廃墟での決意
「やだなあ、こういう汚いところ。何でこんなところにいるんだよ。幽霊でそう。」
「そういえば聞いたことがあります。この村はかつて疫病が流行し全滅したと・・・。出るんでしょうか。」
「ちょっと、相馬ちゃん、初音さん!止めてください!私そういうのは嫌いです!」
商人達と別れて約半日、教えられた廃墟となった村に足を踏み入れた。今にも崩れそうな煉瓦造りの建物が何棟かあり、その前には竜が繋がれていた。
一歩踏み入れると同時に何人かの騎士が気配に気がつき姿を現した。
教会騎士、魔法騎士だった。
教会騎士は美珠の姿を見ると後退った。
「まさか・・・姫様が・・・。」
「そんな馬鹿な!姫様が供も付けずお一人で・・・?」
美珠は彼らの動揺の意味が分からなかった。
けれそその中の一人に見覚えがあった。それは嵐の日の思い出。
稲光の中で彼の顔を見た。
「・・・貴方は・・・っ!まさかここは!」
美珠は直ぐに剣を抜いた。
「騎士と戦うんですか?」
初音が美珠に問いかける。
「この者達は・・・敵です。」
美珠が呟くと相馬が銃を構える。
「待って下さい!」
後ろから声がした。美珠が視線を向けると、他の者より年上らしき騎士が立っていた。
「美珠様、状況は分かっているつもりです。我々を信じてください。」
「何を証拠に信じろと言うのです。」
「証拠など何もありません。信じていただくとすれば我々の忠誠心のみ。我々はあの後騎士を追われ、騎士としての誇りを失い、自殺した者もおります。・・・ただ私たちも分からぬのです。全員、怪我を癒してもらっていたはずなのに、気が付けば美珠様の館の外にいて、何故か自分達が血まみれで・・・。」
「そういえば、魔央さんもそんなこと言ってたな。武闘大会の負傷者ばかりが館を襲ったって。じゃあ、それあんたらってこと?」
「はい・・・。皆確かに運ばれて、向こうで水をもらったまでは覚えています。ただ、その後は記憶にありません。中にはその水に何か細工がしてあったのではないかと言う者も。」
「なるほど・・・。」
相馬は顎に指を当てて何かを考えていた。
そして騎士は美珠の前に跪いた。
「出来ることならば、我々は美珠様のお力になりたい。自分のしたことが許されることとは思ってはおりません。ですがあれはこの中にいるもの誰一人願ったわけではないのです。それだけは信じてください・・・。」
まだ信じ切れなかった。願ったわけではないといわれてもばあやや静祢の命を奪ったのは正真正銘、彼らなのだから。
「あなた方は・・・私の大切な人を奪った。私のこと、国のことを考えてくれる人たちを奪った。・・・それは許せない。でも・・・でも・・・まだこの国を想う心があるのなら・・・その命私に預けて、てくださいますか?」
美珠はその場にいる者に聞こえるように大声を張り上げた。
「国を守るため命を捨てる覚悟はありますか?」
すると騎士達は皆剣を抜き、空に掲げた。
美珠はその光景を見て微笑み、相馬と初音も後ろで微笑んだ。