魔法学校生活7ヶ月と3日目:アガタ教授との晩餐と聖夜市
長らく間が空いてしまいすみません。一段落したこで戻りました。
お待ち頂いた皆様、ありがとうございました。
少しずつ更新していこうと思いますり
来年もよろしくお願いいたします!
「異世界の、ことですよね。」
言い切ったエリーに、アガタ教授はふぅ、と1つため息を吐くと、目を伏せた。
「……ヨーヘイさんとお会いしてから、なんとなく、ご存知なのだろうとは思っていました。……もっと早く、伺うべきでしたね。
……ひとつ、お願いがあります。」
アガタ教授が顔を上げ、エリーに、そして陽平に、しっかりと目を合わせた。
「異世界の件は、テミスを初めとした数名の間でのみ共有しています。国王、外交のトップなど、限られた人間のみが知る重要機密事項なのです。その知識を巡って、いさかいや不穏な企みが起こらないとは思えません。どうか、内密に。」
「了解しました。」
「勿論です。」
二人の声が重なる。
そんな二人の様子に、アガタ教授の表情がゆるんだ。
「なんだか心が少し軽くなった様です。」
「あの、教授、もしこの後お急ぎでなければ夕食を食べていかれませんか。せっかくここまで来ていただきましたし。」
陽平は、そこまで言ってハッとし、エリーを見た。夕食の席にキルシュが出てこなければ確実に疑われる。
「ヨーヘイ、良い考えじゃない!先生、せっかくですから召し上がって行ってください。残念ながら私は研究の続きがあるので部屋に戻らせて頂きたいのですが、キルシュも喜ぶでしょう。」
そう言って、エリーは陽平にウィンクをした。
くそう、顔が良いと様になるな。
エリーのイケメンぶりに、陽平は何か負けた様な悔しさと好感がない交ぜの複雑な気持ちだった。
「では、お言葉に甘えて。」
アガタ教授が応えると、エリーは立ちあがり自室に向かった。
陽平は夕食の準備を始める。
前日に大量に作った煮込みの残りを温め直すだけだが、味が馴染んで昨日よりも美味しい筈だ。
じゃがいもを剥き、細かくして茹で、潰し、ミルクと塩を加えて味を調える。
いつの間にか出てきたキルシュが用意した皿に盛り付け、順次運んでもらう。
「ヨーヘイさんが作られるんですね。」
アガタ教授が意外、と言う様な声を上げた。
「ええ、ここに置いて貰うお礼に、少しでも何かしたいと思いまして。」
そう、と目を細める教授に、陽平は気恥ずかしい思いで顔を反らした。
夕食を囲み、他愛ない話をする穏やかな時間。
そんな中、またアガタ教授の顔が曇った。
キルシュが気付きどうしたのか問うと、言い淀むが、ポツリと溢した。
「……エルフリーデ嬢に、町に戻りたい様子はありますか。」
「いえ、この暮らしは自分に合っていて楽しいと言ってますよ。心から、という顔で。」
陽平が答えると、教授は複雑そうな顔をした。
「それを聞いて安心しました。……ただ、もし彼女が私達を許せるなら、国の機関に迎えたいと考えていたのです。前々から彼女の魔法道具や薬は定期的に入手していまして……まぁ、査定の意味も有りましたが。彼女の才能は、この国に取って非常に重要です。人は、自分と異なるものを排除しやすい。しかし……いえ、また話が長くなる所でした。二人から彼女に打診して貰えないかしら。」
「ありがとうございます。伝えておきます。」
キルシュが嬉しそうに答えた。
「そういえば、エルフリーデ嬢は聖夜市には出店するのかしら?」
「え、魔法学校卒業資格が無いと出店出来ないんじゃ……」
「魔法道具ならそうですが、森で狩った動物の肉もよく売りに出しているでしょう?何か食べ物で出すかしらと思ったのですけれど。」
そこまでご存知だったのか、と陽平は目を丸くした。
「出店はしないですが、市には出かける予定です。」
「そう、ぜひ楽しんで。」
アガタ教授の目は優しかった。
夕食が済むと、国に提出する卒業生の情報をまとめる仕事を進めるとのことで教授は学校に戻っていった。
「聖夜市って何ですか?」
陽平はエリーに質問してみた。
「年の終わりのこの月は、神々に今年の感謝と来年への祈念を込めて盛大にお祭りをするの。再来週から年明けまで続く市は凄く活気があって楽しいわよ!食べ物もお酒も美味しいし、小物も可愛いし。ぜひ行きましょう!」
クリスマスマーケットみたいなものだろうか。かなり楽しそうだ。
陽平の心が踊った。




