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30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~  作者: 東野月子
30歳童貞、魔法使いの弟子になる~チートなのは俺じゃないのか~
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城下町さんぽ

 工場を後にすると、エリーが陽平に通貨の説明をする。


「そうよねー、全然違う国から来たんだものね。この国では、金貨、銀貨、銅貨を使っていてね、ミンツェとファルケって言う単位を使ってるの。」


 エリーによると、100Mince(ミンツェ)で1Falke(ファルケ)

 金貨1枚で100(ファルケ)、銀貨が大小其々50Fと10F、銅貨は全て(ミンツェ)で1、5、10、50、100、500と有り、数字が書かれているとのこと。

 刻み方が日本と同じなので覚えやすそうだ。

 1,500ファルケ有れば夫婦で十分に、親と子ども一人二人を養うとしても贅沢しなければ問題なく1か月過ごせるとの事。

 通貨価値は異なるが、1M1円、1F100円と言うところか。

 刻まれた絵柄が綺麗で、銅貨を眺めながら歩いていると、目的の店に着く。


「まずは靴ね。」


 実は、森に着いてから自分の靴が無く、室内も靴で過ごすため、陽平はエリーの物を借りていた。

 なめし革で出来ている物の正直きついし、デザイン的にも恰好とちぐはぐで、人の目が気になる。


 革靴を2足、森や街で履けそうなしっかりしたものと、室内で履く柔らかいものを購入した。


 次に、衣類。下着用の綿布と、上下3着ずつ。

 ちなみに、エリーが貫頭衣なのは森でのみの様で、街の人々と今のエリーの格好は、ビアホールで見るような民族衣装だった。

 陽平はコスプレ気分で浮かれる。


「顔のせいかしら、なんだか違和感があるわね。」


 と思っていたら、思いっきり水を差された。


 そうこうする内日が高くなったので、屋台で食事を購入した。

 直径3cmは有ろうかと言うぷりっぷりのソーセージから、肉と香辛料の香りが立ち上り、ゴクリと喉を鳴らす。

 添えられた薄切りジャガイモのサラダも、ソーセージとの色の対比が美味しそうだ。


 ソーセージに歯を入れると、ブツリと皮が弾け、じゅわりと肉汁が溢れ出し、口内を幸せが満たす。

 うーん、ビールが欲しい。


「良い顔して食べるわねー!」


 そんな陽平を見たエリーも幸せそうな顔をした。

 食べる事は好きなんだ。

 漫画以外の趣味と言えば、休日と夜勤明けの食べ歩きくらいだった。

 狼肉は馴染めなかったが、洋食からアジアン、こってりからさっぱり、肉食から甘味までオールジャンルどんとこいだ。舐めないで欲しい。


 エリーも美味しそうに食べていたので、陽平は、いつかこれの作り方もマスターしようと決意する。


 腹が膨れたところで、狼の干し肉も売りに行った。

 裏通りに入り、動物の首や足、木製の像や仮面などが並ぶ怪しげな店構えの一軒に着く。

 と、奥から店主が出てきた。長い顎鬚にターバン、詰襟前ボタンで長袖の被りのシャツ、刺繍された臙脂のベスト、ゆったりしたズボンに腰巻。

 ちなみに、金髪で肌は真っ白、顔立ちは北欧系。

 店のコンセプトなのか“それっぽく”固めた衣装が妙にチグハグでものすごく怪しい。


『大狼肉持ってきたわよ!干したのを2.5匹分。』


 神妙な顔で無言の首肯をすると、大仰に奥に招く。芝居がかっていて面白く、陽平は、つい、にやりと口角が上がるのを自覚した。エリーを横目で見ると、肩が震えている。慣れているのか噴き出す事は無いが、笑いを耐えられる程では無いらしい。


『よーうこそ、我が根城へ。我こそは二国をまたぐ行商の民。大狼の肉、我の手で其方の日々の糧に錬金してしんぜよう。』


 グッ!


 エリーの喉が鳴るのを聞いた。話し方もまた、身振りと同様芝居がかっているのかもしれない。大狼の干し肉を布鞄から出すと、検品してもらい、600(ファルケ)になった。

 牛一頭より少し少ないかくらいの肉をほとんど全部干し肉にしたってのに、安いんだなあ。大狼1匹200(ファルケ)、つまり2万円くらいってことか。

 牛一頭から300kgくらいの肉が採れるって聞いたことがあるから、100g6M、つまり6円くらいか。安いんだなあ。やっぱり、需要の問題なのだろうか。


 礼を言って店を出ると、日用品を買いに行く。

 ちなみに、先ほどの店の主人の服装は、昔から国交のある海を挟んだ異国の民族衣装らしい。行商に出ていたりして店が閉まっていることも多く、開いていて幸運だったとのこと。


 薬局に寄ると、薬草類に加えて、蜂蜜、そして石鹸が売っていた。

 巨大な蝋の塊の様な物と、滑らかで小さく、平たい丸い見た目の石鹸が並ぶ。小さな方は甘く煮た薬草の様な華やかだが柔らかい香りがした。

 エリーは片腕で抱えられる程度の塊を切り出して貰い、小さな石鹸も幾つか一緒に購入して店を出た。


「まとめ買い出来て良かったー!どうしましょうか、他に何か欲しい物ある?」


 陽平は、特にエリーの小屋で困ったことも無かったので、夕飯を食べて帰路につく事にした。

 ちなみに、夕飯はビアホールに入って豚肉を頼んだのだが、太もも丸ごとを皮ごとどんと煮込みで出され、見た目のインパクトと野性味溢れる臭いに面食らい、半分以上エリーに食べてもらった。

 エリーは幸せそうに食べていた。

 オールジャンルどんとこいなんて言ってごめんなさい。

 陽平は、もし家で作るとしたら、ちょっとアレンジしようと決意した。

本当はミンツェの上はハブー(habuh=古高ドイツ語で鷹)にしたかったんですけれど、分かりにくいからファルケにしました。ドイツセントとユーロのモチーフのまんまです。

分け方は、陽平が言っている通り、日本の円のまんま。ユーロ方式は絶対忘れると思いまして。

行商人の格好は、トルコの国民服をイメージしました。

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