1話
久し振りに小説を書きたくなりました。楽しんでいただければ幸いです。
この世界には能力がある。その人の思いや素質によって発現する。そして、それは僕にも発現した。
その日は最悪の日だった。王都の教会で村の子供たちが能力を判明して貰った帰り道、喜ぶほかの子たちとは別に僕の気分は沈んでいた。僕の能力は【同調】、まるで僕自身の事を言っているみたいで哀しかった。僕は臆病だ、友達に自分の意見を言えなくていつも周りに意見を合わせてしまう。誰かに否定されるのが怖くて、誰かに信じてもらえないのが怖くて、怖くて、僕は
「おい、エルネス。せっかく能力を手に入れたんだしあそこの森に行かねえか?」
体の震えを抑えるようにゆっくりと深呼吸をしてから村の子供たちのグループのリーダであるゲイルに返答する。
「能力はもらったばっかだしあんまり過信しないほうが…いや、何でもない。ゲイルが行こうって言うならいいよ」
言いかけた本音を飲み込み、周りの意見を尊重する。
「よし、全員参加っと。先ずはあっちで休んでる大人たちがこっちを見てないうちにさっさと行くぞ」
ゲイルが馬車の中からこっそり持ち出してきた松明に自分の能力を使い火を灯し、それを掲げた。こうして、僕達は森の中へと入っていった。
どれくらい時間が過ぎたのだろうか。僕達は森の奥深くまで迷い込んでしまった。しかし、幸いにもモンスターにはまだ一匹も出会っていなかった。
「ちくしょう。せっかく能力を試そうとしたのにゴブリンの一匹もいやしねぇ。もう少しだけ奥に進んでみるか」
ゲイルが奥に進もうとするのを見て誰かが声を上げる。
「ゲイル!これ以上はまずいって!そろそろ帰り道がわからなくなっちゃうよ」
「あぁん?一匹も倒してねぇのに帰れるかよ」
このままでは、ゲイルが奥に進んでしまう。流石にまずいと感じ、僕もゲイルを説得しようとする。
「ゲイル!モンスターはいつでも狩れる。だから今は引き返そう」
僕が勇気を出していった言葉は…ゲイルには伝わらなかった。
「もういい、俺1人でもいってやる!臆病者め!」
そう言ってゲイルは消えかけていた松明に再び火を灯し森の奥に進もうとしたその時、空気が変わった。
「な、なんだ!?来るなら来い!モンスターめ、記念すべき一匹めとして殺してやる!」
森の奥に赤い光2つの光がとてつもない威圧感とともに近づいて来る。ズシン、ズシン。それは、ゴブリンなんて生易しいものではなかった。冒険者だった父が持っていたモンスター図鑑で見たことがあるオークジェネラルだった。
「あああ、ああ。死にたくない、死にたくない!」
ゲイルは恐怖に怯えてしまい、強敵を前に腰を抜かしてしまっている。遂に、彼の目の前までゆっくりと威圧するように歩いてきたオークジェネラルがその手に持つ剣を振りかぶる。
「危ない!」
剣が当たる前にゲイルの背中を押す。やった!これでゲイルは無事だ。とにかく逃げなきゃ、そう思い体に力を入れようとするも力が入らない。
「あれ?なんで…。足が…ないんだ!?」
理解するのに数秒かかる。目線を向けてみると下半身がなかった。あ、ダメだ。こんなところで…僕は…し、ぬ…
最後に聞こえたのは大声で叫ぶ村の大人達の声だった。
次に意識が戻った時には暖かい光を感じた。目を開けてみると美しい少女…いや、聖女様がいた。
「あれ?なんで意識があるの?」
彼女は首を傾げて僕に聞いてきた。
楽しんでくれるといいなぁ。程々に頑張ります。




