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30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~  作者: 東野月子
30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~
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準備

「まぁ、何にしろ、まずはヨーヘイが魔法を使えないといけないわね。」


 家に着くと、早速エリーが魔法でベッドを作ろうとしたが、明日自分で作ると陽平は申し出た。

 もう夕時だからというのも一つだが、自分の物なのだから、自分で用意したかった。


 じゃがいもを茹で、キャベツを炒め、早速買ってきたソーセージを熱湯で温め、夕飯の席に着く。

 と、食べ初めてすぐに、エリーが切り出したのだった。


「そうですね、早いところ杖を完成させないと。」


「うーん、考えたんだけど、杖だとやっぱり目立つかも。

 ……後々広めるかも知れないけれど、開発してすぐ“誰でも魔法が使える道具がある”なんて分かったら……」


「確かに、奪い合いになったり、粗悪品が出回ったり、悪用されたり、良い状況になるとは考えにくいですね。」


「そうなのよねー……、だから、道具の作り方や使い方、安全性、安定性なんかが確立してから、汎用化されるのが理想だと思うの。」


「そうなると、腕輪にしてバレ難くしないといけませんね。」


「ねぇ、いい考えがあるんだけど。」


 エリーは徐に立ち上がって板を持ってくると、陽平に手渡した。


「それ、振りながら“ビールよ来い”って言ってみて。」


「“ビールよ来い”」


 ガチャリ、防腐庫が開き、中からふわりとミニチュアの樽が出てきた。

 ビールが入ってるのか。何それ美味しそう。


「んふふ、年越しのお祭りの時に振る舞われたのをとっといたのよ!お手製樽なのー!」


 いいなぁ、俺も飲みたい。ソーセージと一緒に。

 陽平はつい物欲しそうな目で見る。


「ヨーヘイはまだ2、3年早いかなー。」


 あれ、エリーって俺の事何歳だと思ってるんだっけ。

 2、3年で飲んでいいの?昔だから?

 そういえば元々海外なんかは、飲みにくい硬水だか悪い水の代わりだったんだっけ?

 ヨーロッパって十代後半から飲酒可なんだっけ?

 違う?あれ?


「……俺、今15才です。」


 陽平は、ぐるぐる考えて、とりあえず年齢を打ち明けてみた。


「嘘言わないでよー!……え、ほんと?」


「向こうでは飲んでました。ワインも。」


「……一人立ちしてもおかしくない年齢だったんじゃないのよ……」


 しまった、追い出される流れだろうか。


「まぁいいけど。どうぞ。」


 っしゃあ!

 陽平は心の中で叫んだ。

 本場のビールだ!


「……染みる……」


「あはは、おじさんくさい!種類があるんだけどねー、私はこれが好きなの!昔からのじゃ無いほう。ホップ?とか言うのを使うみたい。」


 へぇ、前はホップじゃなかったのか。

 なんとなく耳には入れながら、陽平はビールとソーセージを味わう。


「って、そうじゃなくて!なんか言うことないの!」


 エリーに言われてハッとする。


 そうだ、俺、


「魔法が……使えた……!」


 ガタン!


 勢い良く立ち上がった陽平の椅子が倒れる。


「もう、遅い!」


「でも、どうやって?」


「その板にね、私の魔法を閉じ込めてみたの。で、ヨーヘイの指示に従うようにしてみた。」


 陽平は、椅子を直して再び腰かけた。

 徐々に気持ちが重くなっていく。


「……ありがとうございます。でも、元々の方法で開発させてください。」


「えっ?なんで?!」


「……この方法では、使用に上限が有りますよね。

 普通の人もそうなのかも知れないですが、エリーの力がかなり大きいとしても、分けて貰った物を本人と同じように使えているとは思えない。

 となると、力が逃げる等して、想定より早く魔法が切れるかもしれない。

 そうなれば、長時間学校で魔法を使うのに不安があります。」


「まぁ、周りの魔力を使えば上限は無いものね。でも、量的には問題無いとおもうけどなぁ。」


「……それに、これじゃあ、いつまで経っても、エリーにおんぶにだっこだ。」


 エリーが瞠目し、そして陽平に困ったような笑顔を向けた。


「……そうね。じゃあ、頑張って“ヨーヘイ専用の魔力”を開発しましょう!」


 エリーがカップを掲げる。

 陽平もそれにならってカップを持ち上げると、二人で乾杯して夕食を続けた。

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