非道舞装ステージアーマー
それは突然だった。
現れたのは巨大な黒い空間。
そこから飛来する未知の人型兵器。
これによって人類は甚大な被害を受けた。
危機的状況の中で、多くの犠牲を払い、敵の人型兵器を捕獲。
その人型兵器の調査結果をもとに、新兵器の研究開発が始まった。
しかし開発は遅々として進まない。
敵の人型兵器の中からは、人の子に似た死体。
解明されたのは脳波による操縦方法。
人類は生き残るために、この人型兵器を使う道を選んだ。
機内は狭く、大人は搭乗できない。
人類が選んだのは、子供を兵器にすることだった。
集めた子供の体は強化され、兵器としての記憶があたえられた。
変わりに、過去の記憶と、人としての未来を失った。
子供達の乗った人型兵器は機動性において、敵を圧倒し優位に戦闘を進めていた。
流れるような運動性、敵の攻撃を回避する敏捷性。
それを見ていた研究主任が、つぶやいた。
「踊ってる……そうだ、あれの名は、ステージアーマーだ」
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20180818更新
詳細情報を追加
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20180603更新
あとがきにコソコソ追加していたものを本文に移動しました。
文字数が少ないと思われて読み始める方に失礼との判断です。
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*20180512追記 搭乗員A
木漏れ日の差し込む窓辺で、風を感じながら目を閉じた。
川のせせらぎと、木々の葉がすれる音といっしょに、蝉の声が聞こえる。
私はここで、たぶん生きてます。
多くの仲間といっしょに戦った日々は、三年前のあの日で終わりました。
黒い空間が閉じると、ステージアーマーは空から舞い落ちる棺となったのです。
私のように、基地施設にいた搭乗員だけが生き残りました。
でも、それが幸せであると答えられるのはわずかでしょう。
改造された体の私達が生きるには、多くの人とお金が必要です。
ステージアーマーが動かせない今となっては、必要なき存在ですから。
敵が再び襲ってくることはないでしょう。
あれほどの核兵器を使って、汚染された空間で生きるのは困難でしょう。
そして、敵は私達を恐れ、自らの手で転移空間発生装置を破壊したのですから。
*20180512追記 人体改造担当医
イメージで操縦できるなら、肉体の改造は必要ないだって、バカを言っちゃいけない。
耐久性と軽量化、それに加速度への対応は必要だ。
子供? 気にするな。
これは仕事だ。
人類が生き残るために必要なことだ。
過去の記憶は判断を鈍らせ、反応を遅らせる原因になるから消す。
ただそれだけのことだ。
シンプルに考えろ。
この子達には未来も無いんだ、過去も必要ないだろう。
そうだな、私の子供だったらか……
まっ、そう言われても、いないのだから答えられんよ。
君に、この仕事は向いてないようだな。
そうだな、君には、この戦争が終わったあとのことを任せるよ。
そのために今は、見ておくほうがいいだろう。
見殺しにはしたくないのだろ。
*20180512追記 現場担当者と職員
「今はあのころと違って航空機や船舶、それに関連する施設が攻撃対象となることがわかってますので、このあたりは大丈夫です」
「そうですか。それにしても子供達全員の精密検査だなんて」
「ご安心ください、念のためです。事前情報があれば何かあったときの対応が早くできますから」
「たしかに、そうですね」
「こんな時代だからこそ、しっかり子供達のこと守っていかなければなりません」
「子供達のこと、よろしくお願いします」
「はい、おまかせください」
*20180513追記 一般情報
「攻撃しなければ襲われない」
攻撃とは、電波を発生させることも含んでいる。
初期に襲われたのは、電波を発生させる施設だった。
今は、民間人が無線型の通信端末などを使うことはない。
「やつらは原子力潜水艦を襲わない」
核を盾にできる。
これが転機となった。
軍の研究施設は核関連施設に増築された。
人々は原発の周囲に集まって暮らしている。
そこが、もっとも治安がいい安全な場所だから。
*20180513追記 機体研究所
機体の装甲特性はそのままに、色だけ変えられる表層浸透反応皮膜。
どうだ、すごいだろ。
性能に影響しない重さだから何の問題も無い。
敵味方識別信号が使えないのだから、見た目は重要だろ。
まっ、こういうこともあるだろうと、準備しておいたのだ。
手足の交換は簡単ですから、使い捨てですね。
回収した残骸から補充すればいいので問題ないですね。
稼動できる胴体は貴重ですから、大事に運んでくださいね。
これは彼らにとって、体なのかもしれませんね。
噂だと筋肉とか、ほとんど無いらしいじゃないですか。
正確な情報は私達にも明かせないって、どうなってるんでしょうね。
盾ですか? 意味ないでしょ。
これには強力なフィールドバリアがあるんですよ。
それに重量が増えれば、空中戦での動作に影響するからダメでしょ。
脱出装置なんかないですよ。
脱出しなきゃいけないほど損傷しているなら、中もダメでしょ。
エネルギー源が何かなんて、わかんないよ。
とにかくいつまでも動いて、どこまでも飛べて、いくらでも撃てる。
兵器以外にも使える便利なやつですよ。
ああっ、パイロットは問題だらけでしたね。
*20180513追記 適合試験担当者
この子はダメです。体を受け入れていません。
体を動かすイメージの作り方に、問題があるようですね。
視覚や触覚ではなく、繰り返し刷り込まれた反射的反応でしょうか……
歩く、走るは誰でも出来ますが、空中で回る、視界が回る感覚を先に覚えてもらう必要がありますね。
知識は転写できますが、個体差のある感覚は、先に仕込まないといけませんね。
これまでの適合者はそうですね、女の子……ダンス、バレーの経験者ですね。
*20180514追記 敵地残留部隊
四年前、多くの犠牲を出しながらも、ここを占拠し、周辺地域の敵を排除。
しかし、半年前に我々は敵工作部隊によって、ここの最重要施設である、転移空間発生装置を破壊された。
「我々は、帰れない」
敵地制圧の前線基地として、設備も十分に整った状態となり、気が緩んでいたのだ。やつらはそれを待っていた。我々は完全に隙をつかれた。
敵は大群で転移空間へと強行突入した。私は、それを追撃することを許可してしまった。
「転移空間発生装置の施設内に敵侵入、交戦中」
これがもとの世界へと、我々が送った最後のメッセージだろう。
そして転移空間は消滅した。
この装置は、敵が建造した設備では無い。敵も調査中で使い方も知らないことは判明している。そのため我々にも、敵にも修理は不可能と判断するしかなかった。とはいえ、調査は今でも続けている。万が一の確率であっても、あきらめきれなかった。
帰れないからといって、敵に投降するわけにもいかない。我々がここで生きていくには、問題がいくつもある。最大の問題は食料だ。水と空気は基地内で循環利用し、外部からも放射線を除去して補充が可能である。しかし、ここに生き残った人々を、永遠に飢えさせないだけの食料は基地内で生産できない。出来るのは、持ち込んだ種子のある植物だけだ。そこで、研究員が言った。
「やつらを食べればいいじゃない」
研究員は敵対生命体の研究結果として、人体に影響が無いことが実証されていると、いうのであった。しかも、ステージアーマーの装甲が、有害な放射線を遮断しているので、汚染されていない最高の食材だと。
我々は、偵察任務という必要最低限の狩を行うことにした。
敵は我々を襲ってくることはなかった。彼らもこの環境で生き残るのに必死で、我々への対処どころではないのかもしれない。
しかし、そんな都合のいい、願いとも言える考えが、叶うことはなかった。
「緊急、緊急、デルタ・リーダーより本部へ。敵大部隊を発見……」
*20180514追記 搭乗員B
見た目は子供、頭脳は大人。ステージアーマー搭乗員です。一年生です。
仕事は、こちらから物資の入ったコンテナを運んで、帰りは資源の入ったコンテナを持ち帰る。戦うための存在と言われていたけど、ぜんぜんそんなことないです。たまに向こうで訓練があるくらいですね。最前線で戦っていた人も同じ仕事をしてます。前線基地の建造と復興のために資源を運ぶのが最優先任務になって三年だそうです。そうですね三年前からこっちの世界で戦闘なんてぜんぜんありませんね。平和です。
放射能ですか? こっちは大丈夫ですよ。あの転移空間で遮断されてますから安心してください。それに使ったのは前線基地から離れたところでほとんど影響がないって聞いてます。まっ私達はステージアーマーがあるから平気です。
体ですか? 平気ですよ。あっ、大先輩の頃は大変だったって聞いたことありますけど、今はメンテナンス技術も確立されてすぐに終わります。あっ、交換とかは入院する必要がありますけど、痛くないらしいです。私はしたことが無いからわかんないです。
最初? あっ、この体になったときのことは、よく覚えてないのでわかりません。そのころの記憶とか曖昧で、それ以前の記憶もよく覚えてません。こんな世界ですからなんとなくですけど、消してもらえたから元気なのかなって思ってます。
ステージアーマーですか? 大好きですよ。自由に飛べるし、ちから持ちだし、丈夫だし。最近出来た広報部隊のステージエンジェルスとかカッコいいですよね。あそこまで綺麗に動かせるなんてすごいです。
えっ、私ですか? 絶対無理です。あんな振り付けとか覚えられないですよ。
*20180521追記 研究関係者達
第一世代型はひどかったなんてもんじゃない、地獄だよ。急いで数をそろえるために、無理をした結果だからね。戦争に勝っても歴史に残せないよ。生きてるうちに戦争が終わったら、処分するように最初から指示が出てるって噂もあるからね。あれを許可したなんて知られちゃこまるんだろ。どこか人目につかないところで隔離されて、わずかな時間でも生かしてもらえればまし……いや、死ねたほうがいいのかもしれないな。
*
第二世代型は戦闘の主力です。第一世代よりも適合者が多く、寿命も大幅に延びました。使い捨てなんていわせません。研究の成果です。これでやつらを殲滅させられます。
*
第三世代型は記憶の調整と肉体成長抑制だけですから、戦闘は無理ですね。まっ時代に合わせた作業用量産型ってやつですから。抑制剤入りの食事をやめれば成長します。もうすぐ戦争は終わりってことでしょうね。
*20180521追記 統合組織報道官
我々が『黒い空間』の先へと軍を送るのは、敵が再びこちらの世界に来ることが無きよう、あの『黒い空間』が二度と開かないようにするためであります。敵地の占領は必要最低限であり、目的が達成される目処がたてば、作戦に必要な戦力以外はすぐに撤収いたします。無用な戦闘、破壊、略奪は決しておこないません。
*
『転移空間発生装置』の所在はいまだ判明せず、調査中であります。
*
敵地から運ばれてくる資源は、敵との交渉が成り立たない以上、必要な賠償措置であります。
*
核兵器の大量使用は、突発的大規模な敵の進行を阻止するために止むを得ない措置であります。
*
我々の目的は当初と変わりなく、『転移空間発生装置』の確保であります。
*20180525 搭乗員C
作戦や、迎撃で出撃し敵を倒す。基地に戻って検査を受けてから宿舎で休む。人と同じように食事と睡眠をとる。僕は第二世代と呼ばれるステージアーマーの搭乗者。成長することの無い体にされ、過去の想い出を消され、戦うために必要な情報を与えられた。
でも、悲しくはない。たぶん、こうなってなければ奪って逃げる日々を続けていただろう。それが今は、人々を助ける力を与えられて、敵を倒しているのだから。
ステージアーマーの通信機能はすごく便利だ。話したい相手を思い浮かべて呼びかける。もちろん声に出さなくても、声を出してもかまわない。部隊の仲間だけとか、付近の友軍でも自由に話せる。基地の指令室にいる機体と話すこともできる。
そして、同じ機体を使っている敵とも話せる。目の前にいる敵、近くにいる敵に問いかけたりできる。お互い言葉は通じないけど、問いかけたり叫んだりすると、行動に変化があらわれる。敵の声……叫び声のような感情の込められた何かを感じる。偉い人たちはこれをすでに解析できているとの噂もある。これについて僕らには機密事項として他言無用との指示が出ている。他言無用……基地内の管理区画から出る事ができない僕らには、あまり気にすることのない言葉。そう思っていた。
各地で敵の排除に成功し続けた結果、黒い空間の向こうへと敵は去った。これで終わりと思った。けれど、人々は再び襲われる可能性が消えるまで進むことを望んだ。僕らは黒い空間へと入ることになった。入った先は一瞬にして敵地に変わった。人が生きられない環境だが、人が必要とする資源の豊富な世界。
僕らは、この黒い空間を作り出している何かを探し確保するのが任務。それは、すぐに見つかり、作戦を成功させることができた。そして僕らは他言無用という言葉の重さを知ることになった。
敵地にはコンテナユニット式の司令部、居住区、格納庫などが次々と運び込まれ、僕らを整備する施設がすぐに完成し、もとの世界へ帰ることがなくなった。
僕らがここでしていることは、もとの世界に知られてはいけない。それが、もとの世界のために必要なことだと信じるしかなかった。生きるために。
「転移空間発生装置……どこにあるか判明してないが、黒い空間はそういった何かによって生み出されている」
一般的には、そういうことになっている。
僕らは、付近の敵を全て排除した。そして、もとの世界から多くの核兵器が送られてくる。ここを死守せよとの命令とともに。
*20180527 敵人型兵器鹵獲作戦
「六班、準備完了」
「七班、準備完了」
雨雲のような暗さに似た緑色のテントの中で、似た色の服を着た者たちが大きな地図を前に、あわただしく電話を受けている。電話機だけが事務所によくあるアイボリー色で、ここでは少し浮いて見えた。
テントの外は雨が激しく降っている。少し離れた場所に並んでいる車両。今日、この日の同じ時間に何千もの場所で実施される計画。敵人型兵器鹵獲作戦、第608指揮所と書かれた看板がテントの前に置かれている。
「最終確認完了。全て問題ありません。いつでも行けます」
テントの中にいる者たちが、一人の男へと視線を送る。男は目の前の電話を見つめていた。作戦時間までに目の前の電話が鳴れば中止を意味している。
男は腕時計から視線を離して、両手を机に押し付けながら、目を閉じゆっくりと立ち上がる。そして、目を開いて告げた。
「よし、時間だ。はじめよう」
すると、となりにいた者が、男から視線をはずし正面を見た。
「状況初め!」
この瞬間から事前に予定されていた行動を、みなが実行しはじめた。受話器を握って一言告げる。
「状況開始」
トンネルの前にいた男が、電話を握ったまま周囲の者に告げる。
「状況開始!」
トンネルの前にある大きな車両の上にあるアンテナから電波が放たれる。
「出力正常、異常無し」
数分後、敵の人型兵器が数機現れる。それを発見した者が大声で叫んだ。
「敵機確認!」
車両の助手席にいた男が運転席を見る。
「移動開始!」
運転手がアクセルを踏んで車両がトンネルの奥へと進んでいく。敵の人型兵器がトンネルの出入り口に分かれて降下してくる。出入り口付近にいた者たちはすでに退避していた。
トンネルの入り口に降り立った敵に向けて、トンネル内に待機していた別な車両が後退しながら、機銃弾を放つ。全てバリアで防がれると知りながらも、自分が敵であることを伝えるためだけに。
その効果があってか敵がトンネル内へと入ってきて車両へと砲撃を放つ。人型兵器が放った衝撃弾によって、濡れていた砲口の周囲に円が描かれる。車両は放たれた衝撃弾を回避しながら大きく曲がったトンネルの奥へと進む。車両が見えなくなると後を追って、敵もさらに奥へと進んだ。
その瞬間、大きな爆発音とともにトンネルの入り口が土煙に包まれ崩落する。それを非常用の退避通路内でモニターを見ていた男がいた。
「よし、そのまま戻ってくれ」
しかし、男の願いどおりに敵は行動してくれない。そう感じた瞬間、男は握っていたスイッチを見つめた。
「すまん……」
そう告げると同時にトンネルは崩壊した。
数週間後、土砂が撤去され動かなくなった敵人型兵器の鹵獲に成功した。各地で同時に行われた作戦で敵人型兵器を多数鹵獲できたが、犠牲も大きかった。敵が崩落した出口へと引き返し限られた崩落範囲にでき、犠牲者を出さずに済んだ部隊もある。トンネルの外に残っていた敵によって壊滅し、機体を掘り起こされ回収された部隊もある。
二年後、ステージアーマーと呼称される人型兵器の試験運用が始まった。
*20180602 搭乗員D
誰かが私を 守ってくれた
誰かが私を 助けてくれた
誰かが私に 勇気をくれた
誰かが私に 想いを告げた
私は舞う 戦場と言う名のステージで
私は誰かを 守ってあげられるのかな
私は誰かを 助けてあげられるのかな
私は誰かに 勇気をあげられるのかな
私は誰かに 想いを告げられるのかな
見つめた鏡の中に 兵器と言う名の私がいた
涙で揺れる鏡の中に 散りゆく私の姿が見えた
*20180818 追記 ファイル001
搭乗者A
女性:第一世代型適合手術を受けたが、飛行戦闘に問題あり不適格者として廃棄されそうになった。しかし戦闘中の機体と通信が可能であることから、管制通信担当として従事。転移空間消失後も生き残っている数少ない搭乗員。
両足は軽量化手術で失い戦時中は高価な神経信号反応義足を使用していた。戦後は車椅子での生活となった。今は戦時中の記憶を残そうと執筆している。決して外には伝えられなくても散っていった仲間達のためにと。
現在の日常生活は、旧ステージアーマー運用部隊の医療整備班にいた医師達によって保護され不完全ではあるが延命治療を受けている。
人体改造担当医
男性:ステージアーマーに登場していた敵生命体の遺体を解剖、調査する部署に参加していた脳神経外科医の一人。鹵獲した機体の運用研究が始まると、適合登場者開発部へ転属。子供達の記憶に組織行動への適合化、戦闘時の行動、通信などに必要な知識の着床。それにともなう領域確保などを外部から行うとともに、第一世代型では人体の外科手術にも従事していた。
初期の研究段階から娘の脳波でデータを集めていたが娘の適合率が高く、このままでは登場者として記憶の調整と肉体の適合化を行わなければならない。娘をそんな目に合わせたくないとの想いから娘のデータを改ざんし不適合者として隠していた。しかし、一緒に暮らしていた登場者達の危機的状況を救うため、予備の機体で出撃。高い戦闘力で危機を打破するも、改造されていない肉体への影響は大きく帰還したときにはすでに助からない状態となっていた。それ以降は子供達の適合化手術を積極的に行いつつ、適合化手術の軽減と投薬による抑制、脳波制御に関する研究を寝る間も惜しんで続けた結果、第2世代型へと進化させた。その後、娘の墓参りに行ったまま行方不明となっている。
現場担当者と職員
現場担当者:男性:敵の襲撃によって混乱した社会から子供達を救おうと活動してきた組織の管理職員。上層部からの指示で子供達の検査を行っている。ステージアーマー搭乗員の適正者選定の検査であることは知らない。
職員:女性:同組織の職員。恵まれた環境で生き現状認識において他者との差異が見られる。
両者とも子供達の何人かが将来的に発祥する病気治療のためと統合組織本部へ連れて行かれても、喜ぶべき事と何の不信も抱かず見送っていた。その後、子供達がステージアーマー搭乗員として活躍していることを知っても心配しつつ喜んでもいた。しかし、転移空間消失によって多くの犠牲者が生まれたことを知ると、その事に怒りを覚え反統合組織活動を始めたが、統合組織より家族ごと管理区から追放すると警告され活動をやめ、ただ泣く事しかできなかった。
一般情報
「攻撃しなければ襲われない」
これにいたるまで人類は翻弄され続けた、敵が電波を戦闘行為と認識していると理解するまでに多くの血が流れた。人々は携帯端末を有線で使用するようになった。気がついた地域では家や店舗などいたるところに端子が設置されるようになった。
「やつらは原子力潜水艦を襲わない」
原子力発電所の港は屋根で覆われ巨大な原子力潜水艦の港と造船所になった。物資の輸送は少量であるがこれで行われていた。
こういった情報を得て対処するまでに人類は多くの人を失った。最大の死因は人間同士の争いであった。情報が寸断され混乱した世界で、物資も手に入らないとなれば、治安は悪化。生き残るために略奪。守るために武装。守りを突破するために更なる武装の強化。生産者を失った地域は誰も生きられない。
そうして人類が自滅し始めた頃、敵は人類を哀れんだのか、電波の発生源は襲うが、レーダーや無線を使わない航空機や船舶を監視しても襲ってはいなかった。ただし武装している場合は別である。
機体研究所
偶然得る事のできた敵人型兵器の部品から情報を得ようと集めたれた研究員。
家族の食事が保障されると言うだけで多くの者が集まった。そして、そこから追い出されないように必死に研究し、どんな些細な発見でも我先にと報告が行われた。とくに素材工学などの知識がないものは機体から予測される敵の行動分析。機能や運用方法など正否の曖昧な推測情報を提出していた。そんな彼らはステージアーマーの運用が始まると最前線に送られた。そして誰一人生き残るものはいなかった。その中に『ステージアーマー』と名付けた研究主任も含まれている。
機体の分析結果は動力源が不明でエネルギー源もわからなかった。間接は機械的だが発泡スチロールのように軽い手足。胴体の中は綿のようにやわらかい物で覆われている。そこに触れると形を変えて包みこんで来る。頭の周囲だけ少し様子が違っていて空間が確保されていた。フタのほうも顔の前だけ硬い物でできていた。そしてある研究者が言った。
「死んだらこのまま棺になるな」
適合試験担当者
女性:脳波制御による操縦が完全に解析され、記憶の書き込みが的確に行われるようになった第二世代型が誕生するまで行われていた試験。
各地からの医療データをもとに適合値の高い者を集め、人体改造と記憶の調整を行った後、最終確認が行われる。敵人型兵器の分析と同時に、実用を目指した不完全な状態の登場者で戦闘を行う結果となったが、徹底的に行われた人体改造によって第二世代型よりもはるかに優れたSランクの搭乗員を生み出したのも事実であった。その代わり過酷な手術を受けながら不適合となる者も多くいた。そういった不敵合者は管制通信担当や防御担当になることが多かったが、何人かは運用開発部にて『ガクヤ』と呼称される移動式簡易整備艇。さらに固定式簡易整備場、のちにコンテナユニットとして各地方の基地や艦艇に簡単に設置することができる機材の開発をおこなっていた。
敵地残留部隊
指揮官:男性:統合組織上層部より任命され着任。各地の前線にて『ガクヤ』に乗艦し指揮を行っていた。初期の戦闘にて多くの非戦闘員の部下とともに家族を失っている。そのせいか、ステージアーマー運用において「やつらを一匹も逃すな」と強気の姿勢で対処するが、引き際はわきまえている。
研究員:女性:統合組織にて敵生命体の分析を担当し続けている。転移空間内に敵を追い返してからは、ほとんどの研究員が前線基地に移動し研究を続けている。
デルタ・リーダー:男性:第一世代型搭乗員。食料確保のために偵察任務中、敵大部隊を発見。初期の戦闘から最後まで生き残っていた数少ないSランクの搭乗員。転移空間消失後までは穏便で口数の少ない人物であったが消失後は「獲物がいたぜ!」と言いながら狩を楽しんでいた。精神的に不安定になりはじめていた。
搭乗員B
女性:第三世代型搭乗員。転移空間先との物資輸送用として、大量に生み出された簡易型搭乗員。高機動戦闘を行わないため人体強化は行われず調整のみで、操縦と組織に関する記憶を植えつけ、食事に混入させた成長抑制剤を使うのみとなり、薬の入った食事をやめれば成長が始まる。多種のコンテナユニットを4人組1小隊で移動する。転移空間先への大人の移動はシャトルユニットで行われていて、それの運用も彼らが担当している。
定期的に武装である衝撃砲を装備して定位置からの射撃訓練があるのみで機動訓練すら行われていない。転移空間消失時にもっとも犠牲者が多かった。飛行中だったもので生き残ったものはいない。地上にいても基地の近くであってもハッチが閉じていた場合開ける事が出来ずに死を待つことになる。転移空間の先にいたものは、急遽強化手術が行われ最後まで戦闘に参加する事になった。当然、偵察と呼ばれる狩も行う。彼女は転移空間消失時にこちら側にいてトイレにいたため生き残ったが、同じ小隊の別な班の二人はすでに登場しハッチを閉めていたため助からなかった。彼女と同じ班の者はハッチを閉めずに待っていたため助かった。その後二人は成長抑制剤の副作用が出ないように薬の入った食事を少しずつ減らし異常がない事が確認されたのち正常に成長しながら施設で働いている。
広報部隊ステージエンジェルス:第三世代搭乗員の志願者募集に作られた部隊。もともとダンスなどを行っていた搭乗員が集まったため、短期間で高度な演技を行い注目を浴びた。全員第二世代型である。転移空間消失時には全員迎撃任務に出ていた。
研究関係者達
適合登場者開発部の各班が研究を続けた結果搭乗員への負担が軽減されて行った。機体の脳波制御について初期の段階では解析されていなかった部分が多く過剰な人体改造や不適合者を生み出した。解析が進むと安全値の設定や機内の制御などが記憶の着床によって可能になり、適合者が増加した。この分野に参加した研究者達は戦後も各分野で活躍する事になる。彼らに共通して言える事はは生き残った登場者の保護施設を維持するため出来る範囲で支援を行っている。
統合組織報道官
報道官:公表できる情報を読むだけのお飾り。質問を行うマスコミが存在しない状況では一方通行の有線配信となる。視聴する環境にあるものも少ない。
統合組織:混乱した状況下で急遽誕生した治安維持を優先として設立された組織。武装組織を組み込んで食料生産地の保護と供給の管理を行いながら、指示に従うもののみを保護した管理区内のインフラ整備を行っていた。同時に敵の分析、情報の整理などを進めている。敵人型兵器の鹵獲、運用に成功してから巨大化し復興を優先としながらも資源を独占供給。多くの情報を秘匿し勢力を拡大していった。転移空間消失後もすでに確保した資源をもとに支配的位置から降りる事はなかった。終戦後も多くの新技術を発表しているため、敵生命体を確保し技術情報などを引き出していると噂されている。
搭乗員C
男性:第二世代初期メンバー。本格的な反抗作戦を開始し、短期間で敵を転移空間の先に追い返し、その後も敵地にて戦闘を継続していたエースパイロットのひとり。
管理外区域で生き残り、衣食住の保障を条件に搭乗員になった。過酷な環境で生き延びただけに、記憶の書き換え後も生き残るために何をすべきかを常に考えて行動している。最後は転移空間を突破した敵を追ってコチラの世界に来て戦闘中に転移空間が閉じ、機体の制御を失い落下した。落下する間、仲間達の声も聞こえない真っ暗な機内で何があったのかわからないままこの世を去った。
敵人型兵器鹵獲作戦
初期の戦闘にて偶然撃墜に成功した敵の分析結果から。
内部に生命体が登場している事が判明し、無傷で鹵獲が可能と判断された。
敵生命体が呼吸、消化器官が存在することとその内臓器官の大きさなどから、4日前後の拘束にて死亡するとの事であった。フィールドバリアについても絶対完全防御ではないことがわかっている。主に高速移動する物質や特定のエネルギー物質などの遮蔽であるが、光を通し機体に影が移り込む事と敵が建物などに高速でぶつかると建物が損傷すると同時に敵も動きが緩慢になる。最初に気がついたのは、手投げ弾を投げたらバリアをすり抜け爆発したとの報告であった。すぐに対処されたのか同様のことを試して死んだ者も多い。しかし、敵の動きから物に接触するときは減速することは確かであった。初期の戦闘において120mm砲弾や榴弾、地雷、ミサイルによる撃墜も聞いた事があったがすぐに対処されてしまった。よって敵の意表をついた作戦が必要だった。予測外の物はバリアで防げない。敵は物資をこちらに運んで、こちらの兵器を持ち帰る事がある。40tの戦闘車両を6機で運べず、8機で移動していたとの情報がある。その他の情報から、単機で推定5t以上の物は持ち上げられないとの結果が出た。そしてトンネル爆破による鹵獲作戦が実行された。事前にトンネル内に退避場を用意して人名損失を防ぐ方向で進められたが、最終的に現場指揮官に判断がゆだねられた。敵が一機でも外に残れば作戦は失敗する。だから同時に出来るだけ多くの場所で行って分散する。実施後は敵機の数が少ない箇所を特定し5日以降に土砂の除去敵機の鹵獲を行う。尚、敵が生存し稼動した場合は速やかに退避。斜面の爆破で再度埋める準備もするなど、少ない資材と燃焼でどこまで出来るか検討された結果実施された。結果は3207箇所で行われ42機を鹵獲できた。大成功だと上層部は喜んでいたが、犠牲は大きかった。
搭乗員D
第一世代搭乗員の中でも初期搭乗員のひとり。2機が組になって1班として行動。4機で1小隊。地下シェルター内にて動作訓練を終えてすぐに、トラックで移動され実戦投入された。異常なまでの軽量化を行った結果、単機で敵を殲滅することができる。軽量化、それは非道の極み。足を取り外せる機械に変えられ登場時には外される。軽量化による骨の減少と手術を繰り返した結果内臓に影響があり顔色も悪い。髪の毛は残っていない。転移空間発生装置を確保し周辺の排除が完了した時点で限界が来て引退。こちらの世界で生き残り投薬でいかされているが、今はもう週に数分しか目覚めない。