師匠との生活9日目:入学申請
「いやあ……ちょっと難しいと思いますよ。」
今日は午前中から城下町に来ていた。魔法学校への入学申請の為だ。
しかし、街の中央広場にある庁舎で入学を希望したところ、渋い顔をされてしまった。
やはり、魔法使いが貴重と言えど、さすがにこれだけ怪しい人間を受け入れるのは危険だと判断されたのだろう。
国を挙げて魔法使いを教育するのだ、最新の研究内容など重要な情報も渡されるとしたら、国防を鑑みれば当然の帰結だ。
「始業は嬉月ですからねえ。」
えっ、始業?そっち?そっちの問題!?陽平はツッコみたくなる。生い立ちも知れず黒の森に住んでるんだぞ。怪しもうよ。
「来月じゃないですかあ。まだ大丈夫でしょ?」
「来月だからですよ。今何日だと思ってるんです?23日ですよ。もう10日も無いんですよ。」
「まだ一週間以上もあるじゃないですかあ。手続きってそんなにかかるんですか?」
「そりゃかかりますよ。簡単なチェックで城内の資料館に入れる様にするんですよ。援助等にも関わりますから、家庭環境や経済状況も調べますし、魔法の素養と人となりだって見ますからね。」
なんだか役人さん達が大変そうだなあ。
陽平は他人事の様に考える。
それにしても、入学の時期なんて頭からすっかり抜けていた。
陽平の誕生日が4月なので、キゲツ?とは5月を表すのだろう。
「ええー、城内って言ったって離れじゃない。」
「城内は城内です。それに、教科書など必要物品はどうするんです?」
「魔女様のが有るもん。」
「魔女様が学校に居たのは15年も前でしょう。さすがに改訂されて……え、魔女様……」
「そう。魔女様。」
にやり、エリーが悪い顔で笑った。
途端、窓口係が書類を確認する。
現住所も記載されている書類だ。
「ちょっ……とお待ちください、確認してきます。」
役人さんが何やら他の人間に相談している。そこに何人か加わって複数人で揉めている。
うん、なんだか可哀そうになってきた。わがまま言ってすみません。虎の威を借りてすみません。
陽平は心の中で謝った。
それにしても、一度問題を起こして学校を追われた人間の庇護下の子どもだ。余計に足枷になりはしないか。
「お二人は、特別枠で入学許可が下りました。」
ええー!そんなあっさり、裏口入学みたいなのが通るのか。
いや、別に申請遅れ以外は悪い事はしていないのだが。
「では、日も無いのでこのまま別室で面接と魔法素養の検査を実施します。担当が変わりますので、そちらについて行ってくださいね。」
「アガタです。こちらへどうぞ。」
2人は、アガタと名乗った女性について移動した。
ちなみに年度開始はこの世界だけの設定で、モデルにしている国に準拠しているわけではありません。




