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魔法学校生活7カ月目

遅くなりすみません。評価、ブックマークありがとうございます。燃料になりました。頑張ります。

 上水道事業に関する提案を行った日から1か月近く経ったころ、陽平はヴァーゲ教授に放課後教授室に来て欲しいと声を掛けられた。水道事業の事だろうと当たりをつけて教授室に訪れると、居るものと思っていたエリーの姿が無いことに気付く。3年生の方が遅いことが多いので、まあ後から来るのだろうと勧められるままソファに腰かけた。


「無事、城下町に上水道を整備する事が決定しましたよ。」


 蜂蜜酒を手渡しながら、天気の話でもするかのように軽い調子で教授が切り出した。

 思わず、勢いよく教授の顔を見て、陽平が返した。


「まだ1か月も経っていないのにもう決まったんですか!?」


「ええ、水は生命の源ですし、その重要性は下水道事業の際にも国民の健康状態の改善等で既に立証されているので、それほど異論は出ませんでした。しかも、最も勢力のある国が既に上水道を整備していますから、そこに並びたい気持ちも皆少なからずあったでしょうしね。」


 ローマの話だろうか。

 あれ、そう言えば昔はドイツも神聖ローマ帝国じゃなかったんだっけ?神聖ローマ帝国とローマ水道の場所って違うんだっけ?ローマ水道はイタリアか?

 あー、世界史ちゃんとやっとけば良かった。


「ふふふ、なんだか色々考えていますか?」


 陽平はハッとして顔を上げた。また思考を飛ばしていたようだった。


「すみません、あまり他国の事に詳しくないので、勢力ある国と言うのが気になってしまって。」


「そうですね、地理に関しては、他の担当者が居ないので、1年次の終わりごろには法学の時間にお教えする予定です。

 もし気になるなら資料館で地図を見てみると面白いですよ。近代の物とそう変わりない精巧なものです。空間魔法や飛行魔法、動物を使役する魔法などの専門家が、互いの調査をすり合わせて作成して居ますからね。」


 一口に魔法使いと言っても使い方は本当に様々なんだな、と感心する。

 それにしても、この教授は実に多方面に造詣が深いし、いくら反対意見が少なかったからと言って、提案から1か月で決定事項にまとめてしまうと言うのは並みの事ではないだろう。


「あの、話を逸らしてしまいすみませんでした。1か月で決定って凄いですね。いつ頃から作るんですか?」


「そうですね、今は農家もワインの醸造所も仕事が落ち着いていますが、冬越しの準備をしていますし、しかも聖月で事業着手する空気ではないですからね。来年の春月くらいになりそうです。冬月、角月はブドウ農家の剪定作業が有りますし、あまり遅くても野菜農家の植え付け作業にかかってしまいますし。」


「水道の整備は魔法使いがやるのではないんですか?」


「勿論、舵取りや補助は国付きの魔法使いが行います。しかし、流石に城下町全体を整備するとなると、人数が足りません。全員が全員、土魔法や空間魔法に長けている訳ではありませんから。それに、国だけでなく、国民を働き手とすることで、経済を回す意味も有るのです。特に定職の無い者を積極的に採用する予定です。」


 成程、国の事業となると色々考える事があるんだなあ、と陽平は他人事のような感想を持つ。


「ところで、情報料の事は気にならないですか?」


 またハッとして教授を見ると、クスクスと小さく笑っていた。


「一応、今回の事業が成った後は、まだ決定ではありませんが、月10(ファルケ)程水道税を発生させる予定です。一律で、城下町の住民から上水道の使用料を回収するわけです。これで工事での出費を補填していくわけですね。反発も有るでしょうが、今まで水汲みに充てられていた時間を他の時間に割けますし、水が自由に使えることが後押しになる商売や職業も有るでしょう。時間を経れば納得してもらえると思います。」


「成程、では、その水道税が回収された後に支払ってもらえるという事でしょうか。」


 確か、この国は特許の様な仕組みがあって、アイデアには使用料として売り上げの一部が渡される仕組みがあったはずだ。つまり、税収を売り上げとして計算するのだろうか、と陽平は考えたのだ。


「ええ、1年間は水道税の0.1%をお支払いすることになりました。加えて、事業着手の前に、1,500(ファルケ)を支払う事になりました。」


「えっ!そんなに!」


「いえ、そんなに、と言う程ではないでしょう。確かに一家族が1カ月十分に暮らせる額では有りますが、国家事業を具体的な部分まで提案してくれましたからね。仕組みも概ね提案通りになりますし。ただ、如何せん工事費・人件費等への出費が多くなりますから、この辺りで手を打っていただければと。」


 うわあ、凄い。アイデアだけで1か月何もしなくても食べていける。しかも、0.1%ってどのくらいなのだろうか。城下町って何人くらい居るんだろう。10万人くらいは居るんだろうか。10万×千円×0.001は……10万円!1年間、毎月10万円何もしないでも入ってくる、だと!


 興奮しきりの陽平を、ヴァーゲ教授は静かに見つめていた。

(分かりにくいと思うので)

暦(1月から):冬月、角月、春月、祭月、嬉月、休月、干草月、収穫月、木月、酒月、秋月、聖月

通貨:100ミンツェ(Minze)=1ファルケ(Falke)。約100円と考えると分かりやすい。

1,500F(15万円)あれば一家族が一月困らないので物価は同じではないです。

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