師匠との生活7日目
すみません、今回短いです。
次の日、陽平は朝食を終えると、木を切り出しに向かった。
翻訳首輪の機能を利用して、名前を聞きながら、ベッドの木枠に適していそうな物を選ぶ。
“Fichten”“Fichten”“Fichten”“eih”“Fichten”“buohha”“Fichten”……
うん、選べなかった。分からない。
「えーと……、とりあえずいっぱいある方切るか。」
クリスマスツリーの様な見た目の針葉樹に目星をつけた。
斧を振るう。
斧は薪用のものだったが、例に漏れずエリーの魔法道具だったので、陽平はそれほど労せず切り倒した。
そして、その木に“→○werden;Fedara○←”(羽根になる)と刻み、浮かせて連れていく。
家付近の開けた場所で切り分け、ノコギリでベッドの足と枠を切る。
陽平は元々、すのこを作るつもりだったが、ここまでの作業で薄い板を切り出す自信が無くなったので、枠に穴を開け、綱を網状に付けて、固定されたハンモックの様にする事にした。
足、ベッド枠の接地面に“←○machst;lîm○→”(接着剤にする)と刻んで水を垂らし、互いをくっつけていく。因みに、のりの古語はエリーに聞いた。
ベッドの枠組みが出来ると、マットを受ける網を編んでいく。
伸びそうなので、陽平はかなり強く締めながら固定していく。
美しい白い肌のベッド枠が出来た。
まぁ、形は多少歪だったがDIYの醍醐味と思いたい。
今のところはこれで、また城下町に行ったらヤスリを買おう。
マット用の布袋には藁を詰めていく。
ベッドが出来ると、再度浮かせて、居間の隅に運び入れ、呪文に取り消し線を引いて無効化し、設置した。
「おー、様になってるじゃない!」
音に気づき、エリーが自室から出てきた。
そして、軽く手を振るうと、ベッドの木肌が滑らかになった。
あーあ……
陽平は顔に出さない様にしながら、しかし落胆した。
仕上げを奪われてしまった。
「プレゼント!」
にひ、とエリーが笑う。
まぁいいか、陽平も笑った。
Fichten
eih
buohha
トウヒは、本来Gemeine Fichte(オウシュウトウヒ、ドイツトウヒ)みたいなんですが、ちょっと自分で名乗らなそうなのでトウヒにしました。
古高ドイツ語だとモミ(tanna)しか出なかったので、現代のドイツ語名です。
モミとトウヒは別みたい。でも、ドイツトウヒはクリスマスツリーとして出回るらしいです。




