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30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~  作者: 東野月子
30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~
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師匠との生活6日目:新開発

 猪の肉は、詰められるだけ防腐庫に詰めた。

 それらとは別に、3㎏くらいの塊肉は、3等分にして、ハーブを刻んだものや香辛料、塩を揉みこみ冷蔵庫に入れた。

 それでも、巨大猪の肉が余っている。


「売りに行くしかないかぁ。」


 また城下町に行けるのか!

 もし教われたら、大量の肉でベーコンを作りたいな。

 山小屋で燻製作りって、ちょっと憧れる。


 それにしても、これだけ巨大な猪を、反撃するどころか、絶命に気付く間も無かったであろう一瞬で倒してしまったエリーの力に、陽平は知らずぶるりと体を震わせた。

 これ、悪いヤツに騙されたりとか、操られたりとかして戦争に駆り出されたら、国どころか世界も滅ぼしてしまうのでは……

 その時はなんとしてもきっと自分が止めよう。

 陽平は固く決意した。


 全く不便を感じてはいなかったのだが、昨日陽平が倒れた際に陽平のベッドが無い事に気付いたエリーが、ついでに寝具を買いたいと言い出した。

 ソファで寝ていたのは知っていただろうに、なんで今更、とも思ったが、興味の無い事にまったく頓着しない性格なので、本当に気付かなかったのだろう。

 ああソファに居るな、くらいにしか思っていなかったのかもしれない。


 ベッドの枠組みは森の木で作るので、マットレスだ。

 まあ、現代の様なマットレスなんてあるわけないだろうけれど。


 あとは野菜を買う予定だ。

 小屋の周辺にはいくらでも土地が有るので、畑を作りたいのだが、種も苗も無い。

 それらしい場所が有るので、昔エリーも畑づくりに挑戦したことが伺えるが、荒れ放題だ。

 エリーらしい。


 もし城下町でそういったものが買えるなら、それも購入したい。


 昔祖母が、くず野菜をそのまま庭に捨てたらいつの間にか育ったと話していたので、もし種や苗が購入できなければ、くずから育ちそうな野菜は埋めてみよう。

 確か、長ネギ、トマト、ゴーヤ、ピーマン、そら豆、インゲン、サトイモ、カボチャが有った。

 狭い庭に所狭しと生えていた。もはや見た目はジャングルだった。


 勿論、種や苗を植えたのがほとんどだろうが、どれかは元野菜くずだ。

 どれが植えたのでどれが生えたのなんだろう。

 柚子と葡萄は元々捨てた種から生えていたけれど、果物は後回しだな。


 頭の中で独り言を続けながら朝食、片付けを終え、城下町へ出る準備をした。


「今日は、飛んで行くのも自分で挑戦して良いですか?」


「ああ、良いね!長時間コントロールするのは初めてかしら」


 木の板の側面に、矢印が上を向くよう“↑○werden;feddah○↑”と刻む。

 feddahは翼と言う意味だ。


 板のみ浮かす為に使った“羽”だと心許ないので翼にしてみたが、浮かない。

 試しに持って見るが飛べない。

 翼のように上下に動かすが反応無し。


「うーん、矢印が上向きだから、力が上に逃げるんじゃないかしら。“werden”を使う時は、力を内に向けて変化させるイメージなのよねえ。」


「そしたら、内向き矢印で翼に変化、ですかね。」


「翼にしたとして、ヨーヘイを浮かせるだけの力を持たせるには、羽と体を鳥くらいの比率にしないといけなさそうよね。」


 実践を失敗したばかりなので、なんとか成功させたい。

 頭を捻る。


「外向き矢印で“浮かせる”、と、前向き矢印で“進む”、って刻むのはどうでしょう!」


「お、やってみよっか!進む、なら方向も刻んだ方が良いと思うわ。」


 “Du wirst gehst vorwärts.”を基礎にする。


 ←○machst;trîban○→

 ↑△gehst vorwärts△↑


 陽平が刻むと、ヒュン、と板が風を切って飛び、壁に激突した。

 ガツ、と鈍く大きな音がした。

 壁に生えた状態になりつつ、板はそれでもぷるぷると震え前方に進もうと必死だ。


「……」


「……」


 エリーが手を振り引き寄せる。

 ぷるぷるしている板に刻まれた呪文の上に、陽平は“↓○gepackt○↓”と刻んでみた。


 “掴まれたら”起動してくれる事を狙って。


 見事ぷるぷるが収まり、板を持って見ると、ふわりと体が浮き、陽平が重石となるのかちょうどいい速度で前方に移動する。


「出来た!」


 失敗を乗り越えての成功は喜びもひとしおだ。


 荷造りすると、ホクホク顔でエリーとともに外に出て、町へ向けて飛行を始めた。

 エリーは陽平に速度を合わせてくれている。


「いやぁ、やっぱりヨーヘイの発想力は大したものだわ。」


「失敗続きですけど。」


「でも、ぽんぽん新しい事を思い付いて、失敗しても解決策が容易に出てくるのは凄いわよ。」


 多分、あまり既存の魔法を知らない分、先入観も無いんだろうな、と陽平は分析する。


「それにしても、物を飛ばしたりするときは矢印を前に向ける訳ですけど、物が自分で前に動く時って、後ろ向きの力が必要ですよね。

 なんで矢印は後ろじゃないんですかね。」


「うーん?」


「ええと、歩く時とか、足を後ろに蹴るじゃないですか。」


「ああ、えーと、そしたら、魔法は追い風みたいな物なんじゃないかなぁ。物だけでなくその周囲にも呪文は影響するから。」


「ああ、なるほど!」


 触れた水を丸める時もそうだし、もしかしたら変化の内向き矢印も、物に向かって周りの魔力も影響しているのかも。

 形を変えるとき、例えば周りの空気が物に圧をかけるとか。


 陽平は胸を踊らせる。

 エリーが研究に夢中になるのも分かるな、と思った。

トマト→丸ごと土に植える(11~6月)

長ネギ→根から5㎝

ゴーヤ、ピーマン、カボチャ→種

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