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30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~  作者: 東野月子
30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~
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買い物と野菜と制度と学校

「あー。満足満足。そしたら寝具買いに行こうか。」


「その前に、野菜を買っても良いですか?あと、野菜の種か苗が有ればそれも。それから、加工肉店でソーセージとベーコンの作り方を教わりたいです。」


「野菜買うの?庭にあるじゃない。」


「え?裏の畑ですか?荒れ放題じゃないですか。」


「野菜有るよ!周りにちょっと違う草が生えてるだけじゃない。」


 ちょっとどころじゃない。草だらけだ。

 禿げて土が見えているところも多く、まさに見た目は荒地なのだ。

 もしやあの草だらけの所には、かき分けると野菜があるのか。


「……気付きませんでした。なんの野菜を育ててるんですか?」


「キャベツとジャガイモと人参、玉ねぎ、ほうれん草。ポロネギもあるよ!」


 結構種類豊富だった。びっくり。元々エリーの家の台所に有った食材は、畑で採れた物らしい。

 だから歪だったり、大きさがバラバラだったのか。

 味が濃かったのは、エリーが魔法を使ったのか、それとも過酷な環境のせいで野菜自身が強くなったのか。


「充実してますね。そしたら、トマトを買い足していいですか?」


「トマト?って何?」


 えっ、トマト無いのか。ヨーロッパなのに?そう言えば、昔は毒だと思われてたんだっけ?

 うわー、好物だったから少しショックだ。

 まあいいか、こちらの食文化に合わせるしかない。

 もし開発出来るなら、開発したいなあ。やるとしたら魔法だろうな。

 また一つ、陽平に野望が出来た。


「向こうに在った野菜です。そうしたら、加工肉店に行っていいですか?」


「うーん、多分レシピは教えてくれないわよ。ソーセージ屋なんかは特に頑固で、店ごとに秘伝があるらしいし、マイスター制度ってのまで有るのよ。」


「マイスター制度?」


「ええ、まず、手工業者の同業組合ってのがあるの。

 同業者同士で互いに利益を守る規則があって、組合に入るには、マイスター試験に合格する必要がある。

 で、そのマイスター試験ってのは、マイスターに付いて見習い修行して、職人として働いてからでないと受けられないわけ。しかも、だいたい見習いは住み込み。」


 おお、厳しいんだなあ。なんか、イメージ的にこの世界はドイツっぽい。

 ドイツって真面目で固いイメージだ。

 魔法が使えるからイギリスかなあと思っていたが、そう言えば、某テーマパークの城ってドイツの城がモデルなんだっけ。

 ジャガイモと黒パンが主食なのもドイツだっけか。

 陽平は思考を飛ばす。


「おーい、大丈夫?ヨーヘイ?」


 しまった、と陽平は我に返る。集中すると自分の世界に入ってしまうのは陽平の悪い癖だ。


「ちょっと難しくて考えてました。残念だなあ……。そうしたら、ソーセージ買って帰りたいです。」


 そうと分かればもう一度本場のドイツソーセージを堪能しよう。

 そう決めてソーセージ店に赴き、2人で毎日三食食べても1週間は持ちそうな量を購入した。

 四次〇ポケット布かばん万歳。


 寝具店に訪れると、ベッドマット様の袋状シーツと枕を買った。

 家に戻ったら藁を入れる。

 店主は羊毛や綿の入った物を売りたそうにしていたし、エリーも買うつもりだった様だが、そうなれば今日の売り上げがパアだ。

 陽平は少しだけハイジの世界に憧れていたので、藁で寝てみたかったのもあるが。


 帰りも飛行板を使用した。

 因みに、四次元布かばんから取り出そうと板を掴んだら、中に戻る方向に引っ張られたので、エリーに魔法で取り出して貰った。

 要改良だな。


「エリーは学校に戻らないんですか。せっかくキルシュに変身出来るのに。」


 ふと、陽平は思ったことを口にする。

 エリーは10歳で学校を辞めた後、家を出た。時代背景を鑑みると、その齢でも学校に通わない子どもは多そうだが、家を出るには早いのではないだろうか。

 幼少期から大人になるまで、一人で、しかも人里離れて暮らしてきたのだ。

 せっかく姿を変えられるのだから、青春時代を取り戻したって良いように思う。


「うーん、今更って気がするし、学ぶ事も無さそうだし、一人の方が色々開発出来るし。

 ……って思ってたけど、ヨーヘイの事もあるしなあ。新しい視点って言うか、違う目線って言うか、そう言うのは人間が多いと選択肢が増える気がしてきた。」


「まあ、同じ考え方に染まった人間の集まりだと、それも一概には言えないでしょうけど。」


「あー。確かに。ブフッ!ていうかヨーヘイは私を学校に行かせたいのか行かせたくないのかどっちよ。」


 エリーが噴き出しつつ答えた。久しぶりに笑い上戸が出たなあ。

 ツボが分からない。


「なんて言うか、エリーには幸せで居て欲しいなと思って。」


「グッフウ!何それ、愛の告白!?それとも遺言!?」


 大真面目に言ったのに。盛大に噴き出された。


「グッ、ブフッ、まあ、ヨーヘイが元の世界に戻るのには、情報が必要だとは考えてたのよ。情報となると、私一人じゃたかが知れてるし、学校かお城での仕事には入り込みたいと思ってたのよね。学校の方が敷居が低くて良いかもね。」


 お、エリーが乗り気だ。

 エリーばかりに調べさせるわけには行かないし、俺はその間街で聞き込みでもしようか。

 陽平は考える。


「2人ならまあ、心強いし。」


「えっ?」


「えっ?」


 瞬間、エリーが顔を紅潮させる。

 エリーの照れ顔なんて初めて見た。可愛い。可愛い!


「……何よ。」


「いえ、嬉しいです。俺も行きたいと思ってました!エリー1人に調べさせる訳にはいかないですから!」


「……いい心がけだわ。」


 陽平の胸ははち切れんばかりに喜びが満ちていた。

ドイツのベーコン……Speckシュペック、非加熱

ベーコン→紀元前、デンマーク発祥説

トマト→16世紀、観賞用として。食用は18世紀以降説

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