表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

僕と堀口闘志 下

「出来れば手合わせさせて、ってどういうこと?」


闇一は赤谷と合流する前、神童から電話で連絡を受けていた。


「そのまんまの意味だ。本気の殺し合いはさすがにまずいけど、組み手ぐらいなら大丈夫だろう。お前もいるんだから」


「なんでそんな危ないことさせないといけないの? あの殺人鬼相手なのよ? 殺されないなんて保証できないんじゃ」


「だからそうなったらおまえが止めてくれ」


相変わらず適当だ、と闇一は呆れる。


「あいつはもう充分強い。やはりセンスがある。これだけ短期間であんなに強くなるとは思わなかった」


だが、と神童が続ける。


「いくらセンスがあろうとも、戦いになれていなければ実践で使い物にならない。そのためには俺だけが相手をしてもだめだ。闘志のように殺気に溢れている奴を相手にすることになれないと、殺し合いじゃまともに動けない」


「なるほどね・・・・・・。考えは分かったわ。けど危なくなったら遠慮なく止めるから」


「構わない。出来ればこの組み手で殻を破ってほしいものだ」


神童はそう言って、楽しそうに笑った。





そんなことは知らずに、僕は現在闘志さんと戦闘中である。


(・・・・・・強いッ!!)


始まってすぐに分かった。スピードにはかなり自信があったのだが、それですら互角だった。パワーはもちろん闘志さんの方が圧倒的に上だ。コンクリの壁を普通に砕いている。そのせいか拳はかなり負傷しているようだ。

だかまるでひるまない。躊躇なく拳を振るい続ける。

対する僕は受け流すのに精一杯だった。当たったらただでは済まない。


(まずはスピードになれないと・・・・・・!)


スピードだけが頼りだ。連打して押すしかない!


「そのスピードは大したモンだが軽すぎんよ」


「・・・!!」


僕の連打を気にせず突っ込んできた。


(岩みたいに硬い・・・・・・!)


「ぐっ・・・・・・」


鳩尾を思い切り蹴り上げられた。体が浮く。そのまま後頭部を掴まれ、壁に叩きつけられた。


「がはっ・・・・・・!」


「なかなかタフじゃねぇか。伊達に鍛えられてねぇなぁ」


「・・・・・・僕としてはもう気絶したいくらいなんですけど・・・・・・ね!!」


体を捻って闘志さんの手から脱出し、距離をとる。何とか意識は保てている。あれだけ叩きつけられてまだこんなに考えられるとは、僕もずいぶんおかしくなったものだと思う。


(だめだ。このままじゃ戦いにもならない)


僕は全集中力を足に集める。


(もっと速くしないと・・・・・・。置きざりにするくらいの勢いで)


(速く・・・・・・強く!!)


地面を、蹴る。


僕は一瞬で闘志さんまでたどり着きーーーーーーーーーーーーーーーーーー通り過ぎた。


「お、とっとっと」


「ん? まだ速くなるのか?」


闘志さんは楽しそうに言う。


「確かに速いけどよ。反応できる速さじゃそれを武器には出来ないぜ? 武器にするには」





次の瞬間、闘志の目の前に拳が迫っていた。


「・・・・・・!!」


すんでのところで上半身をそらす。いつの間にか後ろに少年がいる。その目を見て闘志は確信した。


(この少年は俺のような殺気ではなく・・・・・・獣のような威圧感があるな。俺じゃなければ足が竦んでいたかもしれないほどすごい)


それにしても、速すぎる。

何段階上があるのか。それとも成長し続けているのか。どちらにせよ興味深い。

殺したくなるほど、興味深い。


「楽しくなってきましたね。闘志さん」


「あぁ、実に楽しい」


少年の問いに、闘志がそう答える。少年はとても楽しそうに笑っていた。今までずっとボコボコにされていた人がする表情ではない。


「まだ、僕は速くなります」


「そうか、その調子だ。俺は真っ向からそのスピードを打ち破って見せよう。かかってこい」


少年は笑う。闘志も笑う。


そして少年は獣のように吼え、闘志は鬼のように叫び、同時に目の前の敵に向かって飛びかかる。







「ふん、まぁまだこんなものだな。充分殺せる。予想は越えてくれたが」


闘志は倒れている赤谷の頭を乱暴につかみ、闇一に向かって投げる。丁寧に受け取る闇一。

・・・・・・


「なぁ悪魔さん。随分その少年を大事そうにするが、お前確か男に触りたくもないとか言ってなかったか?」


「この人は別よ。恋人だもの」


「恋人か。それはめでたいな」


闘志はあまり驚かない。興味がないようだ。


「それより強いわね、赤谷くん。邪悪な殺人鬼であるお前を一回驚かせるなんて」


どうやら闇一は、赤谷以外の男の事をあまり丁寧に呼ばないらしい。


「まだ強いとは言えない。俺じゃなくても殺せた。それじゃあだめだ」


「それはお前の願望でしょう? 充分強いわよ」


「強さの象徴みたいなお前が言っても、説得力ないが」


闘志はしばらく黙ったあと、ぼそりと言った。


「・・・・・・こいつには可能性がある」


「え?」


「俺は俺より強いやつがいても別に構わない。殺せればそれでいい。どれだけ実力で負けていようと、殺せれば俺の勝ちなのだから。お前も俺なんて、チェーンソーを持っている状態でも半分くらいの力で倒せるが、お前は俺より速く殺せない」


俺が殺せないのは団長だけだ。


闘志はそう言って、赤谷を再び見る。


「こいつも俺が殺せない存在になるかもしれない。そうなるのが楽しみだ」


「・・・・・・殺させはしないわよ。私が守るもの」


「やってみろ」


闘志はチェーンソーを担いで、暗闇の中に消えていく。


「俺はいつかその少年を殺しにいくぜ。そのときは殺人鬼として、チェーンソーをつかってな」


闘志は鬼のような言葉を残してーーーーーーーーーーーーーーーーーー消えるのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ