしてその先は? 答えのでぬままイスから立ちあがり、ユウリは白い壁と向き合った。

 壁に変化はない。

 時計を見て、カウントする。……4,3,2,1。

 0時。

 同時にユウリは両手を白い壁にくっつけた。





静寂。

 ユウリはそろそろと目をあけた。

 ……変わっていない。当たり前といえば当たり前で、どこか残念に思いながらもホッとしていた。

(今日はもう寝ようかな)

 まだ塾の宿題は残っているけれど。

 ベッドに入り、ああ、それでも私は白い壁の話を信じているんだなあと思った。家の壁は完璧な白い壁ではない。完璧な白い壁を見つけたら、また試すかもしれない。

 漠然とではあるがユウリは眠りに落ちる直前、そう思ったのだ。


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