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30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~  作者: 東野月子
30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~
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師匠との生活5日目:魔法特訓と絶望

「じゃあー、まずは枯れ葉に火を点けてみましょう。」


「はい!」


 陽平は、枯れ葉を集めた瓶を両手で包むようにし、枯れ葉に力を送るイメージをする。

 集中し、枯れ葉を見つめ、その葉に火が点く所を必死に想像する。


「……ええと、こう、ポン、て言う感じで力を入れるの。」


「……はあ。」


 力を流すというより、もっと、弾ける様に力を入れるのだろうか。

 陽平は気を取り直してまた集中する。


「……水を丸めてみようか!」


「もうちょっと練習したらダメですか?」


「なんかね、魔法使いには、得意な魔法と不得意な魔法があるんですって。魔法ってすぐ反応するし、ヨーヘイに火は合わなかったのかも。別の物を試してみましょうよ。」


 そう言えばこの人、天才型だった。

 努力もするけど、根底に天賦の才が有る。得手不得手についても伝聞の形と言う事は、本人には魔法の不得意分野等意識したことすら無いのだろう。好き嫌いは有るようだが。細かい上にルーチン作業になった魔法とか。

 陽平はそんなことを考える。


「分かりました。よろしくお願いします!」


 瓶の枯れ葉を捨て、水を入れると、再度注力する。


「えっとね、ぐっとぎゅっとする感じ。」


 うん、全く分からない。陽平は、教わっていると言うより茶々を入れられている様な気さえしてくる。

 気にしないようにして水に力を送り、心の中で“丸まれー!”と唱えてみたりするが、水は微動だにしなかった。


「……ヨーヘイ、ちょっと私の手を握ってみて。」


「え?」


 素直に出された両手を取る。途端、その細くしなやかなエリーの手指の感触に、鼓動が早くなる。

 一方のエリーは全く気にする風でなく、目を閉じて何か考えている様だった。


「……うん、ヨーヘイ、魔力皆無だね。」


「ええっ!?」


 エリーの口から衝撃の事実が飛び出した。


「大抵この世界の人は、体内に魔法に関する力が巡ってるのよ。ただ、それを魔法として外に発現出来る量を持っている人は限られるし、たとえ大きな力は有っても、それを外に出せなかったりコントロール出来なかったりするから、国の中でも魔法使いは少数なの。怖がられることもあるくらい。」


 成程、いくら幼少期に問題を起こしたとは言え、これだけの力を持ったエリーが追いやられるくらいだ。利用すると言う意見より、忌避する人間の方が多かったのだろう。


 で、つまり。


「はっきり言って、ヨーヘイに魔法は使えないわね。」


 なんと言う事だ。始まる前に終わってしまった。俺の魔法ライフ!

 陽平は落胆を隠せないでいた。


「し……ししょおー……」


 エリーは困り顔をする。

 嫌だ。諦めたくない。


「……師匠の水道管は、呪文と水で魔法が発動するんですよね。魔法道具を作るときに呪文を刻むのも、魔力が無いと出来ませんか?」


「……ああ!そっか!呪文を刻めば、刻んだ物体もしくはそれに触れている物の魔力が作用するから、ヨーヘイに魔力は必要ないわ!そうか、そうしたら呪文を覚えましょう!」


「うおおお!よっしゃあ!」


 陽平は飛び上がって喜んだ。

 上げて落とされて、また上げられた。昇降が激しすぎてかなり動揺している。もはや周りが見えていない。


 若干引き気味のエリーから、呪文を習う事にした。

 木の板を何枚も用意し、錐に近い細い彫刻刀で簡単な呪文から刻んでいく。

 ナイフ自体魔法道具の様で、抵抗なく紙に文字を書くように呪文が刻まれる。


「まずは浮かせてみましょうか。書いてみて。“→○werden;fedara○←”」


 陽平が言われた通りに木板に刻むと、それがふわりと宙に浮いた。


「浮いた!」


 熱いものが胸に込み上げる。初めての魔法だ。自分が魔法を成功させた!

 エリーはそんな陽平を目を細めて見つめる。


「魔法をかけたい物体に言い聞かせる様な要領かしら。“Du wirst Feder werden.(あなたは羽になる)”をその物体が分かりやすい様縮めただけね。変化先は昔の単語の方が分かって貰いやすいのよね。だから、“Feder(羽)”は“Fedara(羽)”って書くの。」


 元になる文章や単語を板に書きながら、エリーは説明する。

 物を生き物のように考えて、対話することで魔法が成り立つのか。それともこの世界の物体には、妖精的な物が宿っているとか、実際に魂が宿っていたりするんだろうか。

 そうなると、体に文字を刻むって痛そうだな……と陽平の思考がずれる。


「で、両脇の矢印と丸が力の作用のイメージね。これは私のオリジナルで、学校やお城では難しい模様が刻まれていたり、文字の間や上下にも模様があったんだけど、面倒臭くて。色々省いてみた。」


 え、そんなに適当で出来てしまうのか。


「複雑に書いても、作用する前に力が分散するって言うか、道に迷う?って言うか、弱くなる気がするのよねぇ。」


 なるほど、余計な事をしないから、エリーの魔法はより純粋なエネルギーを発揮出来るのか、と陽平は納得する。


「作用のイメージと言うと、他の魔法だと記号は変わるんですか?」


「そうね、丸は力がまとまるのを記号にしていて、内向きの矢印は見たまま力の方向ね。放出したいときは外向きの矢印。

 指向性を持たせたい時は、どっちも上向きにして、力を向けたい方向に気をつけて文字を刻んでる。丸を三角にすると、力が尖る、かなぁ。うーん、感覚?」


 出たよセンスの塊。と思いながら、自分も試してみたい気持ちがむくむくと大きくなっていく。


「色々練習させてください、師匠!」


「おうよ!」


 エリーも師匠としてノッてきた様だ。二人は笑顔で様々な呪文を試していった。

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