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僕と光崎弓矢 上

光崎弓矢。

『神鳴団』に所属している25歳の男性。20歳の時、当時まだ中学生だった神童の喧嘩を見て神童に憧れ、仲間になる。見た目はいたって普通のお兄さんという感じの人である。


彼の二つ名は『厄介眼』。そして役割は『狙撃手』である。



「あいつには大きく分けて二つの特徴があってな」

実戦形式の組み手をやり、ぼこぼこにされた後の休憩時間に神童が僕に言った。

「一つ目は目がいいことだ。異常なほどにな。静止視力、動体視力、瞬間視力、周辺視力、深視力、立体視力……とか言った視力と名の付くものすべてが、ほかの人間と比べてずば抜けている。まぁそれが『厄介眼』と呼ばれる理由だな」

「それは生まれつきなんですか?」

「あぁ、そうみたいだぜ」

「厄介眼、ねぇ……」

それにしても近くても遠くてもしっかり見えるというのは聞いたことがない。どちらかが極端に見える人ならまだしも、すべてが鮮明に映ってる人にはこの世界はどんな風に見えるのだろう。

「それで、もう一つは?」

「感情がほとんどない」

「え?」

「と思う」

「しっかりしてください」

「なんで叱られないといけねぇんだよ。一人一人が全国有数の変人なんだぞ? すべてを把握するのなんて無理に決まってんじゃねーか」

先が思いやられる、頼れない団長だ。薄々気づいていたが。

「……まぁ言い換えるなら、メンタルがめちゃくちゃ強い、だな」

「結構意味違うと思いますよ。それじゃあ」

「うーん……。感情を表に出さないんだよ、あいつは。あまりに出さな過ぎてないように見えるって感じ」

「なるほど」

「ちなみにあいつは弓じゃなくて普通に銃を使うんだが」

「あー、名前が優人なのに優しくないみたいな感じですね」

「それとは違う気がするが……。まぁ飛び道具を使う競技はメンタルが大きく関わってくるもんだろ?」

それは聞いたことがある。

「その点において、あいつは強いからな。いつも調子にブレがない。つまりいつでも安定した状態で戦闘できるってわけだ」

「なるほど。ガンナーとしては非の打ち所がないですね」

「あいつは接近戦もできるぞ。二丁拳銃に持ち替えて戦う」

……あれって現実でやろうとしてもできないはずなんだけど。

「おいおい、今更俺らを現実で考えようとすんなよ。お前見てないからわからないだろうけど、闇一の強さが一番おかしいんだからな? 俺も最初見たときは悪夢かと思ったぜ。悪魔ならぬ悪夢だと思ったぜ」

「……できれば見たくないですねそれは」

誰も自分の愛する恋人が悪魔になるところを見たいとは思わないだろう。できれば一生天使でいてほしい。

「あと光崎の携帯番号なら知ってるからすぐに会えると思うけど……まぁ、なんだ、会わない方がいいと思うぜ?」

「なぜです? 闇一さんみたいに何か問題が?」

「いやぁあいつ感情がないようなもんだからよ」

神童さんは繰り返しそう言って首を振った。

「会っても特に何もないぜ? 闇市みたいにクールでもない。得るものがあるとは思えねー」

「それでも行きますよ」

地味に失礼なことを言う神童さんの助言を、僕はすぐに断る。



「そこに変人がいるのなら」

「てめえの方が失礼だろうが」







「で、ここに来たというわけか」

新人団員--------赤谷月人から一通り話を聞いた俺--------光崎弓矢は……何も思わない。

ただ新しく入った団員があいさつしに来た、というだけのことだ。別に思うべきことなど何もない。

ただ……

「で、お前、なんでそんな恰好で来てるんだ」

別に少年の格好がおかしかったわけではない。高校生らしいファッションといえるだろう。おかしいのではなく、ふさわしくないのだ。


端的に言ってここは山である。俺の潜伏場所だ。

さらに真夏だ。そしてかなり山奥だ。そんな薄着で来たら、虫刺されが大変なことになる。虫が侮れないことは誰でもわかるはずだ。

「えぇ……、本当ですよね……。神童さんが何も教えてくれなくて、地図を頼りに向かっていたらいつの間にかこんな場所で……」

少年はもうすでに何ヶ所か蚊にやられているらしく、あちこちぼりぼり搔いている。

「まったくあの人は……。ほれ」

俺は常時携帯しているかゆみ止めを少年に向かって放り投げる。

「ありがとうございます」

「気にするな。あまり団長のことを当てにしない方がいいぞ。役に立たないからな」

「えぇ、今度から闇一さんに聞くことにしますよ」

「闇一だと……? お前死にたいのか?」

「いえ、やっぱり何でもないです」

少年が困ったようにそう言った。

なぜそんな顔をされなければならないのだろう。俺は命を救ってやったのに。

「で何しに来たんだよ? 俺はこの通り、つまらない人間だぜ? あったところで何すんだって話だ」

「いやぁいろいろ考えたんですけど」

少年は言った。

「普段何してるのかなって思って。良ければ過ごし方を見せてもらいたいんです」

「そんなことを聞いてどうする?」

「何か強さにつながっているんじゃないかと考えましてね。その背中に背負ってるの、猟銃でしょ? 結構興味ありますしできれば見せていただきた」


そこまで行ったところで少年は素早く後ろを振り返った。


どうやらやっと気づいたようだ。いや、常人にしたら早い方か。

「お前の言うとおり、俺は猟師さ。依頼を受けて頼まれたターゲットを狩る。今も仕事中でな」

俺は背負っている銃を構える。枝をバキバキと折りながら、唸り声をあげて近づいてくる『ターゲット』に向かって。


それは巨大なクマだった。


巨大という言葉をいくつ重ねても足りないくらい巨大だ。なるほど、依頼者もあせるわけだ。今まで見た中で一番でかいかもしれない。


「これからこいつを狩るが……。どうだ? 体験してみるか? 狩猟ってやつを」

「……いいですね」

少年は笑いながらそう言った。どうやら意外に熱いタイプのようだ。

「楽しみましょう、光崎さん」

「あぁ」

俺はいつもの口癖を言う。




「さぁ、狩りの時間だ」

巨大クマVS光崎弓矢&赤谷月人。



山奥での壮絶な戦いが、幕を開ける。

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