手紙
「おはよう。」
「あれ・・・?ん?ここ何処。」
美珠は見慣れぬ景色に訳が分からなくなっていた。
「何いってんのさ。ここは軍事基地、昨日着いただろ?何時間寝てると思ってんの?もう十五時間。」
「十五時間?本当に?」
美珠は驚きのあまり体を起こし、窓の外に目をやった。相馬が窓の方まで歩き、バサッとカーテンを開けると、まぶしい光が差し込んでくる。美珠は思わず目を細めた。
「本当ね、寝たのは夕方だったから・・・。ほとんど一日寝てたのね。」
「疲れていたんだろうから。無理もないよ。」
相馬の言葉に耳を傾けながら、美珠は立ち上がり顔を洗いに行く。陶器の器には水がたっぶり汲んであった。
「誰が世話してくれているのかしら。」
「さあ、さっきから見て回っているんだけど、まあ結構まとまってるよ。みんな自分のやるべきことが分かっているんだろうな。」
「そう・・・。」
「着替えたら兵士に声を掛けに行かない?皆喜ぶから。」
相馬の提案に美珠は頷き、相馬をじっと見る。
「何?」
「着替えるから出ていて。」
「ああ、失礼。」
相馬は笑いながら部屋を出て行った。美珠は机の上に用意してある服を見る。
清潔そうな白いワンピースだった。
美珠は着慣れたブラウスと黒いズボンを脱ぎ、真っ新の袖に腕を通した。久しぶりの女性らしい服。少し嬉しく感じながら、次に髪をとく。鏡に映る自分の顔は前よりも日に焼け、健康的な顔になっていた。
美珠は顔を叩き気合いを入れると、鏡の前から立ち去り、部屋の外に出た。
相馬は全ての部屋を把握しているのかと言うぐらい軍事基地内部に慣れていた。
二人は石造りの廊下を歩きながら中を見て歩いた。色々な職種の者達が忙しそうに働いていた。
鍛冶屋に薬売り、城にいては出会うことのなかった者達の姿がそこにはあった。
その者達の顔も又、自分のやるべき仕事に誇りと信念を持ったいい顔をしていた。
その後朝食を取るため食堂へ向かった。騎士や兵士はまさか美珠がこのようなところに来ると思っていなかったようで、食堂が一斉にざわついた。
食事係が出した中身はパンと大豆の煮たものだった。
「美珠様何か違うものをお持ちしましょうか?」
食事係が心配そうにわざわざ美珠の所まで来て尋ねた。
「これで十分よ、おいしいわ。ありがとう。」
美珠が微笑むと、料理係はペコッとお辞儀をして走っていった。
隣に座っている女騎士はあまりの緊張のため、食事が喉を通らないようだった。
「あの。」
美珠が声を掛けると女騎士は驚き声をひっくり返して挨拶をする。
「はい、何でしょう。」
「そんなに緊張しないでね。私も緊張してしまうから、私のことは姫と思わないで仲間だと思って頂戴ね。」
美珠が微笑むと女は何度も何度も頷いた。
美珠と相馬は顔を見合わせて少し笑った。その後しばらく中を探検し、馬の世話をする者や、料理番達とも会話をした。
「色々な職業があるのね。」
「そうだな、俺も勉強になるよ。結構面白い。」
「美珠様、お探ししました。」
「あら、光東さん。」
「初音のこと本当にありがとうございました。・・・あの、実は国王陛下から美珠様宛の手紙を預かっているのですが。」
「お父様から?」
美珠が驚いた顔をすると光東は白い封筒を差し出した。
表には「美珠へ」と書かれていた。美珠はすぐ開けようとしたが、持っているだけで涙が浮かんだ。
美珠は一度うつむいて涙を止めると光東と相馬に一言断り走って部屋に向った。