2日目
ヒビキは、リイナと由香里と奈々が、しょんぼりと当てもなく歩いている吟遊詩人に声をかけるのを眺めていた。
この後の展開が、どのようにいくのか、まるで読めなかったが、リイナが進んだ行程の通りには、行かないのは明白だった。
事前に、由香里と奈々に、彼の正体が貴族の息子で、偽名をしていること、
また、自分の歌に自信があるが、故に、生来のユニークスキルで、褒められている疑心暗鬼に陥っていることを伝えた。故に、状態異常にめっぽう強い4人でしか、彼の歌の技量を心から褒められたと思わせられないでいることを伝えていた。
「ねぇ、お兄さん、吟遊詩人なんでしょ」
「私たちに、歌ってよ」
「一曲なんだって、いいわ。
お金も払うし」
三人が、しょぼくれて噴水の石の淵に座ってる吟遊詩人であり、貴族の皇太子ニューイシに声をかけた。リイナは、ニューイシがお金をたくさん持っており、お金でなびくことはないとを知っていたが、
めんどくさくなり、歌うだろうと予測し、発言した。
案の定、ニューイシは、嫌そうに3人のほうを向きなおし提案にのったのだった。
「はぁ、なんでもいいんですね。
一曲だけですよ」
「凍える~♪熱く~♪」
ニューイシは、悲しみを籠めて歌うと、たくさんいた町の人達は、暗くなり、家族を求めて帰り道を急いだ。辺りには、ヒビキを含めた5人しかいなくなった。
「上手ねぇ」
「ええ、悲しみが伝わってくるようだたわね」
「今まで聞いた吟遊詩人の歌で一番だわ」
リイナは、吟遊詩人から歌を聞いたことがなかったため、必然的に一番であったが、
3人の感想を聞くと、ニューイシは、気分がよくなると同時に、不思議がった。
「なんで……」
「私たちは、各々、状態異常に強いから、
あなたの歌だけを聞いて、心から思ったことがいえるのよ」
ニューイシは、今まで一番言ってほしかったことを聞けると、まだまだ、歌って聞いてもらいたいと願った。
「あなたは、悲しい歌より、愛の歌を歌うほうが、似合ってると思うわ」
由香里が思った事をそのまま歌うと、以心伝心したのかと思い、彼女を意識し始めたのだった。
「じゃ、次は、愛にかかわる歌を歌うよ!」
それは、心の底から、愛する人を想い焦がれるような感覚が由香里に襲い、彼女は、夢中になっていったのだった。
ニューイシが、この後、数曲歌い続け、3人は、思ったことをそのまま感想にすることで、
どんどんと気分が乗っていった。
ヒビキは、落ちたと確信し、ニューイシに声をかけた。
「リイナ、ご飯にしようよ」
「ええ、ヒビキ。
どう、吟遊詩人さんも?」
「ええ、ぜひ!」
こうして、ニューイシは、二人の美人冒険者に腕を絡まれて、ヒビキ一行に加わった。